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悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
一章 悪役令息になりました

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33話 これにてプロローグは終わる

「多大なる功績を上げし百花騎士団諸君に、領地及び騎士爵を授けるものとする!」


 アスクレピオス侯爵城内の謁見の間にて、ヒャッハーたちは片膝をつき、復帰して文官となったアルクトの言葉を聞いていた。内心は汗だくでダラダラである。なぜならば彼らは不死の存在にて、ただのカードだからである。ゆえに、領地などもらっても困る! しかも百花騎士団ってなんだ? 初めて聞いた!


「あ、あの、俺たちは」


「下賜する領地は没収した元ルプス家と他男爵家たち、騎士爵の者たちの領地だ。それを12分割して、大恩ある君たちに渡したいんだ。受け取ってもらえるよね?」


 タイチが代表して焦った声で断りを口にしようとすると、ここ数ヶ月ですっかりと侯爵らしい貫禄を持ったナツが言葉をかぶせてニコリと微笑む。受け取ってもらえるよねと言いながらも、これは命令である。


『お嬢〜! どうすればいいんですか?』


『ん、いいんじゃない? これだけの功績をあげて、なにもなしじゃ体面が悪いんでしょ』


 思念にて助けを求める眷属に、あっけらかんと適当に答える幼女だ。


『だって俺らカードですぜ? 貰っていいの!? 厄介事になる予感しかしないですよ!』


『たしかにカードだけど、血も流すし、ご飯も食べる。感情もあるし人間と変わりないじゃん、少なくとも脳がチップの人間とかよりも人間らしいよ。二十年位は歳をとらなくてもバレないだろうし、子供が作れると思うから好きに生きれば良いよ。死んだら『身代わりの魔導具』で生き残ったとか誤魔化してあげる』


『それ推測も入ってますよね? 恐ろしい悪魔みたいな幼女だ………。まぁ、でもお嬢が許可を出すなら別に良いか。後で厄介事になっても知りやせんからね?』


 ヒャッハーたちは明らかに人間に見える。カードが化けたようには思えないのだ。そこら辺のからくりが気になるが、アキは特に気にしない。ゲームはダウンロードするプログラムが分からなくても楽しめるのだ。


「ははっ、謹んでお受けいたします」


「受け取ってもらえてよかったよ。ついで、タイチ卿たちは家名を考えておくように。それと正式に百花騎士団を設立し、騎士団長はタイチ卿、副団長はタイチ卿が決めて良い。我が家の専属魔法使いにウイさんとウーツさんとする」


「かしこまりました。承ります」


 正式なる授与が行われてタイチたちは頭を下げる。ナツはその様子にホッと安堵していた。なにせ彼らは優秀すぎる。その勇名は既に侯爵領を越えて、王都にまで届いていたからだ。王立書記官の報告がいったのだろう。この間、タイチたちの身分照会があった。物理、魔法両方で戦える凄腕の魔法剣士は喉から手が出る程に欲しい。それは王家も同じだ。


 もしも王家から直接仕官をさせると命令が来れば、ただの傭兵では断ることは難しい。なので、急いで騎士にして正式に自分の配下にする必要があったのだった。ちなみにケイの家門であるメイジャ家は元々法衣男爵家だが、領地の加増ではなく、ジェイたちの再雇用と給料の大幅アップをアルクトが希望したので、希望通りにしている。


「うぉぉぉん! 良かったですぞ、タイチ殿! 皆様方! アスクレピオス侯爵家に仕えることを夢見て隠れ里にて修行をしていたそなたらがようやく報われましたな!」


「本当に………長年伏してチャンスを探していた方々ですからな」


「忠義溢れる騎士たちがアスクレピオス侯爵家に戻って良かった良かった」


 壁際に立つケーン・べナティ男爵が男泣きで喜び、周りの人々も拍手で賞賛する。なぜかヒャッハーたちは隠れ里にて修行をしていた元アスクレピオス侯爵家の忠臣の子供たちと話も作られていた。ただの傭兵団としか言ってないのに、尾鰭に背鰭や羽根も付いていたりした。


 タイチたちはため息をつき、少し困るが面倒事はお嬢に任せようと決めて、壁際に移動する。そうして、次のイベントが始まる。


 謁見の間の扉が開いて、ドレスを着て精一杯おめかしをしたよと元気いっぱいの幼女がポテポテと入ってきたのだ。既に噂として聞いていた者たちは顔を見合わせてヒソヒソと話し、知らなかったものはキョトンとして幼女がなぜここにと疑問顔だ。


 その中を物怖じせずに幼女は進む。


「ついで、アスクレピオス侯爵家第二子のアムネジア・アスクレピオス姫の魔力パターンの登録と、正式に第二子との宣言をアスクレピオス侯爵様が行う!」


 アルクトが宣言し、王都から呼ばれた家門登録官が水晶を取り出す。一人一つ、正式に貴族になるもののための魔導具だ。


 ざわめく人々をナツが手で制すると、立ち上がり口を開く。


「アムネジアは我が第二子。これまでは裏切り者たちに攫われないようにと隠していたことを謝ろう。だが情勢が落ち着いた今は正式にお披露目をすることとした」


 なるほど、そういうわけかと皆は納得した。領地を取り戻せなかった弱いころは、アムネジアの存在がバレればルプス子爵たちの子供と政略結婚を無理やりやらされたはず。そして嫡男のアキを含めてナツたちも暗殺されて、アムネジアが侯爵家を継ぎ、お家は乗っ取られていた。それを防ぐためだったのだ。


 もちろん嘘である。あれからナツたちは考えたのだが、やはりアキが幼女になったのはおかしいという結論に至った。考えなくてもおかしいと思わなくてはならなかったがようやくおかしいと考えたのだ。


 それに幼女のあ~ちゃんは隠すことを知らないので、自己紹介であ~ちゃんですと挨拶しちゃうだろう。なので第二子としたのだ。アムネジアと決めればあ~ちゃんと名乗ってもおかしくないので、そうアキが決めた。記憶をなくしたアムネジアである。ネーミングセンス良いよねと、アキは密かにほくそ笑んでいたりもした。


 これは裏技的な方法であったが、アキと同じ魔力パターンであることはバレない。なぜならば本人確認として魔導具を使うことはあるが、二つの魔導具を同時に使って、アキが同じ魔力パターンであると比べることは絶対にしないからだ。


 別々に登録しておけば、後は王国の倉庫にしまわれるだけだ。ケイみたいな魔眼持ちならバレるが、幸いそのような特殊な魔眼持ちはケイ以外は知らないし、いてもコブターンとアムネジアの両方の魔力パターンを知らなければわからないので、魔眼持ちでもバレる心配はない。


 そうして数年後にアキが死んだことにして、アムネジアが嫡子となれば全て解決するのだった。


 これの良いところは、メインストーリーで死ぬ予定の悪役令息が死んでも、本人は死んでいないというところにある。まさかの生存ルートを構築しちゃうアキだった。名探偵もビックリであろう。


「魔力パターンは正式に登録されました。これにてアスクレピオス侯爵家の一員とアムネジア姫は王家にて認められたことを申し上げます」


 登録官が恭しく二つの魔導具をしまう。一つは侯爵家に、一つは王家の倉庫に保管されるのだ。


「よろしい、アムネジア、長年苦労をかけたね。今日からは私たちは一緒だ」


『あきちゃん! あ~ちゃんはごあいさつできましゅ! ごあいさつできるよいこなの。かわって、かわって!』


「あいっ! あ~ちゃん・あしゅあしゃでしゅ! おとーさま、おかーさまにあまえましゅ!」


 こんな面白そうな舞台にあ~ちゃんが我慢できるわけもなくアキに代わって代わってお強請りアタックを放ち、あ~ちゃんに身体は代わり、テテテと走り出すと、両手を広げて受け止めようとするナツに向かって━━━通り過ぎてフユのお膝にダイブするのであった。


 悲しきかな、ナツ・アスクレピオス。虚しく広げた両手が寂しい。


「うぉぉぉん、わかりますぞ、侯爵様! 儂の娘も妻にしか懐きませぬ! パパ臭いとか言われる始末です!」


「あ、そう、ははは」


 から笑いするナツの姿が哀愁を感じせたとかなんとか。

 

           ◇

 

 アムネジア姫のお披露と、百花騎士団の爵位授与のお祝いで、久しぶりにアスクレピオス侯爵はパーティーを行っていた。


 魔法の光を放つシャンデリアの下、豪華なる料理がテーブルには並び、皆は着飾り、ダンスを踊り、料理に舌鼓を打つ。その顔は晴れ晴れとしており、基本は善人っぽい。ルプス子爵を始めとする汚職をしていた家門は追放されて、8割だった税金も4割まで下げられたからだろう。そして、8割の税金に苦言を呈し、隅に追いやられていた家門たちは息を吹き返せたのだ。これが王都ならともかく、離れた土地の男爵たちなら、そこまで謀略を気にする必要もないようである。


「家名を一花と名付けたとか。素晴らしい家名です」


「いやはやご勇名はお聞きしております。我が娘もタイチ卿の大ファンでしで、是非にお会いしたいと」


「あははは、そうですか。俺はたいしたことをしていないんですが」


「千人はいるチュートリ山賊団をたった12名で討伐なされたお話を聞きたいです、タイチ様」


 タイチたち、大モテである。結局家名は一花、二花と適当につけたのだが、蜜に群がる蝶、いや生肉に群がるハイエナのように他の貴族たちに群がられていた。


 騎士爵で領地を持つ者は珍しい。さらに言うと男爵領並みの領地だ。しかも侯爵家の恩人にして最側近にして二枚目。是非に娘をと目の色を変えて紹介する者が多いのも頷ける。全員似たりよったりで、女性陣はとうにこの場からいない。魔女は変わり者が多いし、シスターは聖職者だから問題はないのだろう。何処かで酒を飲んで楽しんでいるとは思うけど。


「すごいですね、お嬢様。たった数ヶ月でここまで変わるとは思ってもいませんでしたよ」


 ローストビーフを口にめいいっぱい放り込みながらモテナイ少女代表ケイ。恩顧の家臣の娘なのに、料理ばかり食べているからである。満足そうなのでアキはなにも言わない。幼女も懸命に料理を食べてるからだ。でもスイーツが砂糖ジャリジャリなのは少し嫌かな。


 フユの方は、見目麗しい女性陣と歓談していた。


「ロデー王女のことは我らにお任せいただければ良かったのですが。既に王国は落ち着きを取り戻し迎え入れる準備もできております」


「あらあら、どこの方かしら? アムネジアに聞かないといけないわね? でも、その子も母親の側を離れたくないと思うわ。まだまだ甘えたがりやさんの可愛い子ですしね」


 バチバチと火花が散っているような気もするが気の所為だ。ちなみに見目麗しい女性陣は人魚たちだ。水霊石を運んできて、そのまま居座った。ロデー王女という人を護衛しているらしいよ? 瞬間移動ができるんだから、水霊石だけで良いのにね。


 ナツのそばにはアルクトを始めとして、新たに雇った者たちや、ケーンがいて楽しそうにお喋りをしている。いちいちケーンが男泣きをしているので大変そうだ。


 全体を見ると平和そうなので、アキは優しく微笑んで砂糖ジャリジャリのクッキーをケイの口に放り込む。


 さて、これからもアスクレピオス侯爵家は色々と大変だろう。王都からのちょっかい、貴族派の横槍や、隣接する伯爵家からの嫌がらせ、内部のいざこざ。予想するだけでうんざりなイベントがたくさんだ。


 だが、その全てはおとーさまの仕事だ。そこにアキが入る必要はない。


 ヒャッハーたちはあたちが復活するまで貸してあげるから、頑張って欲しい。仲間カードが1枚埋まるのは勿体ないが、すぐにスロット解放のカードは引ける予感がするし、それにアスクレピオス侯爵家には強い騎士たちが必要だ。親孝行をしなきゃね。


「ねぇ、ケイ」


「もぎゅもぎゅ?」

 

 クッキーを放り込みすぎて、餌を蓄えたリスみたいなケイにアキは話しかける。


「あたちはアカデミー入学まで寝ることにするよ。水霊の祝福水はあ~ちゃんも作れるから大丈夫」


「もごっ!?」


 口の中がいっぱいで答えれないケイへといたずらそうに幼女は微笑む。


「だからしばらくは寝るからよろしく。起きた時にめちゃくちゃになっていないことを信じてる」


 これにて悪役令息の地盤は完成だ。これ以上、手伝う必要はないし、あ~ちゃんに人生を楽しんでほしい。


『悪逆非道が発動しました』


 穏やかなる日々は無用だとどこかの誰かが囁く。再び必要となるまで眠れと訴えてくる。わかるわかる。プレイヤーは退屈なる展開を望まない。常に波乱万丈の世界を望むのだ。


 そうして慌てるケイを横目にアキは眠りにつく。方法は自然と分かっていた。


 深く深く、深淵の奥底まで。


 次に起きるのは半年以上先になるだろう。


 それまでは休むとしよう。


『おやすみ』


 そっと呟くと悪役令息ルックスYは眠りにつくのであった。

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― 新着の感想 ―
 ここでスキップですか。ゲームだとしても次のイベントまでに経験値ためたりガチャで装備揃えたり色々あるとか思うけど、あ~ちゃんと家族の時間も必要だよなぁ。  「めちゃくちゃになってない」フラグですねぇ
確かに、放っておいたら大火になる火種を気にせず眠るんだから悪虐非道やな。別にアキちゃんのせいじゃないというのがポイント高いデスネ
だって俺らカードですぜ? なかなかのパワーフレーズですな。 今度うざい上司に使って怒られたいと思います。 第一部(?)きれいなカタルシスとお茶目なギャグで終わって堪能させていただきました。
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