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召喚されました

『ハーレム勇者というものを冷めた目で見ている奴隷の話』の番外編2として更新していた作品です。視点が本編とは異なり勇者視点ですので、分離させていただきました。

内容等に変更はありません。

 俺は若宮亮。

 もともと高校生をやっていたんだけど、ある日突然異世界に召喚されちまった。ライトノベルやネット小説にありがちな、魔法陣が突然足元に現れてというテンプレのような召喚だった。学校からの帰宅途中で突然足元が光りだしたときにはものすごく焦った、そして気が付いたら白い宮殿のような教会のような場所に居た。

 歴史の教科書に載っているような、天井にはよくわかんないけど宗教画が描かれていて、なんだこれ?と呆けていたら、周りにいた人に声をかけられたんだ。 



「あなたが勇者殿か!」


「え?」


「突然の召喚したことで混乱しているかもしれないが、我が国は今魔族の脅威にさらされている。厚かましい願いではあるが、どうか我らを助けてほしい」



 最初に声をかけてきたのは白服を着た美男子だった。後で知ったことだけど、俺が召喚されたのは魔族の脅威にさらされている王国で、召喚したのは大聖堂の神官で、白い服を着た美男子はその国の王子様だった。

 まさかの異世界トリップに驚いていた俺に、王子はどういう経緯で召喚したのか詳しく説明してくれた。

 でも、こういう異世界召喚物のテンプレって聖女様とか王女様が声をかけてくるもんじゃないのかと思ったけど、俺に対して真摯に向き合ってくれた王子が結構良い奴そうだったのでよしとした。



「えーっと、いくつか質問してもいいですか?」


「我らでわかることであれば……」


「俺って元の世界に戻れるの?」


「神託によれば元の世界の召喚された時間に戻れるとのことだ、私が直接神託を授かったから間違いはないだろう」



 おお、帰れるのか俺!

 良くある異世界トリップだと、一方通行だったりするからその点は少し安心した。まぁ、これが嘘じゃないとは限らないから帰るまでは安心はできないけどな。 



「ここで俺が嫌だと言った場合はどうなりますか?」


「こちらの都合で呼び寄せたのだ、勇者殿の気質もあるだろう。もし召喚された勇者殿が拒否された場合は、こちらで召喚した記憶を消したうえで元の世界に戻っていただくことになる」



 王子の言っていることはもっともだ。平和ボケした日本人がいきなり呼び出されて戦争してきてねとか言われたら普通は拒否するよな。召喚された当人が拒否したら戻されるのか、ついでに時間も戻してくれるのであれば大いに助かる。



「っていうか本当に俺は勇者なのか? 元の世界じゃ至って普通の学生だったんだけど」


「こちらの世界に来るときに、神が勇者殿に力を授けとおっしゃられた。勇者殿の能力を調べるには神眼の持ち主でないと無理だ。聖国の聖堂から聖女様と一緒にこちらに向かわれているとのことだ。もし、すぐにでも知りたいのであれば、そちらにある聖剣を握ってみると良いだろう。それは勇者のみに許された剣で、私たちには使えない武器だ」


「くっついて離れないとか、握ったら最後帰れないとかないよね?」



 俺が突っ立っていた魔法陣の奥の一段高くなっている台座に、聖剣は刺さっていた。

 キラキラと光を放っている聖剣を触ってしまっても大丈夫なのか、くっついて離れない呪いの聖剣とか言わないよな?



「それはない。歴代勇者候補の方は皆、聖剣を握り勇者の資質があると証明されているが、本人の気質もあり元の世界に戻ることを選択された方がいるとの記録がある。ご安心なされよ」


「ああ、そうなんだ」

 


 ちょっとドキドキしながら聖剣に触れてみた。

 俺が聖剣を握った瞬間、あたりに光が溢れ、周りにいた神官たちがどよめいた。びっくりして手を放しちゃったわりに、聖剣は光りっぱなしでどうしていいのかわからない。

 おろおろしながら周りを覗ってみると、白服の神官たちは「な、なんて神々しい!」とか「これこそ勇者の力!」とか言っていたけど、それが一体どういう物なのか俺にはさっぱりわからない。確かに何か温かいものが流れ込んでくる感じはあったけどさ! 



「私が聖剣に触ろうとしても弾かれてしまうからな。貴方が勇者で間違いはない」


「お、おう……」


「しばらく考える必要もあるだろう、勇者殿には相応の待遇を保証するゆえ、ゆっくりと考えてほしい。我らは勇者殿に無理強いはしない」



 それから俺の身柄は神殿から王宮に移された。異世界トリップものの小説ではすぐに王様に謁見するような流れだった記憶があったので王様に合わなくてもいいのかと聞いたら、最初から王様が出しゃばると後に引けなくなるだろうからと、勇者になると決めた後に合うべきだと言ってくれた。それと不安はあるだろうからと勇者に関する知識がある者を俺の傍付きにしてくれて、何か聞きたいことがあれば聞けるようにしてくれた。これには本当に助かった。



 あと俺付きの侍女さんは可愛い子だった! 自己紹介をして握手を求めたら、真っ赤になってめっちゃ可愛いの!

 自慢じゃないけど俺は顔が良い。王宮の侍女さんたちも俺を見て頬を染めているところを見ると、美的価値観の違いはあまり無いんだなぁと思った。廊下で会ったときにニコってやると、頬を赤らめている子が多いんだ。勇者補正がかかっているのか良く解らないけど、こんな調子で女の子がニコポナデポ状態になっちゃうんだったら、俺も召喚勇者のハーレムものを目指してみたい気もするなと思った。

 





 俺が召喚されて4日目くらいに聖女様一行が到着した。聖女様は見た目がゴージャスな美少女で、きらめく金の髪と海のような青い瞳の持ち主だった。残念ながら俺とは顔を合わせる前に神殿に引っ込んでしまったので、遠目に見るだけだったけど一目見たら忘れられないほどの美少女だった!



「こちらは、大神官のターラ殿だ。神眼の持ち主の勇者殿のステータスを確認していただくために来て貰った」



 聖女様とご対面かと思ったら、王子に連れられてきたのは白い神官服を着た白髪しわしわの婆さんだった。

 この世界では紫色の瞳の持ち主は神眼もしくは魔眼の証らしく、聖女様のお付きのばあやかと思っていたので正直かなり驚いた。この薄い菫色の目をしているターラ婆さんは鑑定眼という目の持ち主で、神眼の持っている力の強さは色の濃淡で判断されるらしく、ターラ婆さんは鑑定はできるものの、読み取れる情報は少ないのであまり強い神眼の持ち主ではないとのことだった。

 それでも神眼の持ち主は貴重なため、聖国が唯一保持している鑑定眼の持ち主がターラ婆さんっていう話だった。

 そして、話は戻ってターラ婆さんが読み取った俺のステータスはこんな感じだった。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

名前:ワカミヤ=リョウ

年齢:17歳

称号:勇者(候補)

スキル:言語適性・身体強化・精神強化・剣術適性大・魔術適性

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++


 どんなスキルを持っているのかとワクワクしていたら、提示されたのはざっくりとした内容だった。レベルとか能力が数値でみえるのかと思ってたらそうじゃないんだもん。少しだけガッカリした感は否めなかった。

 でも、歴代の勇者が召喚された時のスキルも大体こんな感じだそうで、俺がもっている適性という名前がついているスキルは、今後の訓練しだいで確実に取得できますよという意味らしい。

 ちなみに今の俺は適性こそあるものの、訓練していないから全然強くない状態です。剣術なんか体育の武道の時間に少しだけやる剣道くらいしかやったことないし、地球には魔法使いなんて居ないもんね!



 これはある意味成長チートなんだろうな。

 憧れの最初から俺TUEEEEEしたいなと思ったけど、そうじゃないのかぁ……。


 ターラ婆さんが部屋から出て行って、しばらく一人で感傷に浸っていた時だった。ドアをノックする音が聞こえたので、誰だろうと思って扉を開けた。



「あ、あの! 勇者様ですか!?」


「え、は、はい! 今のところ候補ですが」



 何故か神殿に居るはずの聖女様がいた。見たことないレベルの美少女が目の前にいて、微妙にキョドってしまった。

 聖女様は俺よりも頭一つ分ほど背が低いから自然と上目使いになるわけで……。

 透明感のある白い肌と、ぷるっぷるの唇から目が離せないんだけど!?



「こ、こんなところでお話しをするのもなんですから、どうぞ中に入ってください」


「すみません、お気遣いありがとうございます」 



 一応椅子に座るように勧めてみたけど、お茶を出そうにも今は俺一人だけなので、どうしていいのかわからない。どっかの本で身分のある女の人が、男と一緒に密室に居るのは良くないって読んだ覚えがあったから、彼女を部屋に招き入れるときに扉を少しだけ開けておいたけど、これで大丈夫なんだろうか?



 内心ドキドキしながら、聖女様とはこちらの世界の話や地球の話をしたりした。

 でも会話の内容なんか微塵も頭に残っちゃいない、なんだか緊張している聖女様の気持ちを少しでも軽くしてやろうと思っていろんなことを口走った気がするけど、なんかテンパっちゃって良く覚えていない!


 どのくらい時間が経ったのかわからないけど、聖女様のお付きの人が部屋にやってきた。俺を見極めようとしたのだろうか、ものすごく観察されている感が否めなかった。

 うろ覚えだけど、勇者と聖女はある意味運命共同体だって言われているから、たぶん聖女様も俺のことを見極めに来たんだろうなと思った。

 そんなことを考えながら、聖女様を見送ろうと立ち上がった時に、聖女様は俺の袖をギュッと掴んだ。



「あのっ、わたし……。貴方のような紳士的な方が勇者なら、とてもうれしいです……」


「えっ!?」



 なんか、びっくりすること言っちゃってるけど!?

 えっ、なにマジで本気なの!?

 耳まで真っ赤になっちゃって、めっちゃ可愛いんだけど! 



「その……。私の勇者様に、なってくださいませんか?」



 子ウサギみたいにぷるぷると震えながら、彼女は俺に勇者になってほしいって言ったんだ!

 そこまでされたら応えなきゃ男がすたるじゃないか!



「はいっ!! 喜んで!!!!」



 半ば勢いで俺は勇者になる決断をした。


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