お風呂はやっぱり落ち着きます
※前話の胡桃視点のお話です
「ふぅ〜〜〜っ、気持ちいぃ〜〜〜〜〜」
私、桃森胡桃はオフィスの浴室で湯船に浸かっている。
緊張する時はお風呂に浸かり、余計なことを考えずリラックスするのが私のリフレッシュ法だ。
そう、私は今とても緊張している。
今日はこの後、美雪ちゃんの提案でパジャマパーティすることになっているわけだが、
「パジャマ姿で人前に出るの恥ずかしいよぉぉ〜」
浴室内に独り言が反響する。
人見知りが激しい私にとって、パジャマパーティなんて陽キャな催しは縁遠いものなのだ。
だから今も、誰も来ないうちに一人でリラックスしつつ、集合時間には決して遅れないようにオフィスのお風呂を使っている。
「……それにしても、さすがに早く来すぎたかな」
現在時刻は19時20分。
集合時間より40分も早い時間に来たのは私だけのようだ。
それなら、ゆっくり羽を伸ばそうかな。
◆ ◆ ◆
電気さえ付けない暗闇の中、湯船に浸かってリラックスしていると、何やら物音がした気がする。
誰か来たなら、そろそろ上がらなきゃ。
立ちあがろうとした次の瞬間、浴室のドアが開いた。
「「…………え?」」
私とカズくんの声が重なる。
そっか、カズくんもお風呂でリラックスしようと考えてたのかも。
仲間がいて嬉しい気持ちになる直前、この状況を理解した。
……そう、私もカズくんも服を着ていないという事実に気付いてしまった。
「きゃぁっっ!?」
「うわぁぁっ!?」
カズくんがすぐに振り返り、後ろ手で浴室のドアを閉めてくれる。
「ご、ごめんっ! 入ってると思わなかった!」
「いや、私こそごめん! 家だと電気消してゆっくり浸かるのが好きだから、つい……」
そんな説明より先にやることがありそうだけど、テンパっちゃって頭がうまく回ってない。
すぐ出ようとしたが、今出て行くと脱衣所のカズくんと鉢合わせしてしまうので、もう少し湯船で待つことにする。
少し経つと、こちらに近づく足音が聞こえてきた。
そして次の瞬間、電気がついてまたもドアが開いた。
ドアを開けたのは美雪ちゃんだった。
バッチリ目が合ったが、うまく応対できるほどの余裕はない。
とりあえず何か言わなくちゃ!
「……や、やあ」
「ひゃっ!?」
……不審な会話になってしまった。
その直後、美雪ちゃんが浴室から出て行ったが、カズくんに怒っている声がここまで聞こえてきた。
……後で2人に謝ろう。
そう決意して、私は浴室を後にしたのだった。
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