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後編

誤字報告ありがとうございます!

公爵領から出ることができて自由だ!と思っていたら。

今度は船に乗っていた謎のイケメンに見つけられて捕まり、何を思ったのか自分のことをそのイケメンに話したら何故か気に入られてしまい、尚且つ、結婚したくないから逃げてきたということを知っていながらプロポーズをされてしまった、私、リリアーナ・クロヴィツア。


「俺の名前はジェラルド。ジェラルド・アルメディル」

その名前を聞いて私は目を見開いた。

(ジェラルド・アルメディル……?それって……)

知識として叩き込まれた情報が頭の中に出てきた。

クロヴィツア公爵領があるフォルゲイツ国の隣国になるアルメディル国。別名、魔法の国。魔法が栄えている豊かな国。年中気候が穏やかで、人々も幸せそうに暮らしているという。

(けど、確か。船で行かないと行けない領地や街が数知れずだった気がする)

魔法が栄えている割には船で行かないと行けない領地や街もある。そのため、船旅を趣味にしている王族や貴族も多い。


その船旅を趣味をしている王族こそ。

(ジェラルドという名前だったような気が……)

アルメディル第二王子、ジェラルド様。金髪碧眼で肌の色が褐色。簡単に言ってしまえばハイスペック。

第一王子が健在なため、王位継承権はなくて自由な身だから、放浪王子とも呼ばれていてしょっちゅう船旅をして楽しんでいるという噂もあったっけ。


(噂通りの王子様。けど、船旅を楽しんでいる放浪王子ってだけでそれ以外に浮いたような噂はなかったはず)

まあ、ただ第二王子を蹴落としてやると思っている人間がいないだけかもしれないけど。


(……って!そんなことより!)

私ははたっと気付いてしまった。

(しまった!名前を聞いてしまった!しかもやっぱり王族の人だった!)

私のそんな様子をジェラルド様は楽しそうに眺めていた。

私はその表情を見て何とも言えない気持ちになった。

(けど。やっぱり。王族の人と結婚は……。いや、でも他の貴族の人との結婚も嫌だけど!)

嫌だけど。逃げることはできない状況だった。


「ところで」

ふと、ジェラルド様が声を掛けてきた。

「は、はい?」

私は驚きながらも返事をした。

「リリアーナの髪色って生まれた時からこうだった?」

「いえ。違います、けど」

そう答えて私はまたしてもハッとした。

(私のアホー!!)

正直すぎる自分にげんこつをくらわせてやりたい気分だった。痛いからしないけど。

「だよね?なんだか似合わないなと思ったんだ」

そう言いながらジェラルド様は私の頭に手をかざした。

私の髪の色がブラウンから本来の銀髪へと変化していたのだが、私はまだ気付いてなかった。


「うん。やっぱりこのほうがいい」

ジェラルド様はそう言って私の頭を撫でた。

私は自分の髪色が銀髪に戻ったことと短くしていたはずなのに髪の毛が伸びていたことに驚いた。

「は?え?ええッ!?」

「それにしても。ここまで本来の姿が可愛いとやっぱり誰にも渡したくないから結婚しよう?」

「いえ。お断りします」

「はい。以外は却下だと言ったから、却下」

楽しそうに笑いながら私を抱きしめてくるジェラルド様に私は戸惑った。

「それに私はまだ社交界デビューもしていません」

「それなら良かった。誰かに取られる前に見つけることができた俺は幸運だな」

何を言っても諦めるつもりはないらしく私はガックリと肩を落とした。

(私の平穏なお一人様ライフが。公爵領から出た途端になくなるなんて)

けど、まだきっとチャンスはある!と思っていた私だけど……。


「そうだ。もしまだ俺から逃げようなんて考えているなら今すぐ結婚式を挙げてその後、逃げられないように閉じ込めるから」

その言葉を聞いて私はヒュッと息を飲んだ。

(私、とんでもない人間に見つかって捕まっちゃった!?)

転生してきたことに絶望して家出をしてきたはずなのに。

結局待っていたのは結婚させられる運命だったなんて。

(さようなら。私のお一人様ライフ)


その後、私はクロヴィツア公爵家に戻ることになった。隣国の王子様であるジェラルド様と共に。

両親はもちろん公爵家全体が私が結婚相手を連れてきたことに驚いていた。

私自身はまだ結婚するとは言っていないから複雑な心境だった。

私が帰ってきたことを両親は泣いて喜んだ。お父様なんてジェラルド様を連れてきたことをものすごく喜んでくれた。

お母様はお母様で私の髪色が銀髪に戻ったことと、髪の毛が元の長さに戻っていたことに泣いて喜び、ジェラルド様に感謝していた。

(……?お母様、なんで私の髪の毛が短くなっていたことを知っていたんだろう?)

そんなことを疑問に思っていると思いがけない台詞を聞くことになった。


「ジェラルド様。私たちの娘をどうぞよろしくお願いします」

両親はそう言ってジェラルド様に頭を下げた。

(えッ!?ちょっと待って!)

「ええ。もちろんです。必ず幸せにします」

ジェラルド様は私を引き寄せて言った。

(い、いやいやいやっ!)

私は自分だけ蚊帳の外にいるような気分になった。

そんな私にジェラルド様はにっこりと笑った。

その表情を見て、私は自分の顔色が悪くなっているような錯覚に陥った。

(ジェラルド様、本気だ)

本気で私と結婚しようとしている。そのための外堀埋めに入っていた。

(ほ、本当に考え直して!私と結婚したっていいことないからッ!!)

両親がいる前でそんなことを言える筈もなく私は心の中で叫ぶしかなかった。


その後、今度はジェラルド様の国の国王陛下や王妃様、王太子殿下との顔合わせまでさせられた。

そのときに何を話したかなんて覚えてないよ!終始緊張しっぱなしだったし。


ただひとつ言えるのは私はこの場所でも蚊帳の外にいるような気分だったということだけだ。


「はー。……逃げたい」


誰もいないことを良いことに私は本音がぽつりとこぼした。

蚊帳の外だと感じたからお手洗いに行くフリをして外に出てきた。

1人になりたかったというのもある。

(今だったら逃げられそうだけど……)

そう思っても行動には移せなかった。

足が動かなかった。なのでその場にうずくまった。


「そもそもなんでジェラルド様は私と結婚したいんだろう?」

(私に一目惚れした、とか?)

ないない。とその考えをなかったことにした。

「お互いに知らないことが多すぎるのに結婚なんてイヤだよ」

「けど、俺もお前を誰かに奪われるのはイヤなんだよね」

「ひえッ!?」

1人だと思って安心していたら。ジェラルド様が来ていた。

「1人で何やってるの?」

声は優しいけど目は笑っていない笑顔でそう言われて思わず逃げ腰になるけど、その前に捕まって逃げれなくなっていた。

「息抜き、です」

「ふぅん?けど、逃げたいって言ってなかった?」

ジェラルド様の言葉に私はビクッとした。

「逃げようなんて思ったらどうなるんだった?」

優しい声がかえって怖いなと感じつつも、私は震える声で言った。

「い、今すぐ結婚式を挙げて、と、閉じ込める……」

「そうしてもらいたい?」

そう言われて即座に首を横に振り拒否をした。

私のその態度にジェラルド様は全く残念がっていないように思えるのに。

「残念」

なんて言ってきた。


「そうだ。そう言えばまだ言ってなかった」

突然、そんなことを言ってきたジェラルド様に私は身構えた。

私の様子にクスッと楽しそうに笑いながらジェラルド様は信じられないことを言った。


「実は自分でもびっくりなんだけど、空から降ってきて顔を見た時に一目惚れしたんだ」


その言葉に私はぼっと自分の顔が赤くなったように感じた。

そんな私の様子にジェラルド様が楽しそうに笑って、極めつけに。

「こんなことを女性に言うのはリリアーナだけだから、安心して俺との結婚を受け入れてくれるといいな」

優しく頭を撫でられながら、安心するように言うジェラルド様に思わず絆されそうになっている自分にハッとした。

(駄目駄目!結婚したくないのは本当なんだから、絆されたら意味がない!)

望みは薄いが諦めてくれることを祈ったけれど……。


ジェラルド様はその後も一切諦めるつもりはなくアプローチされまくった。更には執着され溺愛されて、デロデロに甘やかされながら一緒に過ごすことになり、なんだかんだと結局絆されてジェラルド様と結婚をすることを私はまだ知らない。

ここまで読んでくれてありがとうございました。

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