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アナログゲームに強い人は独特のカッコ良さがあるもんだ

「もう、カズマ先輩! 今日という今日は許しませんよ!」


入浴中の胡桃を覗いてしまったことに対して、本人から怒られるならまだしも、なぜか柚季から怒られている。


胡桃本人はというと、特に気にした様子もなくパジャマ姿の水希先輩やアリスと談笑しているようだ。


「カズマ先輩! 聞いてるんですか?」


「聞いてるよ。っつーか、なんで俺は柚季から怒られてんだ?」


「私とはお風呂に入ってくれないのに、胡桃先輩とは一緒に入るなんてズルいじゃないですか!!」


「だから誤解だ! ってか、怒るのはそこかよ!」




2人でしばらくギャアギャア騒いだ後にようやく解放され、俺たちも皆に合流した。


いつもの業務スペースではなく休憩部屋に集まり、各々が床やソファに腰掛けている。


「それでは! パジャマパーティの開催を祝して」


「「「「「乾杯ー!」」」」」


乾杯の音頭を取った柚季をはじめ、一同が思い思いに好きな缶を手にしてゴクゴクと飲み始める。


大量の酒があるにもかかわらず全員がソフトドリンクを飲んでいるあたり、この後でゲームする気満々だな。


「みなさん、今日はちょっと趣向を変えてこういうのはどうですか?」


柚季がどこからかトランプを取り出し、皆に見えるよう掲げて言った。


「トランプやるの久々♪ 何やるの? ババ抜き? 大富豪?」


水希先輩が童心に返ったようにはしゃいでいる。日頃ディレクターという責任重大な立場にあるので、たまにはこうして息抜きしたいのかもしれない。


「ババ抜きで! それと、優勝賞品つけましょう!」


「「優勝賞品?」」


柚季の発言に対して聞き返すと、意図せず胡桃と声が重なった。


「優勝した人は、カズマ先輩に何でも一つ言うことを聞いてもらえるってどうですか?」


「はぁぁぁっっ!?」


「面白そうね♪」


「私も賛成。頑張らなきゃ♪」


「早くやろう。カズマに何してもらおうかな♪」


多数決の結果、1対4で可決されました。


多数決ってロクなもんじゃねえな、マジで。


「っつーか、俺が勝ったらどうすんだ?」


「あっ……考えてませんでした」


テヘッと舌を出す柚季。


俺が負ける前提かよ。


「じゃあ、カズマ先輩が優勝したら、この中の誰か1人になんでも言うこと聞いてもらえるってどうですか?」


「はあっ!? いや、俺は構わないんだが、みんなは良いのか?」


「私はそれで良いわよ。カズマくんに何させられるのか楽しみ♪」


「私も、カズくんになら何されても良いよ」


「私がカズマに負けるはずないけどな」


まさかの全員OK。そしてアリスよ、テメエ覚えとけよ。




「私が配るよ」と、胡桃が柚季からトランプを受け取り、ジョーカーを1枚抜いて入念にシャッフルしていく。


ヒンズーシャッフル、リフルシャッフル、ファローシャッフル、さらにヒンズーシャッフル……。


慣れた手つきでカードをシャッフルする胡桃。絶対カードゲームやってただろ。


全員にカードを配り終え、各々がペアになるカードを捨て終えた。


「ということで、ババ抜きスタートです!」





柚季が俺の手札を1枚引いてゲームスタート。


柚季、俺、アリス、水希先輩、胡桃、の順で進めていく。


誰が来ても関係ない、俺が勝つーー!!



……アリスから1枚目のカードを引くまではそう思っていた。


「はい、残念〜♪」


俺がアリスの手札から1枚引いたところ、開口一番にそう言った。


引いたカードを見ると、ムカつく表情のピエロがこちらを見ている。


(コイツ……!!)


さすがに口には出せないので、そのままゲーム続行。


数ターン後、無事にJOKERを手放すことに成功したが、さらに数ターン後、アリスの手札を経由して再び俺の手札に戻って来てしまった。


「はい、上がり♪」


「「「「早っっ!?」」」」


他の全員が5枚以上の手札を持つ中、圧倒的な速さでアリスが上がったため誰もが驚きを隠せなかった。


無駄なカードをほとんど引かず、逆に自分は的確にJOKERを引かせるという理想的なプレイングだ。


「アリスってトランプ強かったのか……!!」


「カズマが私に勝つなんて100年早いね♪」


渾身のドヤ顔を見せつけられたが、こうも実力差を見せつけられると腹立たしい気持ちすら起こらなかった。


◆ ◆ ◆


「アリスちゃんの優勝ということで、『カズマ先輩に何でも一つ言うことを聞いてもらえる権利』をプレゼントです!」


「俺が言うことを聞く権利」を俺以外の口から説明されることに釈然としない気持ちになりつつも、柚季の進行に耳を傾けていた。


そういうルールで勝負していたのだから、今更文句は無い。


ただ、アリスが何をお願い(・・・)してくるか見当がつかないため、そうした恐怖があるのは事実だ。


「カズマにしてもらうことはーーーー」


皆が固唾を呑んで見守る中、アリスは言葉を続けた。


「『ミユキがコスプレするなら何が一番見たいか』答えること!」


「はぁぁぁぁっっっ!?」


完っ全に予想外だ。確かにアリスと柚季は同期で仲も良いが、このお願い(・・・)に隠された意図を読み取ることができない。


単に俺を恥ずかしがらせるための質問か……?


「さあ、カズマ! 何が良い?」


「うーむ……」


少し悩んだ末、結局メイド服という王道の答えにした。


しかし、これを聞いたところでどうするのだろう?


その疑問は、アリスのとった行動によって解消された。


「ミユキ、来週からメイドのコスプレで仕事すればいいんじゃないか?」


「なにぃぃぃっっっっ!?」


驚きつつも、アリスの狙いが腑に落ちてしまった。


「アリスちゃん天才!! 水希先輩、そうしても良いですか?」


「もちろん。オフィスが華やかになるわね♪」


「やったあー! カズマ先輩、覚悟してくださいね♡」


……俺、理性保てるかな。

お読みいただきありがとうございます!


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