7話
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面倒くさい人物たちに出くわしてしまった。
同じ会社のOL、谷川 奈緒 の取り巻きの、DQNガールだ。
今この状態を、よりによって見られてしまうとか、結構な面倒事になる気がした大輔と由香だった。
しかも、この状況をみて、写メに収めようとしているのも、さらに煩わしい事態に進展してしまう可能性が見えてきてしまう。
そこで、大輔は咄嗟に手段に出た。
「へえ、あんた達って知り合いだったんだ。これは面白い、週明けに社内に広めちゃお~」
この言葉に、もう一人のDQNガールも。
「SNSで写真と一緒に拡散だ~」
この人たちは、本当に、人の困ることを面白がる人物なんだと、大輔は残念な気持ちになった。
「そんな事をして、なにかあなた達に利益なんてあるんですか?」
この大輔の言葉に、DQNガール二人は高笑いした。
「あはは....。そんなの、だた面白いからに決まってるんじゃない。それ以外何があるの?」
「じゃあ、あなた達先輩が、反対にそのような晒し目に会ったら、どうなんですか?」
今度は睨みつけられた。
「そんなん、仕返ししてやるに決まってるじゃん」
「あなた達のやってることって、リスクを伴っている事に気が付かないんですか?」
「私たちは、“いいね!とアクセス” が、たくさん集まれば、それだけでハッピーなんだよ。 それ以外何があるの?反対に、こっちが聞きたいわ」
「じゃそれ、せいぜい頑張ってくださいね。じゃ....」
そう言い残し、この社内DQN達とは、次元が違うと認識し、この場合このままココに居ると、さらに被害が広がる気がして、この場を去ろうと、由香の背を押し、DQN1号と2号から、足早に離れた。
遠ざかるその時も、DQN達がスマホを向けていた事に、大輔は嫌悪感と、不快感を覚えた。
△
DQN1号2号とは離れ、モールの休憩ルームに四人は集まった。
大輔と由香は不快感が極まりなく、月曜日の出社が良い気分では無いように思えた。
「しっかし、あのDQN達、大輔と由香ばっかりに気を取られていて、俺たちには 全くスルーだったな」
「全くだ、ホントにあの 谷川先輩を含めた取り巻きって、何人いるんだろう。それと、何しに会社行ってんだろう」
「でも、あの谷川先輩って、会社の上司か重役の娘だったりして....。その親の立場を利用して、あんな高飛車な態度をとっているんだろうか?」
この話の流れに、美菜が答える。
「何か違うみたいよ。確かにやりたい放題みたいな雰囲気で、結構社内では幅を利かせているけれど、身内に重役とかは居ないと、私は他の先輩から聞いてるけど」
「じゃあやっぱりDQNの親分は、谷川 奈緒先輩で、確実なんだな」
「それは決定みたいなんだけど。ちょっとね、変な噂を聞いたの」
「それ、谷川 奈緒の事なのか?」
「そうよ」
何か、重々しく話辛そうにする美菜。
「何か言い難そうに見えるけど、美菜、ココだけの、この4人だから、話してちょうだい」
由香が、何やら気になるのか、美菜の話を聞い出したい雰囲気だ。
「まあココだけの話だからね。 喋っちゃダメよ」
「「「分かった」」」
更に声を小さくして、四人が身を寄せ、ヒソヒソ話の態勢をとった。
「あのね、これは聞いた話なんだけど」
「ふむふむ....」
「あの谷川さんが、ウチの部長と、特別な関係だっていう噂があるの」
「ええ!!?」
「しー....、声が大きいわよ、大輔」
「スマン」
「ホントか?....、美菜」
「そう言う噂よ」
ここで疑問が。
「でも、どの部長なんだ?」
そう、大輔たちの勤める会社には、部長が5人居る。 なので、単に部長と言われても、どの部長なのか分からないのだ。
それに、美菜の答えには、他の三人が呆気に取られた。
「分かりませ~ん」
「「「!!!........」」」
一同は沈黙した。
「なぁ~んだ......」
この大輔の言葉で、他の3人が今までの話ぶりから、何か急に呆れた感覚になった。
「なに?大輔。 その気のない返事、そんなに私の言葉が変だった?」
「だってさ、結局は “分かりませ~ん”だろ?、そりゃ話の腰が折れるさ」
「ま、まあね....。でも、あくまでも噂よ、真実はどうだか....」
「そうだな」
こんな噂話をしているよりも、気になっている事がある美奈は、唐突に由香に聞いてみた。
「ねえ由香」
「なに?」
「あのさ、今のあなた達のその状況って、デートなの?」
「!!........」
言葉が出ない。 いきなりの美菜からの転回の言葉に、返事が出来なかった由香。だがそれを助けたのは、大輔だった。
「あ、それ。 さっきも言ったけど、オレが誘ったんだ」
「え!?」
「そんな、驚くなよ。 だって、由香と美菜、今って研修中だろ? あまり内容が面白く無いと言ってたから、気晴らしに週末何処か行こうって、オレから誘ったんだ」
少し考えて、幸宏が突っ込んできた。
「チョ、待て、大輔。 面白く無いと言っていたって事を、何で知っているんだ? オレ達だって去年受けたけど、今年の内容はそんなに面白くないのか?っていうか、何で内容を知っているんだ?」
「ああ、それは、毎日夜になると、由香から連絡があって、その日の内容と、ちょっとした愚痴を聞いてやっていたんだ」
「「!!......」」
この大輔の発言に、幸宏と美菜が驚いた。
「お前たちって、本当に付き合って無いんだよな?」
この幸宏の意見に、“なんで~?”と言う面容になっている大輔と由香。
「ねえ、答えなさいよ、由香」
「......」
二人とも答えが返って来ない。 そんな二人を見て、幸宏が大輔と由香に、探りを入れてみた。
「連絡先は交換しているんだな」
「ま、それはそうだが」
大輔が返す。
「毎日、夜に、由香から連絡して来るんだよな?」
「まあ、それもそうなんだが」
「それって何でだと思う? お二人さん」
今度は由香も含めた二人に聞いてきた。
「何で?」
拍子抜けした、幸宏と美菜は、じれったくて....。
「あなた達、お互いが好き同士だという事を認識とか、自覚した事はないの?」
「お互いが?......」
何だろうこの返事は。
ココまで来ても、的を得ない大輔と由香の考え方と見て取れる表情に。 幸宏は違った方向からの質問をした。
「大輔と由香って、今まで付き合った人物って居るのか?」
幸宏が過去に恋人が居たのか、唐突に聞いてきた。この返事なら出来るだろうと言う、分かり易い質問だ。
この質問に対しては、即答でふたりが答えてきた。
「そう言えば、オレって、今までまともには付き合った女の子って居なかったな。うん....」
中学時代の忌まわしい過去は含ませない、大輔が言った返事だった。
大輔に続き、由香も。
「そうね、私もそうよ。 今まで告られたのは多かったけど、一度もOKを出したことは無かったわ。だから、お付き合いって知らないの....」
この二人の回答に、幸宏と美菜は“あらまあ....”と、感心するしかなかった。
良くもまあ今まで二人とも、この容姿で誰一人も恋人が出来なかった物だと、改めて、感心している幸宏だが、もう一つ疑問が沸いた。
なぜ?....。 その気になれば、外見良好のこの二人なので、選び放題なのは明白で間違いは無いだろう。
「じゃあなんで、今までの数多くの告白を二人とも断ってたんだ?」
コレだ。
この事がどうしても不思議でならない。 幸宏と美菜は、それぞれの友人としての付き合い期間はソコソコ長いと思うのだが、いかんせん、今一そこだけが分からない。
過去に、決定的な恋愛トラウマでもあるのなら、話は別だが、今までの付き合いで、そんな事は聞いた事が無い。
だから、何故だ?
どうして?
そんなに簡単に答えが返って来るとは思っていなかった。 だが、意外にも、簡単に答える大輔。
「なぁんだ、そんなの簡単だ」
その大輔のコレから出そうとしている答えに、由香は異常なくらい、真剣な面持ちの表情になった。
すると、いとも簡単に大輔は 言ってのけた。
「由香の事だけが大好きだからに決まってる」
「................」
由香の目がこの言葉によって見開き、その瞳の矛先は、大輔の瞳に釘付けとなった。
まさかの期待通りの答えに、幸宏と美菜は拍子抜けした。
一方、当の本人と言える由香の表情は、ポカ~ンとしている。
ただ単に、ポカ~ン....、だ。
ヘンな無言の時間が 数秒くらい空いた後、やっと正気に戻った由香が、瞳の焦点を合わせて、さらに大輔を見つめている。
「お前、良くそんな事を相手がいる前で、しかも、こんな公衆の場所で言えるなぁ」
「だって、事実だからな」
「その事、由香に言った事ってあるの?」
美菜が訊き正す。
「無いな、今まで言われた事も無かったし、今聞かれたから、自分の気持ちをただ単に、正直に言っただけの事なんだけど」
「だい....す..け。 それ、ホント?....」
やっと言葉が出る様になった由香の一言目が、これだった。
躊躇なく答える大輔。
「ホントに決まってるだろ。なに?今更。じゃ聞くけど、由香は?」
それを戒める様に、美菜が話を挟む。
「ちょっと! 色気もムードも無い、こんな場所で告るって、どういう頭してんの?」
「なにが?....、で、由香、返事は?」
事を一大事と思っていない大輔は、由香からの返事を待つ。
「........ねえ、大輔....」
「お、返事か? 由香」
「....か....」
「?」
「もう!..、バカ!....」
何故か、由香に罵倒された大輔だった。




