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ARK ZERO  作者: 松茸の香料


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エピローグは突然

新しい小説を作りたくて作りました

 その日も、俺はいつも通りパソコンの前に座っていた。


 モニターに映るのは、世界的人気RPG――**『ARK ZERO』**。


 サービス開始から八年。


 全世界で四千万人以上がプレイしている怪物タイトルだ。


 ゲーム内では今、期間限定イベントが開催されていたが、俺はそんなものには興味がなかった。


「……やっぱり変だよな」


 画面を見つめながら呟く。


 表示されているのは、とあるダンジョンのマップ。


 攻略サイトにも載っていない隠しエリアだ。


 俺は戦闘勢ではない。


 ランキングもせいぜい五百位前後。


 トッププレイヤーには遠く及ばない。


 だが一つだけ、誰にも負けないものがあった。


 考察だ。


 世界観の解析。


 マップの検証。


 NPCの会話記録。


 アイテム説明文の収集。


 プレイヤーたちが戦闘に熱中している間、俺はゲームの裏側ばかり見ていた。


 おかげでSNSではそこそこ有名だ。


 考察勢の間では『アーカイブ』というハンドルネームで通っている。


「この施設だけ、他と設計思想が違うんだよな……」


 古代施設《第七保管区》。


 ゲーム内でも特に謎が多い場所だ。


 壁面に刻まれた文字列。


 意味不明な機械。


 そして何より――


 中央に存在する巨大な扉。


 八年経った今でも開けたプレイヤーはいない。


 当然、俺もだ。


 しかし最近になって妙なことに気付いた。


 この施設のテキストだけ、世界観設定と噛み合っていないのだ。


 まるで。


 誰かが後から書き加えたように。


「……考えすぎか」


 椅子にもたれたその時。


 スマホが震えた。


 友人の高橋からだ。


『また考察か?』


『うるさい』


『青春しろ青春』


『お前は宿題しろ』


 即返信。


 既読も即。


『お前が言うな』


『彼女いない歴=年齢』


『通報するぞ』


 返信を打とうとして、やめた。


 くだらない。


 だがこういうやり取りは嫌いじゃない。


 高校二年。


 平凡な日常。


 平凡な学校。


 平凡な人生。


 そして唯一の趣味がARK ZERO。


 それだけだった。


 少なくとも。


 この時までは。


 ◇


 午後八時。


 俺は夕食を終え、自室へ戻った。


 再びゲームにログインする。


 ホーム画面には巨大な空中都市が映し出されていた。


 ARK ZEROの象徴とも言える景色だ。


 そして画面右上。


 フレンド欄に見慣れた名前が表示される。


【No.1:Raven】


 世界ランキング一位。


 サービス開始以来、一度も首位を譲ったことがない伝説的プレイヤー。


 正体不明。


 年齢不明。


 性別不明。


 ただ圧倒的に強い。


 俺のような考察勢とは別世界の存在だった。


「今日もいるのか」


 思わず笑う。


 この人、本当に寝てるのか?


 そんなことを考えながらチャット画面を閉じた。


 その瞬間。


 画面が一瞬だけ乱れた。


 ピシッ。


 まるで古いテレビのようなノイズ。


「ん?」


 通信障害か?


 だがすぐに正常へ戻る。


 特に気にせずプレイを続けた。


 しかし五分後。


 またノイズが走った。


 今度は少し長い。


 画面全体が歪み、見たこともない文字列が流れる。


《SYSTEM CHECK》


《ARCHIVE CONNECTION》


《REAL WORLD LINK》


「……は?」


 意味が分からない。


 こんな表示は見たことがない。


 イベントか?


 隠し演出か?


 スクリーンショットを撮ろうとした瞬間。


 表示は消えた。


 何事もなかったかのように。


「バグか……?」


 首を傾げる。


 妙な胸騒ぎがした。


 ARK ZEROを八年遊んでいる。


 だから分かる。


 今のは明らかに異常だった。


 運営の仕込み?


 大型アップデート?


 いや。


 そんなレベルじゃない。


 何かがおかしい。


 何かが――始まろうとしている。


 そう思った時だった。


 スマホが鳴った。


 通知。


 SNS。


 トレンドランキング一位。


【空が割れた】


「は?」


 思わず声が漏れる。


 タップする。


 投稿された動画が再生された。


 海外だ。


 どこかの都市の上空。


 夜空に巨大な亀裂が走っている。


 映像加工――ではない。


 周囲の悲鳴も。


 緊急車両の音も。


 あまりにも生々しかった。


『これヤバくね?』


『世界中で起きてる』


『日本でも見えた』


『なんだこれ』


『終末か?』


 次々に流れる投稿。


 背筋が冷える。


 冗談ではない。


 本当に世界規模の異常事態だ。


 すると。


 再びモニターがノイズに包まれた。


 今度は完全に画面が停止する。


 黒い背景。


 白い文字。


 まるでシステムメッセージ。


《接続対象変更》


 心臓が跳ねた。


《仮想環境を終了します》


「……なんだよ、これ」


《適格者確認》


《接続率 97.4%》


《認証完了》


 意味不明だ。


 理解できない。


 だが嫌な予感だけは膨れ上がっていく。


 そして。


 最後の一文が表示された。


《現実環境への接続を開始します》


 次の瞬間。


 ゴォォォォン!!


 地面が揺れた。


 巨大地震かと思うほどの衝撃。


 本棚が倒れる。


 机が軋む。


 窓ガラスが激しく震える。


「なっ――!?」


 慌てて立ち上がり、窓へ駆け寄った。


 そして。


 俺は見た。


 遠くの山の向こう。


 本来なら存在するはずのない場所に。


 巨大な黒い塔が突き刺さるように立っているのを。


 その形を、俺は知っていた。


 忘れるはずがない。


 ARK ZEROプレイヤーなら誰でも知っている。


 世界最初のダンジョン。


 初心者が最初に挑む古代施設。


 ――《第一採掘区》。


「……嘘だろ」


 喉が震える。


 目の前の光景を脳が拒絶する。


 だが現実は変わらない。


 塔は確かにそこにあった。


 そしてその麓で。


 赤い光が灯る。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 無数に。


 闇の中で。


 機械の眼が目を開いた。


 その姿を見た瞬間。


 俺の血の気は完全に引いた。


 なぜならそれは。


 ゲームで何千体も倒してきた敵だったからだ。


 ――機兵《ガード型》。


 ARK ZEROの世界が。


 今、現実へ現れようとしていた。


頑張って書いていきます。

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