8話
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由香の表情が険しくなり、その表情から出される言葉は、大輔にとって予想外の言葉だった。
「大輔!....、こんな場所で....、こんな雰囲気で....、ホント、信じらんない..」
由香からは、大輔が思っている様な言葉と違う、辛辣な返事が帰って来た。
「由香。お前って、オレの事嫌いなのか?」
正す大輔に、さらに。
「こんな場所で言うなんて、本当にデリカシーが無い男子だったんだ。だったら....、わたしもう帰る!」
そう言うと、由香は、混んできた室内の、休憩スペースから、一人で帰って行こうと、歩き出し、モールのエントランスに向け、三人を置いて行ってしまった。
一方の大輔は、予想外の言葉を言われて固まってしまい、歩き去っていく由香の後ろ姿を、ただ佇んで暫く見ているしかなかった。
「大輔、追わなくていいのか?」
そう幸宏に言われたが、少しの間、耳も聞こえないのか、だんだん小さくなっていく由香の姿を見ているだけだった。
それを見ながら、大輔は。
(あ、あれ?....、なに?、何で?..オレ、ショック受けてんの?)
この時、大輔は初めて“女性”を好きになって居たのだと言う、心の奥底に眠っていた恋愛事情に気づかされ、しかも、その人物が “長田 由香 にだけ” と言う事も、自ら思い知る事になるのだった。
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一方の由香は。
(なんで?..、何でなの? あんなタイミングで言う事無いじゃない、まったくまったく もう。TPOを考えてから言いなさいよ、大輔......、バカ ばか!)
大輔からのまるで咄嗟に出た様な言葉に、どこか怒りが湧いて、そんな事を考えてしまう由香だったが、そう思った言葉の裏には、由香も大輔の事に対して、見た目・見てくれ・外見容姿を重視して、言い寄って来る男子達では無く、とにかく一緒に居て堅苦しく無く、歳上なのに同い年みたいな感覚で付き合える男子、と言う、知らず知らずに“男性”として好感を持っていてしまった事に、先ほどの一連の事情により、今更ながら、大輔に対して好感を持ってしまっている事に、由香も気づいてしまったのだった。
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「あら、長田さん。こんな所で....、あれ?一人?」
勢いで、モールから出て行こうとした由香だが、今ココで、とても会いたくない人物に出くわしてしまった。
いや、人物では無く、人物たちだった。
まさかこの人も今日、この場所、この時間に限って居合わせるなんて、と、タイミングの悪さに若干の自暴な感触を自覚した。
まさにモールのエントランスからもうちょっとで出られると言う所だった時に、同じ会社の先輩OL、谷川 奈緒 と、先ほどのその取り巻きのDQN嬢二人に、また鉢合わせになってしまったのだ。
「また会ったわね、長田さん」
「先輩....」
「なに?その顔。 まるで会いたくなかったと、言わんばかりの顔つきね」
「失礼しちゃうわね、先輩に向かって」
先ほどあったDQN嬢の二人組だけでは無く、今度はいつもの三人になっているので、もうこれは完全に弄られると、由香は諦めの気持ちになっていった。
「あらら、私達二人だけと思っていたのが、三人になったのが、不思議って顔しているわね」
「あ~、あの時には奈緒さんは、他の店舗に行っていて、あそこに居なかったタイミングの時に、あなたたち四人に遭遇したって事なのよ」
「そうですか。 それじゃあわたし急ぐので、失礼します」
その場を去ろうとしたが、三人は由香の行き先を塞ぎ、ちょっと来い 的な雰囲気で、そのまま連行される様に、エントランス横の特に人気の少なさそうな、休憩スペースに連れて行かれるのだった。
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「大輔。由香の事、追った方が良いと思うぞ」
「私もそう思う。 あなた達って、結構同じ恋愛境遇な感じがするの、だから由香だって、そこの所は十分に分かっていると思うから、こんな事で、大輔さんと由香が疎遠になってしまうのは、何だか悲しいから、行ってあげて」
「そうだぞ。 由香だって帰るにしろ、交通機関で帰るのには時間が掛かってしまって、とても可哀そうな事になるしな。車で来てるんだろ?」
「そうだ」
「だったら、尚更だ、行ってやれよ」
「大輔さん、行ってあげて、私達も後を追うから」
「分かった」
由香に対する大輔の気持ちをさっき初めて気づいた大輔は、今このタイミングを逃したら、次回は何時伝えられるのか分からない、そう思うと、大輔は二人に礼を言って、由香の後を追った。
「ふぅ....、面倒くさい二人ね、まったく....」
「ホントだ、世話が焼けるな」
大輔が走り去った後、幸宏と美菜は、少々呆れ気味だが、良い結果を思うのは、二人同じだった。
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「あんたってさ、ちょっと容姿が良いからって、入社していきなり浮ついてない?」
「そ、そんな、そんな事ないです」
エントランス横のある手洗い場の、入り口付近にある自販機が設置してある休憩スペースに座らされ、左右と由香の前にも立たれて、逃げようがない。
いきなりこのようなことを言われて。
(学生の時だけじゃあなく、社会人になってからもこんな事が続くなんて....)
と、由香はそう思いながら、先輩OLからの攻撃(口撃)が続く。
「大体、入社してすぐに男性から人気があるって事が、何かイラつくんだよね」
「だって、それはわたしが 希望した事じゃないのに、そんな事言われたって....」
「ホント、なにかイラっと来るね、この子は。 言い返して来ないで頂戴、益々不機嫌になるし」
「そんな....」
全くの理不尽さに、由香はその後からは、黙るのみだった。
しかし、その後も、三人からの罵倒じみた言葉の攻撃は続き、それが次第にエスカレートし、由香は次第に体が震え、涙が溢れてきた。
「由香!」
自分を呼んだ声がする方へ顔を向ける。それは、その時の由香にとっては、これ以上、これ以外にない、好きな人からの、救いの声に聞こえた。
「だ..いすけ....」
大輔の言葉に、DQN3人組も振り向いた。
「あれ?細井クンじゃない。 こんな所で何しているの? まっさか、私に会いに来てくれたんじゃない?....って、そんな訳ないか」
「先輩方、これどう見ても、ハラスメントですよね」
一瞬だが、3DQNの動きが留まったが、奈緒がまた強気に、語り出した。
「わたしを振っておいて、こんな娘と付き合っているなんて、益々あなた達の事、気に入らなくなったわ」
「この前の腹癒せですか?」
「ふふん、まあ、これ見ちゃぁ、そんな気が起きても仕方ないよね」
「そうですか....」
「でもまあ、お互いを呼び捨てで呼び合っているなんて、まっさか~だけど、あなた達の仲って、カレカノなのかな~?」
いやらしい言い方で、上から目線で言ってくる奈緒。
そこに、幸宏と、美菜が追い付いた。
「あれれ、何だか変な雰囲気になってるな、ココ」
DQN嬢たちと大輔たちの会話に割って入る幸宏。
「おう、幸宏、そうなんだ。何か由香が先輩たちから説教をされているみたいで、オレはその会話を Rec しながら、さらにコレから事情を聴こうと思っていたんだ」
そう言いながら、大輔はポケットに入っているスマホを取り出し、本当にそのアプリが起動している事を、画面をDQN嬢たちに見せながら向けた。
「な!....、何もしてないわよ、私達。ただココでたまたま出くわした長田さんと喋っていただけだったのよ、ねえ皆さん」
そう言ってDQN2号は同意を求めた。
「そ、そうなのよ。それじゃあこれ以上は話も無いから、それではまた会社で、みなさん、御機嫌よう」
そう言うと、足早に 3DQN嬢はその場を後にした。
その時に、由香の両手はしっかりと握り締め、震えていた事に、大輔だけが気付いていた。
DQN嬢たちが去った後、立ち上がっていた由香が、長椅子にヘナヘナと座り込んだ。
大輔がハンカチを渡して。
「もう大丈夫だ、すまなかったな由香」
無言で、瞳を少しだけ潤ませている。
そんな姿を見て、美菜が由香に寄り添い、声を掛ける。
「由香、だいじょうぶ? 」
由香の横に座り、そっと肩を抱き寄せた。
「は~....」
と、溜息をつくだけで、言葉を発することはまだ出来ない様だ。
「気を張ってたんだな、大輔が来て、先輩たちを追いやったら、気が抜けたんだな」
幸宏が言うと、美菜も。
「そうね。 もう少しココで休憩してから帰ろうよ、みんな」
「そうだな」
大輔もそう同意しながら、隣にある自販機で、ミルクティーを購入後、由香に与えた。
「由香、飲みな。 ちょっとは落ち着く」
「うん....、あ、ありがと....」
やっと声が出だした由香に、大輔はホッとした。
由香の背中を撫でている美菜が、由香に対して聞き出した。
「ねえ由香、あなたもしかして、先輩たちに何か恨まれている事があるんじゃないの?」
心当たりがある由香が、コクリと頷いた。
「やっぱり....。それに、大輔さんもじゃないの?」
それを見ていた幸宏が、ここで話す事では無いと思い、モールを出て、近くのファミレスに行って、話を聞こうと言い出したが、大輔がそれを断り、コレから4人で大輔の部屋に行く事を提案した。
「まあ、そうだな、かえってその方が、他人の目も無いし、良いかもな」
「そう言う事だが、いいか?由香、俺ん家で」
「う....うん」
返事に今一覇気が無い、だが、ココにいつまでも居るよりは良策だと思い、4人はそれぞれ来た車で、途中にコンビニに寄り、細井家に向かった。
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この小説をお読み下さっている方々、ありがとうございます。
面倒くさい二人も、どうやら気持ちは一緒みたいです。
この後も色々な出来事がありますが、最後までお読み下さると嬉しいです。
お越し下さり、ありがとうございます。




