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異世界放浪者の神話決戦記  作者: 灰ライト
学院編
6/77

迅の過去と目的

勇者たちの細かいストーリーは飛ばさせていただきます。

 放課後になって特に用が無かった迅は、男子寮の自分の部屋に戻ってきていた。


 ちなみに部屋は迅が1人だけで使っている状態であった。

普通は4人一部屋なのだが、どこの部屋も4人ずつで埋まってしまっていたのだ。

だからといっても4人部屋を1人で使うには広すぎるというのもあり、迅は特別に個室を使っていいことになっていた。

その個室の広さは6畳ほどで、ベットと机にタンスなどの最低限な家具は揃っていた。


「もう出てきていいぞ、サラレス、セイドラ」


 ベットに腰かけた迅が呼びかけると、目の前に赤いワンピースを着たサラレスと、水色のワンピースを着たセイドラが現れた。

どちらも10歳前後の見た目をしており、サラレスの髪は燃えるように赤く、目はルビーのように鮮やかで、元気いっぱいという印象が強い()だ。

そして、セイドラの髪は白に近い水色で、目はサファイアのように青く澄んでおり、若干のタレ目というのもあり、物静かそうな雰囲気を出している()だった。

ちなみに、髪は2人とも腰の辺りまで伸びており、10歳前後という今の姿でもかなりの美形であった。


「ん〜っ!ご主人様の精神世界で遊んでるのも良かったけど、やっぱり外の方が気持ちいいね!」


「そうですか?私はご主人様の中でのんびりしてる方が心地よかったです」


 出てきた2人はだいぶスッキリとした顔をしていた。

というのも授業の時にだいぶ怒っていたので、迅が自分の精神を元に、《()()》で2人にとって過ごしやすい精神世界を作り、そこで遊ばせてストレス発散をさせていたのだ。


「スッキリ出来たようでなによりだ。さて、約束通りにさっきの事について説明するぞ」


 いざ話そうとすると、2人はしっかりと正座をして聞く態勢をとった。


「さっき2人を目立たないようにさせた理由は、簡単に言うと後が面倒くさいからだ」


 あまりにも簡潔な理由を聞いた2人は、座ってるのにズッコケそうになった。


「なにさ、それーーー‼︎」


「……ご主人様、それじゃ流石に納得できませんよ」


 またもや2人の機嫌が悪くなってきた。

まぁ、迅の言い方が悪いのだが。


「まぁ、待て。あのまま2人を隠さずに出してたら思いっきり注目を集めちまうだろ?悪いが今はまだ目立つ訳にはいかないんだよ」


「目立つと何が悪いの?」


「この世界での主人公が育たなくなる」


「「???」」


 迅の要領を得ない言葉に困惑して、2人は揃って首を傾げた。


(思えばこの2人は普段は俺の中にいるんだから、別に秘密にしなくてもいいか……)


「これから2人に俺の全てを話すから、しっかり聞いててくれよ」


 2人は迅の言葉にしっかりと頷いた。


「まず、俺はこの世界の人間じゃないんだ。こことは別の世界の人間だったが、今は色んな世界を転々としているところだ」


「ご主人様の力が見慣れないのはそういう事だったんですね」


「あぁ、元々こんな力は持ってなかったが、俺が元いた世界をトラヴィスブラマっていう神に壊されてな、その時に俺も死ぬはずだったんだが、別の神であるテオトルに運良く助けられて、そいつに神核を付与されたんだよ。で、その神核を元に創り上げたのが《変換》っていう能力なんだ」


「えっ?でもさっき精神世界を()()()()よね?」


 迅がこの世界の者でないのは薄々気づいていた2人だったが、改めて話を聞いてみると、まず神が干渉してくる事に驚いたし、迅の能力についても説明がつかないので、2人には疑問だらけだった。


「まぁ、更に詳しく説明するとだな―――」


 迅がテオトルから貰った神核とは、神が滅びて力を失った結果の結晶体の事である。


 神が生み出されるメカニズムはハッキリしないが、全ての神は神核が元になっているのだ。

そして神としての力は失って自律できなくても、神の核になれる程のエネルギー体である事に変わりはないので、それを取り込んだ迅はたった1つの能力でも、反則級の汎用性を持てるようになっていた。


 迅が回ってきた世界での通常の変換能力は、せいぜい無機物を同等の物質に変化させるか、自分の見た目を少し変えられるだけなのだが、迅は自分に関連するものを自由に変えることができる。

例えば迅自身が巨人になったり、透明になったり色々と可能だ。

その強過ぎる能力の代償に関しては神核の力でほぼ完全に抑えられるので、ほとんど問題はない。

ちなみに、サラレスとセイドラを普通の剣に見せた幻覚については、迅の目をその時だけ魔眼にして、ハリボテの剣に見えるように幻惑を掛けていただけである。


 では何故テオトルがいくつもの世界の中で迅を選んだのかというと、たまたま近くにいたからという簡単な理由だ。

というのもテオトルは、トラヴィスブラマの暴走を止めるために合計5体の神で挑んだのだが、あまりにも強過ぎたために敗れてしまったのだ。


 テオトル以外の4体は神としての力を失い神核になり、テオトルもギリギリのところまで追い詰められてしまい、崩壊していく世界の中で偶然近くにいた迅に神核を与えて、その力を元に世界を渡って生き延びたという訳である。


 そして、トラヴィスブラマが強過ぎた要因は、神核の複数使用によるものであった。

そもそも、神にとっては心臓である神核なので使うという発想すら無いはずなのだ。

さらにはたとえその発想に至っても、神である限りは力の制限をする盟約などがあり、自分の世界への過剰な干渉や他の世界への干渉なども禁止されており、その中の盟約によって、神核に手を加えるなどは出来ないのであった。


 だが、これには思わぬ抜け穴があったのだ。

その抜け穴とは、神同士でのやり取りで、いわゆる勇者召喚をした時に能力を与えるのだが、その能力に神の力を使える体を授けたのだ。

そして、その体を乗っ取ることで別の神核を取り込むことができるようになってしまい、次々と強力な力を使えるようになっていった。


 そして、その力に味をしめたトラヴィスブラマは他の神を手にかけ、次々と神核を取り込んでいった。

その結果、神が束になっても勝てない程の力を付けてしまったのだ。


 トラヴィスブラマが暴走し、テオトルたちが返り討ちにされてすぐに、他の無数の神が強力して、なんとか1人を除いて神核の取り込みを出来ないように制限することには成功した。

だが、トラヴィスブラマが残ったままでは次々と世界を壊されてしまうので、テオトル達はわざと制限をかけなかった迅に、トラヴィスブラマを討伐してもらう事にした。

迅にとっても、自分の家族や友人も何もかもを奪われて復讐心に燃えていたので、積極的にテオトル達に協力していった。


 迅はまず1つ目の神核で《変換》の能力を手に入れて、自分の肉体と精神を改造していった。


 肉体は神の力に耐えられるように強靱な体を作り、精神は感情のままに行動して我を失わないように、強すぎる怒りや悲しみを出せないようにした。

その後は複数の使われていない神核を取り込み、能力による代償を受けないようにいくつかの世界で強力な魔物等を相手に戦闘経験を積んでいき、迅は着実に力を付けていった。


 そして3年間みっちりと修行をし、ついにトラヴィスブラマとの一騎打ちで、壮絶な死闘の末に撃ち破ったのだ。

その後は迅がいくつもの世界を渡り、神を抜き打ちで調査をしているという訳である。


 迅が調査を始めてまだ4ヶ所目なのだが、基本的にはテオトルが怪しいと思う神の世界を優先的に回っているので、今のところは回った全部の世界で神と戦う事になっている。


 そして、今回も恐らくそうなるだろうと迅は予想していた。

とくに戦いがある訳でもないのに勇者召喚をし、具体的な目的も分からないのだから実に怪しい。


「―――という訳で、この世界の神が勇者召喚をした以上は、確実に勇者たちに何かしらの接触をしてくるだろうから、それまではあまり目を付けられたくないし、時が来るまでには勇者たちには力をつけてもらわないと困るんだ。総力戦になれば確実に必要になるしな」


「でもご主人様、それならご主人様が勇者たちを鍛えた方が速くないですか?」


「そう思ってやった時もあったんだがな……神に察知されちまって、(うま)いこと逃げられかけた事があるんだよ。だからなるべくは神の関係者が出てくるまで勇者たちだけでどうにかしてもらいたいんだ」


「へぇー、神様って意外と人間みたいな感じなんだねぇ」


「それなら仕方ないですね。それにしても、ご主人様はかなり規格外なんですよね?私たちでは足手纏いになりませんか?」


 話しを聞き終えた2人は現実味が無いからなのか、あまり動揺してなかった。


「まぁ、その点は気にするな。最初はこの世界に合わせて力を抑えるつもりだったしな。それに、この世界の奴らとの戦闘はなるべく2人の力を使う予定だし、必ずどこかで一緒に暴れてもらうことになるぞ」


 迅はニヤリと笑いながら2人に、〝覚悟しろよな″と話した。

すると2人は、力を思い切り使える事を想像して嬉しそうに笑い返した。


「うふふっ、全力を出せる日が楽しみです!」


「ご主人様!あたし達の力、しっかりと使いこなしてよね!」


「あぁ、その時は思いっきり使ってやるからな、壊れるなよ?」


 嬉しそうな2人にそう切り返した迅は一緒に笑い合い、今後の事について話してから1日を終えた。

ストーリーの進み方によっては迅の過去編をやるかもしれないです。

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