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私はやはり受付で貰った鍵でドアを開けて、今晩を過ごす部屋に入った。荷物を床に置いて、どうして私はこんな所にいるのだろうかと思った。私が栃木の山奥で仰向けになってため息をついているのは、高校時代に多くの人を裏切ったからだろう。


 高校一年生の秋、私は文化祭をサボって同じクラスの女の子と遊園地に行った。高校で友達は一人も作らなかったが、なぜかその子とだけ仲良くなれた。ジェットコースターやメリーゴーランドに乗って、レストランで昼食を取った。私は自分がよく出来た人間だとアピールしようと思い(よく出来た人間が学校をサボってデートするはずはないが)私服だったとはいえ、どうみても十代の若者にしか見えない二人が平日の昼間に学校に行かずに遊んでいたのだから不審がられただろう。私達は大人達が向ける軽蔑の眼差しは気にならず、誰にどう思われようと構わなかった。彼女は夕方になると急に不機嫌になった。


「今日は最悪の一日だったわ。あなたって最低な人間、どうしても嫌いにならざるを得ない」


 彼女は吐き捨てるように言った。私は困惑した。


「どうしてそんなことを言うんだい?あんなに楽しそうだったのに」


「あなたには分からないわ。もちろん、誰にも私のことは分からない」


 彼女は帰りの電車で泣いていた、私達は何も言わなかった。親子が心配そうにこちらを見ていた。男の子は彼女に同情していて、母親は私を責めるように睨んでいた。少なくも、私にはそう見えた。何て残酷なのだろう、女の子が泣いていると男は無条件に責められる立場にあるらしい。彼女は私より先に電車を降りた。彼女がどこに住んでいるのか、私は知らない。だから、ひょっとすると彼女は気まずくなって適当な駅で降りたのかもしれない。それは分からない、彼女は私に名前くらいしか教えてくれなかったし、私には何も知る権利は無いようだった。


 彼女はそれから学校にこなかった、退学したと噂に聞いたが教師は何も言わなかった。都合の良いことだけ教えて、後ろめたいことは黙っておくなんて最低だ。なあ、ほんとう最低なのはくだらない文化祭を真面目に行う生徒や、君が退学したことを黙っておく教師ではないか、私は心の中でそう叫んだ。私は高校で誰とも口を利かなくなり、何の意味もない受験勉強をして大学に入った。私は裏切り者なのだと思う、文化祭をサボったとか女の子を泣かせたからではなく、誰も受け入れようとしていなかったし、誰とも関わりを持とうとしないことが背信行為なのだ。

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