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悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
3章 冒険者になる悪役令息ルックスY

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82話 新会社の宣伝は派手にしよう

 冒険者ギルドの悪辣な人身売買が暴かれて数日後。冒険者ギルドは先代ギルド長が病魔鼠を使って王都を襲撃する事件よりも遥かに大騒ぎとなっていた。メノン先代ギルド長は言うなれば個人でのテロ活動であり、冒険者ギルドへの直接のダメージは少ないと見られて、ほとんどの冒険者は貴族の勢力争いに利用しないでほしいと嫌な顔はするが他人事であった。


 だが今回は別だ。なんと驚くことに、冒険者ギルドが裏で人身売買を行っていたことが判明したのである。その事件は瞬く間に王都全体へと広がり、皆に衝撃を与えたのだった。


 そのため、冒険者ギルド前では、冒険者たちや、行方不明となった冒険者の中でも王都にいた家族たちが詰め寄せて大騒ぎとなっていた。


「おい、俺の仲間が薬草採りで行方不明になったのは、お前らが攫ったんだろ!」


「私の息子を返して! 冒険者になるって頑張ってたのに行方不明になったのよ! あなたたちが売ったんでしょ!」


「おかしいおかしいと思ってたんだ。俺の恋人は一際危険に対して鋭かったのに、死ぬはずがなかった!」


「お前らふざけやがって! こんな建物は破壊してやる。俺らを奴隷としてしか見てなかったんだな」


「貴族派め、よくも俺たちを金に換えてくれたな!」


 怒号が飛び交い、悲痛な声が道路に溢れる。殺気だった者たちは武器を構えて、今にも冒険者ギルドに襲いかかろうとしていた。


「お、お待ち下さい。今は現状を確認しているところであり、事件の報告書をじっくりと読み判断をしようとしております。既にズムギルド長が亡くなったことを確認しており、次期ギルド長の選定にも注意しているところでして」


「なにがじっくりだ! 俺たちも知ってる事件をお前らが知らないはずないだろ。舐めやがって、俺たちを話も理解できないマーモットだとでも思ってるのか!」

 

 冒険者ギルド前に立ちはだかり、中へと押し寄せられるのを防ごうとするギルド員の言葉に群衆はヒートアップし、焦ったギルド員たちは冷や汗をかいて青褪める。


「冒険者ギルドの建物を破壊しちまおう。こんな奴隷商人の建物なんか打ち壊してやれ!」


「そうだ、そうだ! 破壊しちまおう! 誰かハンマー持ってこい!」


 群衆の怒りがピークに達し、遂に爆発しようとする。その様子を中にいたギルド員たちは悲鳴を上げて、恐怖する。


「なによ、せっかく受付嬢になって安泰だと思ってたのに! なんでこんなことになってるのよ!」


「コネで入って順調に出世してきたのに、なんで踏み台の冒険者たちに追い詰められないといけないんだ!」


 彼らギルド員は皆が貴族派の三男や四男、次女や三女だ。貴族派の息のかかった者たちは平民の冒険者を馬鹿にしており、いくらでも報酬を中抜きできるカモだと思っていた。そのため、反省よりも怒りのほうが大きく、まったく反省する様子はない。その空気は前々から冒険者たちも気づいていたが、根無し草の自分らは逆らえば働くことができないので我慢していたのが実状だった。


 そして冒険者よりも遥かに我慢ができないのがギルド員たちであった。底辺の人間を雇っているという傲慢な考えから、依頼で死んでも虫でも死んだかのように気にしなかった彼らはエリート意識で増長していたこともあり、冒険者たちの怒号に我慢などできなかった。


「どきなさいよっ、私は帰るから。はっ、こんな仕事いつ辞めても私はコネがあるから。底辺のゴミどもはここで文句を言っていればいいわ!」


 いつも冒険者が死んでも迷惑そうにするだけの受付嬢が先頭となって、居並ぶ群衆をかき分けて出ていこうとする。その愚かな行動と言動は群衆の導火線に火をつけた。


「ふざけるなよ、お前! 俺たちをそんな目で見ていたのか!」


「この受付嬢、いつも冒険者が帰ってこないって文句を言ってた奴だ。依頼が未達成になると処理が面倒なのとか愚痴っていたぞ」


「そうか………こいつらは全員人身売買の組織とグルだったんだ。だから、依頼が失敗することも知ってたんだな!」


 冒険者たちの怒りは視覚化できるほどにその場の空気を熱して、誰か一人でも手を出せば暴動が始まろとうしていた。


「な、なによ、私は人身売買とは関係ないわ。そもそも本当に拉致されていたわけ? 無能が依頼を失敗して死んでいったんじゃないの?」


「こいつ………殺してやる! 仲間の仇だ、皆殺しにしてやる!」


 このままでは多数の死者が発生する。未来予知ができなくても、その結果がわかる程に危険な空気となったが——


 ポロン、ポロン


 澄み渡るような優しい音色が群衆の耳にするりと入り、その怒りが不思議なことに霧散して、心が温かい音色に癒されていく。


「な、なんだ、この音色は?」


「あそこだ。あの屋根の上にいるぞ!」


「幼女? 幼女が竪琴を持ってるぞ」


 毒気を抜かれたかのように群衆が周りを見渡し、音源を探すと、対面にある建物の屋根の上にちょこんと一人の可愛らしい幼女が座っていた。竪琴をポロンポロンと奏でて、周囲の殺意を抑えていく。


 竪琴を奏でながら、幼女はふんすふんすと得意げに群衆を見渡す。


「あ~ちゃんです! あ~ちゃん、がっきかなでるのとくいなの。しゅごいでしょ?」


 その音色は天上の音色だ。音楽に関心のない者たちも魂が震えるような音色が染み渡り感動で涙目となる。


 あ~ちゃんの音楽は全てを救う音色だった。


「それじゃ、あ~ちゃんはおうえんしゅるのでがんばってくだしゃい。ふぁいっ! あ、つみをにくんで、ひとをにくまずだって。だからたてものをにくんでくだしゃい」


『星光の歌:戦意無謀的向上』


 そして、あ~ちゃんは群衆を煽った。


 あ~ちゃんはまったくそんな気はなく、楽しそうなので参加しただけであった。


「うぉぉぉ! やってやる、俺たちがやってやる!」


「そうだ、冒険者ギルドなんかあるからいけないんだ!」


「はかいはかいはかいはかい!」


「齧ってやるまきゅよ!」


 そうして、群衆は目を真っ赤にして怒りを冒険者ギルドにぶつけて打ち壊しが始まり、たった数時間で伝統ある冒険者ギルドの建物は瓦礫となって、物理的にも完全に崩壊するのであった。


 奇跡的に死傷者はゼロでした。


           ◇


「なぁ、これからどうすれば良いと思う?」


「もう冒険者には戻れないよな……」


「で、でも村にも帰れないわよ。私の家はそんな余裕ないもの」


「おらんちもだ。幼い弟妹を育てるのに、食っていくのが限界だったから、王都にきただよ」


 瓦礫となった冒険者ギルドに、今まで冒険者をやってきた者たちが狂気的な熱気が消えて冷静になると、困りきった暗い顔となり話し合う。


 元々、低賃金でも我慢していたのは、彼らが寄る辺ない浮雲のような存在だったからだ。あからさまにぼったくられていることに気づいても文句を言えなかったのは、それなら冒険者を辞めて頂いて結構と言われるからだ。


 身元も分からない自分たちを雇ってくれるのは冒険者ギルドだけであったのだ。そのため、冷静さを取り戻した今はこれからの生活に皆が不安を覚え始めていた。


「はいはい、大丈夫でしゅよ。貴女たちの就職先はカステランがありましゅ」


 と、不安げな人々の前に、拍手しつつアキが言葉をかける。ニコニコと幼女は笑顔でお疲れ様でしたと皆を労う良い子だ。さっき煽っていた? 知らないな。


「あんたはさっきの幼女。なんだ、カステランの人だったのかい?」


「アキおにーさまがどーぶつ虐待で謹慎となったので、あたちが広報大使になりまちた!」


 ふんすふんすと胸を張る幼女。胸には名札が張ってあり、『広報大使』と書かれている。


「あれはお酒を奢ってもらったので水に流してもらったんだ、妹よ。もっとお花食べてよいまきゅ?」


 幼女の後ろからコブターンがお花をもしゃもしゃ食べながら続く。コプターンの中身はマモである。お腹が空いて、お花を食べているのだが、花壇に咲いている綺麗な花をむしって食べているので、少し外聞が悪かった。


 そこで登場したのがアムネジア・アスクレピオスだ。なぜかコブターンの悪い噂がドンドコ広がっていくので、仕方なくカステランを手伝うこととした。


 とはいえ、見掛けは幼女だ。その見かけから困惑するもの、見下すものと、様々である。無邪気で素直、純真な幼女は悪意というものを知らずに、広報大使というよくわからないお仕事を頑張るよと張り切っている。幼女に対する異議異論は受け付けません。


「えへん。カステランは冒険者を適当に雇いません。真面目に全員を正社員として雇用し、福利厚生を拡充させて、月4日の休暇、有給休暇20日、賞与は年2回、危険手当ありとなります」


「全員を雇ってくれるというのか? おらのような者たちもか!? おら、田舎からやってきたから、な~んもできんぞ?」


 ざわつく冒険者たち。正直言って薄汚れた布の服に小振りのナイフを持った冒険者たちが多く、どう見ても冒険者というよりも、ただの平民にしか見えない。


「そ、それに、あんたらも行方不明者が出ても気にしないんじゃないのか? 人身売買をしないという確約はあるのかよ」


 冒険者たちは不審な顔だ。たしかに冒険者ギルドと同じ事をされるのではと恐れる気持ちもわかる。だが、大丈夫な理由がある。ここは難しいので、ソロジャに説明をしてもらおうかな。アキモットは飽きたのでカステランの花壇の中で寝始めてるし……あれ、ついてきたのにいないぞ?


「ウ~ン、ウ~ン。冒険者ギルドの施設を破壊しては駄目です。ど、どうすればいいんだ。完全に煽ってた………」


 ソロジャ・ノーマは倒れており、魘されている。


 せっかくライバル企業を物理的にも破壊したのに心が弱いおっさんである。どうやらアキがすべてを説明しなくてはならないようだ。


「しょーがない。では今回、冒険者ギルドの人身売買事件にて活躍した我が正社員、看板社員ニアしゃんに語ってもらいましょー!」


 バッと手を挙げて、アキが紹介するとローブを羽織り、フードをかぶった人がよちよちと恥ずかしそうに歩いてくると、バッとローブを脱ぎ捨てる。


「カステラン所属、ニア! 皆にカステランの良いところを見せちゃうよぉぉ」


 羞恥で顔を真っ赤にした、フリフリドレスを着た銀髪碧眼の美少女が頬に人差し指をつけて、ニコリとポースをとるのであった。

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― 新着の感想 ―
高いところから楽器を奏でて登場するのは昭和の特撮ヒーローみたいですね。 その後、カッコよく飛び下りてポーズを決めたわけではなく、高い所にいる幼女が心配でならない群衆に見守られながら、ウンショ ヨイショ…
今回の件は社員であるニアが誘拐されたから発覚した事だからな!そういう事になっている!!
話も理解できないマーモット←ひどい風評被害だまきゅ。やけ酒まきゅ。 今回も屋根の上の竪琴幼女とか、コスプレやけっぱちのニアとか見所満載。
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