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悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
一章 悪役令息になりました

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32話 帝王学における恐怖の使い方

 捕縛するはずであったのだ。アキはナツにそう説明しておいた。司馬懿孔明のように名軍師っぽく説明したのだ。ちょっと違うかもしれないけど、三国志の軍師の名前はよく覚えてないし、超名軍師な感じするので別にいいだろう。


 ここに来る前のナツとの会話をアキは思い出す。


『おとーさま、街門にて歓迎してくれる人は信用して良いでしょう。ですが、裏切り者たちは必ず他の場所で待ち受けています。十分に対応する時間を与えたため、裏切り者たちは全員集まるはずです。ここで、集まらないと裏切り者たちからも疑われますからね。そして、おとーさまを傀儡にしようとするはずです。そこを煽って剣を抜かせて反逆罪にて逮捕しちゃいましょう。これを空城の計といいましゅ!』


 計略の名前が違うと思われるが、アキが覚えている計略名は空城の計と火計だけだった。幸いツッコミをいれる地球人はおらず、ナツは少し迷う顔となる。


『うーん、そんなにうまくいくかな? 煽るのは簡単だけど、ルプスたちは小物だけあって自己保身能力が高いんだ。剣を抜きそうになる騎士がいたら止めに入るはずだよ?』


『大丈夫です、おとーさま。必ず騎士たちは剣を抜きます。3人ほど剣を抜き、危機を煽れば他の者たちも追随し、剣を抜くに違いありません。そして、剣を抜いても敵は主君へ剣を向けるのに躊躇いがあるはず。その隙を狙い魔法にて敵を一網打尽にして、その後にタイチたちが拿捕に向かいます。もしも危険となっても、戦場が海面になったらどうしようもないはずです』


 三略六韜を諳んじて、孫子の兵法を覚えし、軍師アキなのだ。実際は史記や三国志、水滸伝や黒幕幼女を見て覚えていた策の一つであるが、三略六韜とかいったほうがかっこいいよね。最終的には異世界流水攻めの計も使えるからと、少し強引なる計略だ。


『捕らえたあとは、控えおろー控えおろーと、タイチが紋章を出して終わりにしましゅ!』


 最後の一言は余計である幼女ではあった。


 ━━━しかし、ナツは全員を殺すようにと命じた。その意図はすぐに分かった。禍根を残さないためだ。しばらくは内政が大変になるが、それ以上にルプスたちを殺すほうが益になると判断したのだ。そこまで苛烈なる思考の持ち主だとは思っていなかったので、アキは驚いていた。殺戮の光景を見せないために、わざとアキたちを別室に移動させたのだろう。


『悪逆非道が発動しました』

 

 なら、ナツの意思に従おう。ここはアスクレピオス侯爵の城なのだ。アキは獰猛なる子猫のような笑みを浮かべると、思念を飛ばすことにした。


『全員に命令だ。おとーさまのいうとおり、全員を殺せ。一人も生き残りを残してはならない』


 ギロチンの刃は落とされたのである。


          ◇


 魔女のウイとウーツが先端に宝石のはめられた魔法の杖を翳して魔力を練る。宝石が蒼く蒼く輝くと、彼女らは剣を抜いているのに、かかってもこずに様子を見ている敵へと容赦なく魔法を放った。


『ツインシンクロブリザード』


 その瞬間、敵集団の中心を氷雪の暴風が爆発したかのように生み出されて敵を覆う。二人の魔法がシンクロし、威力が数倍に跳ね上げられた氷雪の魔法が敵の集団を呑み込んだのだ。


「あ、が」

「なにが」

「う、うごけ」


 氷雪の爆風は僅かに数秒であった。すぐに氷雪は消えてなくなったが、後に残ったのは凍りついた床と天井、そして真っ白な氷像となった大勢の騎士たちだった。たった一撃の魔法で3割近くの騎士たちが絶命し、他の者たちも手足が凍りつき身体が強張り、冷気によりまともに動けなくなっていた。その際に最初に剣を抜いた3人の騎士たちが幻のように消え去ったが誰も気づかなかった。


「ひ、ひぃ、魔道士がおるのか、に、逃げなくては」


 端の方にいて、ブリザードの範囲から逃れた者が恐怖の表情で謁見の間から逃げ出そうと駆け出す。


「おっと、そうはいかないんで」


「悪いな、命令なんだ」


 だが、身体強化にて石床にヒビを入れながら駆けるタイチたちが回り込むと、剣を構えて魔力を練る。白金の剣が高熱で真っ赤に熱せられ、逃げ出す敵へと振り下ろされる。


爆発剣エクスプロージョンブレード


 指向性を持った爆発が逃げ出す敵を吹き飛ばし、集団へと強引に戻す。再び集団となった者たちへと、今度はレイたちが舌舐めずりをし、弓を向けて矢を番える。


「いただき!」


『マジックアローレイン』


 レイたちの放った矢は上空に飛ぶと、矢が分裂して雨のように集団に襲いかかり、ハリネズミのように矢を突き立てていく。


「こ、こいつら、まさか魔法剣士か!?」


 なんとか体勢を立て直そうと、一際豪華な鎧を着た男が目の前の事実に信じられないとばかりに絶叫する。

 

 アキはゲームプレイヤーなので疑問に思わなかったが、この世界での魔法剣士は極めて稀な存在であった。王国でも片手の指で数える程度だ。剣と魔法という両極端の知識を覚えて、腕を磨かなくてはならないのだ。特に魔法はレベル1の魔法を覚えるだけでも数年かかる。まともな攻撃魔法となれば数十年の月日が必要だ。そのため魔法剣士は中途半端な存在となり大成はできない。


 しかし、魔法剣士として、剣も魔法も実戦レベルに使える者がいたら、その力は恐るべきものだった。剣と魔法、その融合技は同じ程度の剣士や魔法使いなど寄せ付けない。その魔法剣士が四人もいるなど悪夢でしかなかった。


 だがその悪夢は追加される。


「ほい、支援ね〜」


『範囲拡大:倍化』


 シィたちシスターが気楽そうに支援魔法を使うのと同時に、四人の戦士が集団の中心に降り立つ。その体は武具も合わせて倍に膨れ上がり、まるでオーガのように姿を変えて、着地した石床を砕き、その凶暴なる姿を見せつける。『倍化』の魔法、その個体の存在を二倍の大きさにして、筋力と体力を跳ね上げる効果を持つ。


「いっくぜぇぇぇ!」


 四人がハルバードを構えると、風が逆巻き、硬質化して長大なるハルバードの刃となる。


『フォースシンクロエアロブレードロール』


 彼らが同時にハルバードを横薙ぎに振る。そして、地獄絵図が作られた。ただでさえ、倍化による攻撃範囲の増大に追加しての風の刃による間合いの向上。生き残りはその攻撃範囲にほとんど入っており、竜巻のごとき攻撃はあっさりと騎士たちの身体を断ち切っていく。


「く、くそっ、やられてたまるか!」


『シールド』


 騎士の何人かが盾の武技を使う。本来は投石機の投石すら受け止められる防御系武技だ。たとえ、魔武技であろうとも防げるはずだと自信を持っていた。


 が、無駄であった。たしかに一撃なら受け止められただろう。


 ガン


 強い衝撃で腕が痺れて、金属製の盾が歪む。


 ガン


 まったく同じ箇所に衝撃が走り、盾はちぎれて吹き飛んでいった。腕が跳ね上げられて完全なる無防備となってしまう。


「は、はぁ? なぜ同じ箇所に」


 ズン


 最後まで言うことができずに、自身の胴体が断ち切られて、その騎士は恐怖の表情で絶命した。


 意思を共有できるヒャッハーたちは敵の動きを完全に把握しており、防がれた箇所に次の戦士が攻撃を。その攻撃を防がれたら、また次の戦士が攻撃をと、四人の攻撃は終わることなく敵に襲いかかったのである。


 武技の4連撃。通常ならあり得ない攻撃を前に、平凡なる騎士は対抗することもできずに切り刻まれるのであった。


 そうして、生き残っていた者たちもタイチたちが追撃をし、容赦なく斬り殺して、90人いた集団は血の海に沈み、たった一人が残っていた。


「あ、あぁ……。な、なんで……このようなことに」


 その一人はルプス子爵であった。大枚はたいて買った『身代わりの指輪』が砕け散り、パラパラと床に落ちていくことも気にする余裕はなく、地獄のような光景を前に身体を震わして、恐怖を浮かべてよろけて後退る。が、どんと後ろにいるなにかにぶつかり恐る恐る振り返り━━━そこにはアスクレピオス侯爵が立っていた。


「ひ、ひいっ! 申し訳ありませぬ。謝罪いたします、アスクレピオス侯爵様。永遠なる忠義を受け取ってくだされ!」


 コメツキバッタのように地面に張り付くと土下座をしてルプスは命乞いをした。プライドも意地もなにもかもなかった。


「あぁ、ルプス子爵。残念だが許すことはできない。なにより積年の復讐のためよりも、君を放置すると禍根を残すことになるからね」


「う、うぬぬ、もはやこれまでっ!」


 ルプスは最後の悪あがきと、立ち上がって剣を抜く。が、その横をナツが胴を薙いで通り過ぎるのであった。


「ガハッ、こ、こんなことが、どうして、どうして、なの、だ………」


 最後の言葉を口にして、腹から血を流しルプスも他の者たちと同様に血の海に沈む。


「ルプス子爵、君は昔は痩せており肉体は鍛えられていて、まさしく武人であった。その君がこうまで堕落するとはね、残念だよ」


 微かに悲しげな笑みをうっすらと口元に浮かべるが、すぐにナツは気を取り直して剣を掲げて宣言する。


「反逆者は全てこのナツ・アスクレピオス侯爵が討ち取った! 我に従うものは伏して前に出よ。反論のある者は城から出ることを許そう!」


 ナツ・アスクレピオス侯爵はこうして、アスクレピオス領地を手に入れた。日和見の者たちはこぞって忠誠を誓い、敵を一掃することに成功したのだ。


 この『ルプスの乱』を終えて、ナツ・アスクレピオスは狡猾にして残忍なる復讐の化身『血の侯爵』と恐れられるようになるのであった。


『クエスト:門を開けて、狼を誘い、虎にて呑むをクリアしました。経験値一万取得』


            ◇


 その後、ルプス子爵を始めとする反逆罪に問われた家門は全て滅門とされ一族郎党は領地より追放となり、その領地は全てアスクレピオス侯爵家のものとなった。彼らが貯め込んでいた財の半分は王に献上し、領地の税率は4割に下げた。


 そうして、治安の悪化していた地域はヒャッハー騎士団が向かい、魔物や山賊団を駆逐し、治安の維持に努めた。さらには貯め込んでいたお金を使い、他領から穀物を買い込むと、飢えに苦しむ村々に配給をすると同時に開墾に補助金を出す。冒険者ギルドには薬草取りなどの簡単な仕事の報酬に補助金を出し、多くの新人冒険者たちを集め、その新人たちへ人口の減っていた村々に移住するように勧める。


 などなど、多くの政策を行い、領民から絶対の支持を受けることになるのであった。


 一撃にて強烈な粛清をして多大なる恐怖を与え、以降は善政に努めて、政を成す。帝王学のとおりに行ったナツ・アスクレピオス侯爵は見事に領地の復興を成したのである。


 ━━━数カ月後。


「多大なる功績を上げし、百花騎士団たちに領地を与え、騎士爵を授ける!」


 ヒャッハーたちは、なぜか騎士爵を貰っていた。

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― 新着の感想 ―
百花騎士団にすると一気に格を感じる不思議 その連撃は花の如く敵に咲き誇り、百の逆賊を討つ。
追放刑か 日本でもあったし、生き残った一族自体は存在するけど 仲の良い親戚とかかくまう親戚が無いと終わりなんだよね 日本で言うところの島流しよりはマシとは言え、生き残れますかねぇ
死ぬほど恨み買ってるだろうから領民が追放された奴等に襲撃かけてそう
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