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チェイン・ストーリー 〜白光の冒険者〜  作者: 桜町ナユタ
第一章 勇者候補の婚約者
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金貨5枚の依頼③

「お邪魔しましたー!」


 クリスは、セフィーナとランドルフが飲み終えたカップを回収すると、テーブルに持って来たカップをそれぞれの前に置き、再び部屋から出ていく。

 その時にレオンに向け、他の人に気付かれずウィンクする。

 レオンはその姿を見て、やっぱりクリスはあざといと改めて思った。

 

「さて、本題に入るぞ」


 ちょうど紅茶も届いたからなと付け足すと、ランドルフはカップを手に持ち一口飲む。

 そして、ランドルフは昨日、レオンに話した内容を一通り説明をする。


「…そして、依頼達成の条件は、実戦的な剣術の稽古を3週間つけること。ここまでが、ギルドで受けた依頼内容だ」


 説明を終えて紅茶を飲むランドルフから視線を外し、同じように紅茶を口にしながら、レオンは改めて聞いた依頼内容について思案を巡らす。

 剣術の稽古を3週間…それだけで金貨5枚の報酬がもらえる依頼。裏を読んでしまうくらい、冒険者にとって美味しい依頼だ。

 なぜなら、冒険者にとって剣などの武器をあつかうことは、職業的に必要になってくる。

 戦闘をしない冒険者もいるかもしれないが、基本的には冒険者であれば武器の実戦的な使用方法は身につけているものだ。

 

 そして、それはアルディア学園で、学ぶこともできるはずである。


 学ぶ意思のある者に学びの場所を、との理念の通りありとあらゆることを学べる場所だ。武術の一つである剣術を教える授業もあるし、教官もいるはずだ。

 金貨5枚を払ってまで、ギルドに依頼するようなことではない。


 一つ思いつくのが、彼女の剣術の程度が学園の水準を超えていて、学園の教官だと物足りないってことか。


 レオンは、カップをとり紅茶を飲む。さわやかな香りが、口に広がった。

 その時、頭にクラウの声が響く。

 

『ふむ、それだけだと、どこか理由として弱く感じるの』

 

『…いきなり話しかけるな。むせそうになったじゃねぇーか』

 

 寸前で吹き出すことを耐えたレオンは、何事もなくカップをテーブルに置く。


『ぬぅ、お主の考えが、わしに届いてきたから返事をしただけじゃ』


 どうやら考えこんで、無意識にクラウとの念話を開いてしまったようである。


『そうか、そりゃ悪かった』


 謝るレオンだが、クラウは機嫌を悪くさせてしまったらしく、一度鼻を鳴らすと黙ってしまった。

 後の面倒ごとが増えてしまったことに、レオンは気を落とす。

そんなレオンのことなど知らず、ランドルフは話を続ける。


「嬢ちゃん、今の内容で間違ってることはないか?」


「いえ、特には」


「そうか、それじゃ他に質問はあるか?」


 ランドルフの問いかけに、セフィーナは考えるそぶりを見せる。沈黙が、わずかに流れた。


「それではひとつ、聞きたいことがあります」 


 セフィーナは口を開くと、一度レオンと目が合う。しかし、それは一瞬で次に瞬きした時には、夜空を思わせる瞳はランドルフを向いていた。


「私の依頼に彼を推薦した理由について、教えていただけますか?」


「理由?」


「ええ」


 セフィーナの質問を聞いたランドルフは、顎に手を当てると短く息を漏らす。


「そうかい。それじゃレオン、後は任せるぜ」


「…は?」


 不意に名前を呼ばれたレオンの口から間抜けた声が出た。


「は?じゃねぇよ。今回、おめえさんをこの嬢ちゃんの依頼に推薦した理由。端的に言えば、ギルドが推薦したおめえの力量を嬢ちゃんに見せてやれ」


 あぁ、そういうことか。

 意識が逸れていたレオンは、ランドルフの説明を聞き納得する。

 ギルドが推薦した冒険者とはいえ、自分の依頼を受けるレオンが、どれほどの剣の扱いを心得ているのか実際に目にしてみたいのだろう。


 レオンとセフィーナの視線が、再び交わる。今度は外れることなく、真っ直ぐと黒き瞳が射抜いていた。


「貴方の実力、私に見せていただけますか?」


 セフィーナの言葉にレオンは、口の端を吊り上げる。


「ええ、喜んでご披露いたしましょう」


 面倒な展開であるが、金貨5枚がかかっているのだ。多少の手間については、許容範囲である。

 セフィーナはソファを立ち上がり、優雅に一礼をする。


「それでは、ランドルフ殿。失礼いたします」


 ギルド長室の扉に足を進めるセフィーナ。

 レオンもそのあとに続くように、ソファを立ち上がった。


「そんじゃ、おっさん行ってくるわ」


「おう、相手は大貴族だから、粗相すんじゃねぇぞ」

 

 …大貴族を嬢ちゃん呼びしてるあんたに言われたかないわ。

 

 そんな言葉を飲み込みレオンは、ランドルフの忠告に左手を挙げて応えた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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