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悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
4章 ルックスYの南大陸大冒険

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90話 牢屋イベントは持ち物を回収されない

 牢屋。その響きは善良なる幼女アキ・アスクレピオスには怖いものとの知識がある。なにせ澱んだ空気、鼻をつく饐えた臭い、黒いシミが壁や床にはあり、引っ掻き傷が掘られていたりする。窓一つなく、松明の炎が暗闇を照らすがそれもほんの一部だ。幼女でなくても、恐怖するだろう。


「牢屋って、とても怖いでしゅね。ぷるぷる」


 なので悪役令息ルックスYは格子を掴んで、泣きそうな顔で周りを見渡していた。その瞳は松明の光により涙がキラキラと輝いており、身体も震えていた。怖いんだよ。遊園地に来た幼女じゃないよ。


「う~む……おかしいな? 無銭飲食は金を払えば簡単に釈放されるピヨ。それどころか、牢屋に入ることさえ無いのだ。なぜ兵士たちは我らを牢屋にいれたのだ? お前は金を持ってきた時になにかしたのか?」


 腕組みをして、泰然とした表情で同じく牢屋に入れられた雛子が格子にしがみつく男に問いかける。


「うおーん! なんで俺っちも捕まったんですか? 牢番さん、俺っちはお金を持ってきただけっすよ? 犯罪者はこの3人! 無罪なんです!」


 格子をガチャガチャと揺らして叫ぶのはカストールだ。支払いのためのお金を持ってきたのに、ついでとばかりに捕まった不幸な男である。


「姉御! なんで俺っちが捕まったんですかい? 実は無銭飲食じゃなくて大量殺人でも行いました!? 無罪です、俺っちはマーモットにも疑似喧嘩で負ける男なんですよ〜」


 カストール・ジェミニ。こいつこれでも主人公なんだぜ……。どんな選択肢を選んだらこんな性格になるんだよ。プレイヤーとして恥ずかしいよ! 幼女を姉御呼びするとか、プライドとかないの?


「煩いぞ、下男! ロデー姫が楽しそうにしてるのに、なんと情けない姿だ! 鉄拳で躾をしてやろうか?」


「いでっ、蹴らないでくださいよ! 妹たちに蹴られたことを思い出すじゃないっすか。そこらの小石を家宝の幸運の魔石と称して商売してたら、死ぬほど蹴られたんっすから!」


 さすがはカスなトール。その発言を聞いて、ゲシゲシとキーナが蹴り始めたけど、同情するところが全く無い。


「キーナ、もっと蹴って良いよ。腐った心を矯正しないといけないから」


 嘆息混じりにちっこいお手々をフリフリ振る。もはや救いようがないかもしれないけどね。その場合は石化してパーティーに参加してくれ。大丈夫、ちゃんとゲームはクリアしておくから。


 カストールの更正が上手くいくかはキーナに期待しておいて、雛子のセリフには考えることがあるな。


「無銭飲食で牢屋とか、たしかにおかしい。そんなことをすれば、牢屋はすぐにいっぱいになっちゃう」


 治安の良い前世の日本ではないのだ。この世界はちょっと油断するとスリや強盗、人殺しや誘拐、幼女にすぐに遭ってしまう治安の悪い世界なのである。


「まぁ、それは情報を集めてみればわかるよね」


 アキたちが入っている牢屋には四人以外にもいる。すやすやと寝ているチンピラや正座して壁と見つめ合っているチンピラとか。なので、良い子な幼女は無邪気な顔でトコトコとチンピラたちに近づき声を掛ける。


「ねぇ、おじさん。おじさんはなんで捕まったの?」


「ひいっ、え、え~と、あっしらは暴動に加わってどさくさ紛れに商店を襲おうとしてたら捕まりました!」


 なぜか恐怖で顔を引き攣らせて、アキを見ないように顔を逸らしながらチンピラは答える。


「なるほど、まったく参考にならないや、捕まるの当たり前だもんね」


「ま、まぁ、嫌な牢屋の組み合わせだとは思うっすよ。ほら、見てください。他の牢屋ですけど、マトモそうな人たちと必ずチンピラが一緒に入れられているっすよ、ちょっと酷いっす」


 キーナの蹴りを防ぎながら、カストールが言うが対面の牢屋とか、たしかに平凡なおばさんや小さな子供が荒くれ者たちと一緒に入っている。老若男女関係無しだ。改めて見ると酷いな。


「これだと荒くれ者たちが好き勝手やっちゃうじゃん!」


「恐らくはそうして荒くれ者たちの不満やストレスを解消させているのだろう。この牢獄の管理人は腐ってるようだな」


「本当だよ! あたちたちもそこのチンピラたちが起きてたら、イジメに遭ってたかも! イジメ反対!」


 弱い人間を一緒に入れての、殴るや蹴る、他にも幼女の口ではとてもではないが言えないことをするのだろう。プンスコ怒る幼女だ。こういうやり方は、一時的に不満の目をそらせるから効果的かもしれないが、非道すぎる。


「我らの牢屋みたいに気のいい奴らなら助かったのだがな。床に自身の顔型を残そうなどと変わった趣味を持った奴らとか」


 クックとおかしそうに笑う雛子。たしかにアキたちの牢屋にいた先任の囚人は変わった趣味を持っていたね。


 最初にアキたちに声をかけてきた男は、床に顔型を作りたいと、雛子の手を借りて、床に思い切り顔をぶつけたのだ。首輪の呪いが解けた雛子のパワーは物凄く、変わった趣味のおじさんは未だに痙攣して起きる様子はない。でも、こんなに気の良いおじさんたちばかりではないはずだ。


「ねーねー、あたちはロデーでしゅ。なんでおばさんたちは捕まったの?」


 ならば、情報収集だ。幼女はゲーム理論に従い、皆に話を聞こうとする。悪役令息という運命さだめから離れることのできた幼女はとても無邪気で人懐っこい。ぱちくりお目々で尋ねる幼女に皆は癒やされる。


「そ、そうだねぇ。あたしゃ、肉屋なんだけど、肉切ってたら反乱を起こすつもりだろうと言われて捕まったんだよ」


「なるほど、それは大変でちたね。カステラの茶色いとこあげます」


 おばさんが困った顔で教えてくれる。エプロンは肉の処理中についた血だらけで、少し太った女性だ。肉を切っていただけで捕まるなんて酷いね。


「俺はバナナを収穫してたんだ。でもバナナの茎から出る液体がついて汁まみれになった。そしたらこの反乱分子めと捕まっちまった」


 おじさんの服は真っ赤に汚れており、バナナの汁は赤いんだ。たしかに少し怖いや。でも、酷い話だね。


「んとね、歩いてたら、はんらんぶんしめーって、ここにおかーさんと一緒に入れられたの。おなかすいちゃった、おかーさん。いつ帰れるの?」


 そして褐色肌の幼女がお腹すいたよと、隣の女性の裾を掴んで教えてくれる。なるほど、もはや誰でもよかったらしい。カステラの茶色いところを褐色幼女にはあげよう。


「皆、それぞれアンケートをとって! どうやらあたちたちが捕まったことには裏があるみたいだよ」


「ククッ、良かろう。そこのカスよ、アンケートとやらをとれ」


「私が後ろで監督してあげましょう、カス男」


 ククッと笑い雛子はまったく動かず、キーナは監督をすると胸を張る。


「うぇぇぇ、俺っちだけが働かないといけないんですか!? 姉御、なんとか言ってくださいよ! この二人ひどすぎます!」


「うん……そうだね」


 カストールの言葉にも一理ある。これは問題だと真剣な顔になるアキだ。


「雛子とキーナってキャラかぶりしてない? これにシーウィードも加わると少しかぶりすぎだと思うんだけど」


 キリリとした顔で、とても真剣に答える幼女です。この二人似すぎてない?


「気にしてるところがまったく違った! 駄目だ、この主人は危険なる香りがするっす。あだっ、蹴るなって、この高飛車女!」


「さっさと、アンケートを取れ! ロデー姫のご指示だぞ!」


「アンケートって、この違和感に誰もツッコむことないんすっか? あだっ、わかった、わかったって!」


 真面目な顔で鋭い蹴りを連発し、キーナはカストールの脚を破壊しにいくので耐えきれずに他の牢屋に捕まってる人たちに話を聞くのであった。


 ——そして情報収集すること1時間。全ての牢屋の人々からアンケートを取り終わった。汗だくで倒れているカストールよ、ご苦労さま。


「ふむ……やっぱり8割は無実っぽいね。暴動で捕まった人々が7割、無実の人たちが8割、そして、本当の悪人はゼロか……」


 指折り数えて幼女は現状を確認して顔を顰めちゃう。これは予想以上に酷い状況だな。


「無駄飯食らいを増やすわけがない。どうやら人々を捕まえる理由があると見たぞ、ロデー」


 目を細めて、ニヤリと口角を釣り上げる雛吊り


「このような場合、奴隷とか生贄とかろくなことに使われないと思います、ロデー姫。許せませぬ」


 義憤にかられたように真剣な顔で胸を叩くキーナ。


 雛子とキーナの言うとおりだ。幼女まで捕まえる意味があるのだろう。単なる脱獄イベントだと思ってたけど、これは少しワクワクしてきたぞ。


「計算式がおかしいとは誰も言わないんっすね……姉御基準の本当の悪人ってどんな悪人っすか……」


 カストールのツッコミをスルーして、なら頭脳明晰な軍神アキの天才的な作戦を教えよう。


「牢屋にしばらくいて、誰かが連れて行かれたら後をつけよう。きっと何かしら分かるはず」


 天才的な作戦だ。誰にも思いつかない鬼謀だと言えよう。


「そうだな、それが一番手っ取り早い——む、誰か来るぞ!」


 鋭い声で雛子が注意をしてきて、アキもかすかな足音に顔を顰めると、素早く駆け出す。規則正しい足音、恐らくは看守だ。


「皆、早く牢屋に入って! 誤魔化さないと!」


 手早く近くの牢屋に入ってアキは牢屋の扉を閉める。


「ここで見つかると作戦が無になるであろうからな」


 雛子も素早く近くの牢屋に入り、扉をカチャリと閉める。


「わかりました。耐える時は耐える。騎士の掟です」


 同じくキーナも跳ねるように駆けると、牢屋に飛び込み扉を閉める。


「ゲホッ、ちょ、ちょっと、俺っち疲れてるし、扉閉めないで〜」


 近くの牢屋に入れなかったカストールは転がっていた箒を顔の前に置いた。


 そして足音が近づき、目つきの悪い看守が姿を見せて——


「むっ、貴様っ! なんで牢屋から出てる!?」


「やっぱり見つかったぁ〜! 格子のつもりだったのに!」


 牢屋コントは失敗。カストールはあっさりと見つかった。


「やれやれ、空気の読めない看守だこと」


『氷の矢』


 苦笑気味に幼女はカードを素早く引き抜き、氷の矢を放つ。一抱えはある氷の矢が生み出されると、看守に命中し、その身体を一瞬で凍らせる。


 その様子を見ていた囚人たちは驚きの顔となり、雛子が不敵な顔で牢屋から出てくると堂々とした態度で手を振り演説を開始する。


「きけい、哀れなる民よ。どう考えてもここにいては命の危機。だが安心せよ。ヒヨコッコ族の女王雛子・フェニックスとポセイドン王国の王女、ロデー・ポセイドンが貴様らを助けよう。さぁ、民よ、脱出の時だ! ピヨピヨ」


 そうして雛子は悪戯そうにアキに笑いかけてくる。次期族長とか嘘だったんだな。本当は族長だったのか。


「お! おぉ! ヒヨコッコ族とポセイドン王国が!」


「どうりで、偉そうだと思った」


「これはチャンスだ! 今度は大勢いる。今度こそ革命だ〜!」


 人々が興奮した表情で腕を振り上げて、牢屋の扉を開けて飛び出すと駆け出す。


 なぜか暴動がまた始まった。


 幼女が全部の牢屋の扉を開けたせいじゃないよ。でも牢屋の鍵ってゲーマーなら絶対に開けちゃうよね?

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― 新着の感想 ―
あまりに民度が低くて草 あーちゃんが導かなきゃ…
うーん、民度が低いw支配されてた方がいいんじゃないかたすら思うぞ
更新乙 この国・・・オアシスが壊滅する未来がみえまちた!!
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