昇級後は日雇いバイト(強制)が待ってます
冒険者章を受け取って、役職の設定も完了した。
これで俺もついに冒険者に!!―――と思ったが、ここでふとあることに気がつく。
そもそも冒険者ギルドの詳しいシステムっつーか、仕組み的なものを俺はまだ何も聞かされてないんだなこれが。
「色々ありがとうございます! あ、ちなみに依頼の受け方ってどうすればいいんですかね?」
「おっとすまない、肝心なところをすっ飛ばしちまったな!」
おいおい、俺が気づかなきゃ完全スルーの流れだっただろ。脳みその中まで完全に筋肉になりましたか?
「まずは依頼の受け方の前に、冒険者ギルドがどういった仕組みなのかを話しておこう。キョーヤ、君はそもそも冒険者ギルドがどのような組織かは知っているか?」
「いや、ただ何となく冒険者と呼ばれる人達が所属する組織なのかな、っていう漠然としたイメージしか持ってないですね」
「大まかに言えばその通りだな。冒険者にも色んな奴らがいる。モンスター討伐や薬草採集などをして日銭を稼ぐ者、古代の遺跡や迷宮を探索して一攫千金を狙う者、己の強さを求めて未だ見ぬ地へと挑み続ける者なんかがそうだ。まぁ、一番最初のやつが大抵なんだけどな。
そして彼らはこの冒険者ギルドに登録することでクエストボードに貼っ付けてある依頼を受け、それの達成報酬として金銭を受け取れるって仕組みさ」
「その依頼っていうのはどこから出されるものなんですか?」
「モンスターの被害に困っている村人たちや貴族、もしくは盗賊からの護衛として商人ギルドから依頼が入ることも多々あるな」
「なるほど、つまりギルドは依頼の仲介をしてるってイメージであってますか?」
「その通りだ。そして依頼にもそれぞれランクがあって、自分のひとつ上のランクの依頼までしか受けることができない。もちろん君も例外ではないぞ?」
「同じランクじゃなくて、ひとつ上のまで受けられるんですね」
「あぁ、依頼の難易度はその危険さや希少さを元に冒険者ギルドが設定するんだが、その際に同じランクの者ならば余裕を持って達成できるようにしてあるんだ。例えばAランクのクエストなら冒険者ランクでいうところのAとBの丁度真ん中に相当するようにな」
「確かにそれならリスクも軽減できるし、達成率も上がる。この仕組みを作った人はさぞかし切れ者なんでしょうね」
「だが、もしそれでも達成できなかったり、依頼を持ち逃げしたりした場合は違約金が発生するからそこだけは注意してくれ」
「分かりました」
身の丈にあった依頼を自分で見極められるかも重要になってくるってわけだ。自分の実力を過信して無闇にレベルの高い依頼を受注すれば、違約金は勿論、命さえも危険に晒されることになる。
「おっと、あと一つ。これはどの冒険者でもそうなんだが、ランクアップした直後の依頼は必ず薬草採集って決まってるんだ。だから一番最初はこれを頼むよ」
そう言ってマスラルが手渡してきたのは、薬草の細かいスケッチとその主な生育地域や効能が記された数枚の紙。こいつらを見つけて来いってことか。
「えーと、アクセシル草、ヒーリング草、キュアトス草、マナゲイン草の四種類ですか。へぇ、これ全部ポーションの原料になるんですね」
「そうだ。だからなるべく丁寧に採集を頼むぞ? 詳しい方法は後ほど受付でエフティミアからもらってくれ。まぁ、その四種はDランク冒険者が安全に入れる区域が主な生育地だし、君の実力なら全く困らず採集できると思うから変に気負わなくていいからな」
「ちなみに、なんでランクアップ直後は必ず薬草採集なんですか?」
「初依頼の前の肩慣らしってのもあるが、ほとんどの冒険者は地味で面倒くさい薬草採集なんて依頼受けやしないのさ。だから、こういう機会に無理矢理にでもやらせないと薬草不足が起こるんだよ。それに高ランク冒険者しか行けないような場所にしか生えてないやつなんかもあるからな」
「じゃあこれ、定期的にやらせたほうがいいじゃないですか?」
「本当はそうしたいところだが、ギルドとしても薬草採集に出せる報酬の額がそこまで高くなくてな。そんなんだから、当然ヤツらはより高額な報酬の出るモンスター討伐依頼を好んで受けるんだ」
かく言う俺も、ギルド直営の宿にタダ泊まりできるのも二週間だけだから、早急に金を稼ぐ必要がある。
報酬欄を見る限り、薬草10本一束で500ネカー。必死で200本集めても1万ネカーか。仮に1ネカーが1円の価値とするなら、200本も集めても報酬は1万円。日本の日雇いのバイトと同程度くらいだな。
200本と言ってもそんなに大量に群生してる場所なんか早々見つからないだろうし、たとえ見つかっていても同じ境遇の奴らが集まって取り合いになるだけだろ。そりゃあ人気も出ないわけだぜ。マスラルには悪いけど、この条件なら俺もモンスター討伐を選ぶ。
「まぁ結局は金ですからねー。金がなけりゃ武器や防具の修理・新調もできないし、それではいざという時に身を守れなくて本末転倒になりますから。それに泊まる宿も追い出されたら堪ったもんじゃないですよ」
「やっぱり君もそっち側か………」
少し悲しそうな目でマスラルが俺を見てくる。ゴリマッチョがそんな辛気臭そうな顔するんじゃねぇよ!
「でもその代わりと言っちゃ何ですが、今回はかなり多めに採集してきますよ! 少しアテがあるもんでね」
「アテ?」
「まぁ楽しみにしててくださいよ! でも今日はもう日が暮れそうなんで明日の朝イチで行ってきます!」
そうとだけ言って、俺は赤色のタグと数枚のガサつく紙を握りながらギルドマスター室を後にした。




