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悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
4章 ルックスYの南大陸大冒険

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87話 異種族って、ステータス高すぎだよね

 南大陸に到着して僅か数時間で手に入れた新しいおうちとなったうらぶれた怪しい酒場。死体だらけの幼女の教育に悪い部屋にて、アキは椅子に座って、恐れるどころか、なんともない顔でようやく見つけた主人公を睥睨するのであった。


 とても幼女教育に悪い存在、それがアキ・アスクレピオスなのだが、本人は善人でお人好しだと自覚しています。思いついたら即実行。悪即斬には時間はいらないのだ。


「へ、へへ、俺っちと知り合いでしたっすか? 姉御のような素晴らしく可愛らしい幼女に出会ったら忘れないと思うんっすけどね?」


 そして、周りの霧の戦士たちを横目で見ながら揉み手をしつつ卑屈な表情の青年の名前はカストール・ジェミニ。ゲーム『地上に輝く星座たち』の主人公であるのに、チンピラのようになった男だ。


「あたちを知らないとかショックでしゅ。まぁ、それは良いとして、なんでアカデミーに来てないんでしゅか。今年入学じゃないの?」


「へへ、それがすこーしばかりね、その、伯爵家を復興させようと、ちょっとカジノに行ったら、怖い人たちが、ほら、金をね、返せと家にやってきまして……妹が僕を貿易船に売って、借金返済をしたんっす。で、船が難破して南大陸に流れ着いたのが昨年の話です」


 想像以上にカスな人生だった。というか15歳でそこまで堕ちるなよ……って、妹!?


「お前の妹は死んだんじゃないの? 危険なモンスターからカストールを庇って亡くなっただろ?」


「あぁ、去年の話ですか? たしかに村に大型の魔物が現れたっすけど、妹が罠や分身を使って倒してくれて、へへ、一命を助かりました」


 驚くアキにカストールがヘラヘラと笑うがそれどころではない。ゲームでは妹がカストールを庇って死ぬ。「兄さんならきっと伯爵家を復興させられるよね」とか言葉を残して。そうして遺言に従い、伯爵家を復興させようとカストールは誓うのだが……妹!? 分身を使いこなす妹とか、しまった、そいつがストーリー崩壊の原因だったのか!


「もしかしてその妹は優秀じゃなかった?」


「そこまで優秀じゃなかったですけど、努力が倍になるからゴニョゴニョ」


 妹は天才ではないと口籠る心の狭いカストールだけど言いたいことはわかった。ジェミニの分身を使って2倍の経験を積んだんだろう。目に見えていきなりパワーアップしないのであれば転生者ではないのかな? どちらにしてもイレギュラーなことは間違いない。


「没落したアスクレピオス侯爵家ってのが華麗に復興を果たしまして、うちも復興しようとかスパルタになったんですよね。僕はそんな生活が嫌でカジノで一発逆転を狙ってたんですが、妹は地味に努力を重ねてまして、あははは、僕よりも強くなりました」


 どちらにしてもイレギュラーなことは間違いない。アスクレピオス家のせいでもない。そうか、スパルタ教育になったから、妹が強くなり、命が助かったと。


 から笑いをして情けない姿を見せるカストールだけど、世界滅亡を防ぐにはこいつを連れ戻さないといけないんだよな……。絶望感が心の内から溢れ出てくるよ?


「妹はアカデミーに通ってるの? どんな容姿?」


「アカデミーに通ってるはずっす。僕をゴミでも見るかのような幼馴染と一緒に。銀髪の美少女ですよ、名前はポリュムニアーっす」


「あ、そう………。そうか、ポリュムニアー。渾名はニア?」


 銀髪の美少女って、思い当たる子が一人いた。


「あ、やっぱり妹も知ってるんすか。えぇ、親しい相手にはニアと呼ばせてました。僕が呼んだら怒りますけど」


「ギャンブルでの借金は最低だから当たり前でしょ。そうか、アカデミーは……まぁ、頑張ってるんじゃないかな。幼女を売ろうとするカストールなんかとは比べ物にならないほど立派だよ」


 本人は冒険者ギルドで金稼ぎしてたからね。驚くべき苦学生だった。とすると、ジェミニは容姿を変えられるんだな? きっとカストールに変身させているのだろう。分身をカストールの姿にしたのは、伯爵家復興には嫡男の方が有利だからに違いない。健気な少女である。


「おーい、そこの幼女」


「仕方ない……カストールはあとで地獄のスパルタを行って腕を鍛えるか。それか、石化させて磔にして持ち歩くか……」


「お~い、そこの幼女?」


 ゲームでもソロ縛りの場合、味方が死んだままだったり、石化させて、ストーリーを進めたものだ。主人公がストーリーに絡むならどちらでも良いかなと考え込んでいると、横から強引に声をかけてくる少女の声。見ると首輪をつけた少女だった。


「助かったぞ、幼女よ。久しぶりだな! 元気であったか?」


 なんか偉そうだけど、誰これ?


「忘れたか? キーナ・ルプスだ。『無限の水瓶』を取り返してもらったルプス子爵家の三女だ。盗賊に捕まっていたのを助けてくれたであろう? 覚えていないか?」


「あぁ、思い出した。お元気そうでなによりでしゅ」


「うむ! そなたも元気そうだ。子爵家が没落し、一発逆転で南大陸に『無限の水瓶』を売りに来て、白鯨に船を破壊されて遭難すること1年。危うく娼婦にされそうになったところをよく助けてくれた!」


 胸を張って傲慢なる態度のキーナ。薄汚れた布の服と首輪だけの姿をして、日焼けをして褐色肌だ。そういえば、以前に盗賊団を退治に行った時に会った事あるな、この子。没落したのに、以前と態度がまったく変わってないぞ。でも、この場にいる理由はなんとなく理解したよ。


 砂漠の広がる南大陸では、水は高く売れるだろうからね。ここにいる理由は理解したから、もういいよ、白鯨による遭難は不幸な事故だったね。


「まぁ、偶然にも助かってよかったね。で、こいつらなんだったの? とりあえず悪人っぽいから殺したけど」


「わけもわからないのに殺したっすか……。お、恐ろしい幼女っす………」


 ドン引きのカストールが顔を恐怖に染めて引き攣らせるけど、幼女を売り物にしようとしていた時点でスリーアウトである。罪悪感などこれっぽちもないよ。


 さて、カストールと、オマケのクッコロさんはもう良いや。次は檻に入れられてる人たちだな。


「あ、カストールたちは死体を片付けておいてね。文句があるか、逃げるなら別に良いけどさ。もう一体死体を片付けるだけだから」


「へいっ、当然やるっすよ! だから殺さないでください!」


「うむ、我らを謀り甘い汁を吸う悪にはちょうどよい。これからはこき使ってやろう」


「なんというか、元子爵家なのに王女様レベルで偉そうだよな、キーナって」


 敬礼をすると、テキパキと素早く死体を片付け始めるカストールに、腕組みをして頷くキーナにかなり引くよ。まぁ、復讐を考えるような素振りはないから良いけどさ。


「で、おねーさんたちはもしかしてエルフでしゅか?」


 檻の中で蹲る数人の女性に期待を胸に声を掛ける。だって耳が笹のように細長く顔も芸術品のように美麗で整っているのだ。こんな美女は見たことがない。しかも豊満なスタイルで目を引く美女だ。


 エルフだよ、エルフ。ドワーフは少し残念だったからエルフに期待する!


 切れ長の目をアキに向けると、檻の中にいる美女の一人は口を開く。


「私たちはエルフじゃないピヨ。誇りある空を駆ける種族。ヒヨコッコ族の次期部族の長、雛子ひなこ・フェニックスピヨ! さぁ、檻を開けるピヨ!」


「え~と、空を這うヒヨコ族? え? フェニックス? どっちなんだ?」


 思わず聞き返してしまうアキ。無理もないよね? なんでヒヨコがフェニックスなんだよ。


「ムキー! 最強のヒヨコッコ族を前に無礼な幼女め! ピヨピヨピヨ!」


「そうだピヨピヨ!」


「恥をしれ、幼女め!」


 美女の陰に隠れて、ピヨピヨと鳴くフェニックス族? ヒヨコッコだっけ? よくわからない。


「まぁ、とりあえず開けてあげるよ。ほら、空へとお帰り」


 鳥籠のドアを開けて鳥を逃がすかの如く、盗賊の技を用いて鍵をちょちょいと開けてあげると、ヒヨコッコ族はトテトテと外に出てくる。豊満なる胸をそらして外に出てくる姿はなんとなく鳩にも感じる。


「遅いピヨ! だが我らヒヨコッコ族を助けたのは褒めて遣わす! 早く料理を持ってくるのだ!」


 先頭に立つ美女が偉そうに顎をしゃくり偉そうにお礼を言ってくる。


「ピヨピヨピヨピヨ」


「ピーヨピヨピヨ」


「ピヨピヨピーヨ」


 そして、その後ろに整列した少女たちが、ピヨピヨととてもうるさく鳴く。全員が笹のような耳と、切れ長の美麗な目つきの美しい少女たちだ。サラリと伸びる翠色の髪がエメラルドのようで、微笑む姿は絵画の中の人のようなのに、ピヨピヨと鳴くので、アホさが全てを台無しにしていた。


「それじゃピヨピヨ族さんは、お帰りはあちらでお願いします。キーナさん、外まで見送りをして差し上げなさい。翼もないのに鳥人って意味わかんない」


 助けてあげたのに、偉そうな態度。もうリリースして良いよね。見た目はエルフ、高慢な態度もエルフ、翼もないんじゃ、どう見てもエルフでしょ。現実で出会うとこんなに苛つく人だと思い知ったよ。


 だが、アキの態度に慌てた雛子は手をパタパタと振って、なんか服を脱ぎ始めた。胸とか丸見えでウヘヘとカストールが鼻を伸ばして凝視する。が、色仕掛けは幼女には通じないよ━━。と思ってたら違った。


「待て待て。待つのでピヨ。この背中に翼を生やせるのが、我ら鳥人族なのだ!」


 なにもない綺麗な背中から茶色い翼が生え始めて、人よりも大きくなったのだ! 凄い、本当に鳥人族なのか? ゲームではいなかったよ?


「ふふふ、驚いたか? これこそ我らヒヨコッコ族の翼よ。ほら、この空を飛ぶ偉大なる翼をとくと見よ! ぐふっははは」


「す、すげー、飛んだ! 飛んだでしゅ!」


 翼をはためかせて、大空を舞うように飛び立った雛子に、幼女はパチパチと拍手しちゃう。本当に飛べるのか。ピスケス家みたいに、固有スキルに変化鳥人とかあるのかな?


 天井に頭が突き刺さっても、ふははと笑っている雛子を見て感動してしまう。こんなに低い天井なのに空を飛ぶとはアホなのも理解したよ。


「我らを助けると利があるぞ、ロデー・ポセイドン王女よ! さぁ、我らと手を組もうではないか」


「うん? あたちのことを知ってるの?」


「ふふふ、私はなんでも知っている。眉一つ動かさずに敵を情け容赦なく殲滅する殺戮の幼女。そんな幼女は噂に聞くロデー・ポセイドン王女しかいないとな!」


 どうやら南大陸では、ロデー・ポセイドンの名前が広まってることが判明した。それにしても、その噂は間違ってると思います。

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― 新着の感想 ―
ちょっと前の妹ちゃんなんじゃないか疑惑がちょっとかすってた!こんなんわかるか!
カストールいらねー、拘るな幼女ちゃん。
頑張る必要が無ければ頑張れない人かー。
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