表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さいはて荘  作者: 椿 冬華
さいはて荘・夏
78/185

【らーめん】


 ひとさらいが あらわれた!


「まじょは にげだした!」

「しかしまわりこまれてしまった」


 捕まった。


「いやあ、一度行ってみたかったんだよねぇ。屋台のラーメン屋」

「ロマンだね! 夜更けに屋台でおでんを食べたりラーメン食べたり! アニメや漫画にはよくあるのに現実世界だと見かけないからファンタジーだと思っていたよ!」

「なぜワタシをさらったし」


 今日も今日とて、元国王と元王子に誘拐されてドナドナされたワタシである。今日はラーメンを屋台で食べてみたいってことで連れ去られた。


「でもほんと、屋台なんて珍しいね」


 赤い生地に白い文字で〝ラーメン〟と書かれたのれんを掲げている車が都市部に来ていたというのを元国王がパン屋でおばさまから聞いたらしい。

 移動販売車でラーメンの屋台をしながら日本を渡り歩いている、わりと有名な屋台屋さんらしい。実際ワタシたちがここに来た時もお客さんが並んでいた。

 カウンター席以外にも即席のテーブル席が用意されていたけれど、元国王と元王子はカウンター席がいいと言ってかなり待つ羽目になってしまった。そのロマン、ちょっとわかるけどさ。


「魔女くん、どれにする? ぼくは餃子セットにするけど」

「半炒飯セットにしようかな。あ、ラーメンに煮卵トッピングで」

「ボクにも彼女と同じのを頼むよマスター!」

「あいよ! お兄さんたち、日本語めちゃくちゃ上手だね~」

「ぼくらこう見えて日本人なんですよ~」

「おおっ、そうなのかい! いや~、そんなにカッコいいと女の子たちも放っておかないだろ? 羨ましいね~」

「ははは」


 うん、放っておかないよね。現に後ろのテーブル席から女性客たちがちらちら元王子見ているし。元国王もマダムキラーだし。


「女の子ねぇ。()()()()()()()()大歓迎なのだけれど。あと二次元」

「元巫女くんは~? きみ、仲いいだろ」

「ホーリィガール! 彼女以上に素晴らしい女性はいないとボクは思うよ。神聖とはまさに彼女のためにある言葉だ。──でもテディベア、だからこそボクごときが彼女を穢してはならないとも思うのだよ」

「ふぅ~ん。わからなくはないかな~」


 ……これはあれか? いわゆる恋バナか?


「へい半チャンセットおまち!」


 どん、とカウンターにラーメンと半炒飯が置かれたのでとりあえず割りばしを手に取る。


「そう言うキミはどうなんだい? 最近フェアリーと仲睦まじいじゃないか」

「ぼくねぇ~。お蝶くんは魅力的だけどね~でもさすがに年齢差がね……」


 ずるずる。

 おお、おいしい。王道のみそラーメンって感じだ。ちょい固めの麺がいい。チャーシューもとろとろで分厚くてむっちゃおいしい。サクサクもやしもたっぷりでいい。


「そうかい? 別にそこまで気にしなくてもいいと思うけどねっ。だろ? 魔法少女ちゃん」

「もふ、うんまあいいんじゃないかなと思うよ。本人同士がそれでよければ年齢差なんて」

「魔女くんも年の差あるもんねぇ~」


 やっば、この炒飯おいしい。コレまじでおいしい。パラパラ感が最高。豚肉たっぷりでむちゃくちゃおいしい。ヤバい。炒飯一人前を注文しとけばよかったかな──って、ん?


「おい待て、何の話だ」


 ワタシ〝も〟年の差あるってどういうことだ。


「だって社長くんとかなり離れてるだろ」

「呪うぞ」


 なんで社長が出てくる!? 今の流れで何故社長を出す!?

 フザけんのも大概にしなさいよあァん? 呪うぞてめェ。熊のぬいぐるみ亀甲縛りにすンぞおい。


「NO、ダメだよテディベア。花開く前のつぼみに触れるのはNG、さ」

「ん、それもそうだね~」

「いや待て。待てお前ら。待て、待て!! 何の話をしているのよっ!! なんかおかしなこと考えていないでしょうね!? 呪うわよっ!!」

「可愛いねぇ」

「可愛いねっ」


 うるせぇええぇぇぇえ!! 呪うぞ!!

 くそっニヤニヤしているこいつら腹立つ! 帰ったら呪うからな覚悟していろ!! 熊のぬいぐるみは亀甲縛りだ! やり方調べないと……!

 ニヤニヤしている二人組を呪う決心をして、ワタシは屋台の熱気のせいか熱くなった頬をぽふぽふ叩いて冷ました。


「ふふ。まあ社長くんはさておき、中学校の男子たちはどうなんだい?」


 ずるずると三人でラーメンをずずりながらまだ恋バナは続く。続くんかい。どうでもいいけれどうどんは〝ぞぞる〟で、ラーメンは〝ずずる〟って感じよね。そばはどんな表現が合うんだろ?


「いおりんと坊主? タイプじゃない」

「スッパリだねっ!」

「ワタシの理想は高いの」


 なんせワタシだもの。このワタシの隣に並び立つに相応しい男なんてそうそういない。と、いう冗談はさておき実際のところ、ワタシの理想はかなり高くなっちゃってるんじゃないかと思う。だってさいはて荘に住んでるんだもの。

 さいはて荘よ? さいはて荘。元王子という超絶イケメンがいるせいでそこらのイケメンが大してイケメンに見えなくなってしまったし、元国王や元軍人というどっしりと構えている人を見ているとそこらの男がなんだか物足りなく感じるし。

 うん、無駄に理想高くなってしまったと思う。大丈夫かワタシ。


「社長くんクラスじゃないとね~」

「だからなぜそこで社長を出すっ! 社長はワタシの天敵よ天敵っ!!」


 理想とは真逆の男よっ!!


「可愛いなぁ」

「可愛いねっ」


 うるせぇええぇぇぇえ!! てめーらなんなんだ!! 呪うぞ!!

 とりあえず大量の七味唐辛子をふたりのラーメンにぶっかけてやった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ