共闘
ギィィィッ!
金属を引き裂く耳障りな音が夜道に響く。
ハンター型の鋭い爪が、ゼロのシールドを何度も叩きつける。
火花が散る。
しかしゼロは一歩も引かなかった。
「ゼロ!」
俺が呼ぶと、ゼロは一瞬だけこちらへ視線を向けた。
まるで「指示を」と言うように。
(考えろ……。)
相手はハンター型。
ガード型とは真逆の性能だ。
装甲は薄い。
その代わり、速度と瞬発力は段違い。
ゲームでは多くの初心者がこいつに翻弄された。
まともに追いかければ、絶対に勝てない。
ハンター型が地面を蹴る。
一瞬で姿が消えた。
「速い……!」
次の瞬間には俺の背後。
咄嗟に振り向き、剣を振るう。
だが、空を切る。
フェイント。
再び視界から消えた。
「くそっ!」
ゲームと同じなら、次は――。
「ゼロ! 左!」
俺の声に反応し、ゼロがシールドを左へ向ける。
ガキィン!
ハンター型の爪が盾へ突き刺さった。
防いだ。
「やっぱり!」
ハンター型は攻撃の後、必ず死角へ回り込もうとする。
ゲーム時代、何度も解析した行動パターンだ。
「ゼロ! そのまま押し返せ!」
ガード型は機動力では負ける。
だが、純粋なパワーなら上だ。
ゼロが盾を前へ押し出す。
ハンター型の身体が大きく弾かれた。
今だ。
俺は地面を蹴る。
距離を詰める。
ハンター型も立て直そうと身を翻した。
速い。
でも。
「その動き、知ってる!」
ゲームでは数え切れないほど見た。
攻撃後の回避方向。
着地位置。
次の行動。
全部、頭に入っている。
剣を振り抜く。
キィン!
浅い。
しかし肩口の装甲を切り裂いた。
ハンター型が初めて苦しそうな電子音を漏らす。
「効いてる!」
俺は追撃しようとした。
その時だった。
ハンター型が突然、大きく後ろへ飛び退く。
逃げる?
いや、違う。
単眼が赤く点滅している。
ピッ。
ピッ。
ピッ。
嫌な予感がした。
「……ゼロ。」
ゼロもハンター型を見つめたまま動かない。
そして。
夜の静寂を破るように。
遠くのビルの屋上。
マンションの駐車場。
商店街の路地。
赤い光が、一つ、また一つと灯った。
「……嘘だろ。」
十。
二十。
三十。
いや、それ以上。
暗闇の中で、無数の赤い単眼がこちらを見つめている。
ハンター型は一体ではなかった。
仲間を呼んだのだ。
ゼロがゆっくりと前へ出る。
俺を庇うように。
目の前には一体。
左右にも数体。
さらに、建物の上からも。
完全に囲まれていた。
俺は剣を握る手に力を込める。
「……まずいな。」
この数は、ゲームでも序盤にはあり得ない。
知識だけでは覆せない状況。
そのとき。
ゼロが静かに盾を構えた。
そして初めて、自分の意志で一歩前へ踏み出した。
その姿を見て、俺も覚悟を決める。
「行くぞ、ゼロ。」
相棒は何も答えない。
それでも、その蒼い瞳は確かに俺を見ていた。
次の瞬間。
無数のハンター型が、一斉に飛びかかってきた。




