19話
19
決戦の月曜日。
今日から由香と大輔は、一緒に出勤する事にした。
コレも、恵からの言いつけでの事項で。
『月曜日は、由香ちゃんと一緒に、早めに出社する事』と、言われていたので、手こそは繋がないが、揃っての出社とした。
自分の所属する部署に到着すると、すでに恵は出社していた。 いつもより、30分は早めだった。
「すみません、遅くなっちゃって」
「いいんだよ。それよりちゃんとカップルになれて、良かったね~」
「おはようございます。はい、ありがとうございます。鈴木さん」
由香も挨拶をした。
「由香ちゃん、だからもう、恵で良いよ、何か、かたっ苦しいから」
「は...、はい、め...、めぐみさん」
「うん、コレからはそれでいいからね」
「はい」
やり取りが終わった後に、大輔が恵に昨日のメッセージの事が気になっていたので、どう言う事か、説明を求める。
「昨日のメッセージの本意が、今一、分からないんですが、大丈夫みたいな内容だったと思いますが、どう言う事なんですか?」
「う~ん、説明すると結構面倒なんだけど、大ちゃん達は流される様に、右往左往していれば、今週中には解決しているよ~」
「何か、オート解決みたいな感じがしますけど、全部任せっきりみたいで、罪責感染みた感じもして、ただ申し訳ないと思うばかりです」
「そんなの良いから~.....って、そろそろ来るわねDQN達が...」
そう言っていると、次々に社員が出社してきて、恵たちのチームも揃い、あと10分で月曜日の朝礼の時間になった。
そこへ。
「あらら、長田さん、出社しているのね。男をまた虜に出来て、さぞ嬉しいでしょうね~」
「そ、そんな事して、ませ、ん......」
「細井クンも、私の事、好意を持ってくれたかしら」
「谷川先輩、オレはもう誰の告白も受けませんので、もうこれっきりにしてください」
奈緒がこの大輔の言葉に、血相が変わる。 が、このタイミングで、朝礼開始のチャイムが鳴った。
「二人とも、後で用事があるから、勝手に帰らないように。じゃ....」
そう、言い捨てる様に、奈緒は自分の部署に戻って行った。
「朝から大変だな」
ギリギリ出勤してきた幸宏が、今の顛末を見ていた事に心配し、声を掛けてくれた。
隣の部署では、美菜も、大輔たちに向け、拳を上げている。この~!! と言う感じで、二人に勇気付ける。
友人たちの有難さが、身に染みる大輔だった。
△
昼休憩。
社食で一つのテーブルに、いつもの4人で昼食を摂っている。 この時間は楽しい。
食べながら喋っていると、隣のテーブルに3人の女子が座った事に気が付いて、その方を見ると、見事にこのテーブルを狙って、座っているDQN3人嬢がいた。
その時に、大輔と奈緒の目線が、瞬間だが、ぶつかってしまった。 それを確認するかのように、取り巻きDQNが、聞こえる様に言い始めた。
「最近じゃあ、先輩の言いつけに、反論する後輩が居るんだってね。困ったもんだよね~」
「あれ?あんたもなの? いやね、私も、社外で出会ったのに、迷惑そうな顔されて、プライド傷ついちゃったのに、一方的に平然と立ち去ろうとした後輩が居るのには、さすがに驚いたわぁ」
それを聞いた DQN本命が。
「わたしなんか、丁重に告白した男子が、即答で断りを言ってきたのには、流石に凹んだわ。、それに、新入社員の女子が、先輩の言う事を聞かなくて、仕舞には、私が悪いみたいに、泣き出してきて、とってもバツが悪かったわ」
などと、大輔たちが食べている最中にも関わらず、言いたい放題言っている。
暫くそんな状態が続き、全員が食べ終わると、さっさと席を離れて行った。
(何でオレ達だけに、こんな事を言ってくるんだろう)
大輔はまるでターゲットが、自分たちだけに向けられている事に、不思議に思った。
「由香、よく我慢したな。偉いぞ」
「大輔、私もうこんな事ばっかり、イヤ!」
「待ってろ、とにかく、大人しくしていてくれと言う恵さんからの頼みだから、オレだって我慢しているんだ」
「うん分かった。信じるから」
「ごめんな」
だが、不思議な事がある。
言い寄って来るのは大輔と由香ばかりで、一切他の社員には言い寄って無いのだ。コレは一体どういうことなのか? そこのところが今一良く分からない所だ。
今までも何となくではあるが、最近になって、大輔と由香のみに標的をつけ、狙ったみたいに、やって来る様は、異常なほどだ。
(取りあえずは、今日が終わるまで、大人しくしていよう)
そうするしかないのが現状なので、二人は恵の言う通りに、この日はとにかく、何を言われても、ただ我慢と忍耐で夕方まで辛抱した。
□
いつもの様に、退社時間が来た。 通常通りに大輔は、恵と約1時間の残業に入っていた。
そして、暫くすると、業務を終えて、私服に着替えた 谷河 奈緒だけが、大輔たちの部署に来た。
奈緒の開口一番は。
「あら、まだやっていたのね、押し付け残業。 可愛そうね、大体の社員は残業って言っても、殆どが断るのに、あなたは律儀に、こなしているのね、可愛そうね本当に」
PCの画面を見ながら、必死に間違いが出ないように、集中している所へ、この皮肉染みた言葉のかけ方、我慢できずに大輔が言い返した。
「ちょっと黙っててくれませんか!全く集中できない!」
この言葉に一瞬怯んだ奈緒だったが、先輩としてのプライドがそうはさせなかった。
「後輩の癖に、生意気なのよ、大体あなったって......」
「はいはいはい!そこまでそこまで。取りあえず、大ちゃんの言う通り、邪魔しないでくれる? 谷川さん」
大先輩の言う事に、流石の奈緒も押し黙る。
「終わった頃にまた来るから」
一言だけ面倒な事を言って、奈緒は一旦はその部署を離れた。
「由香。ここに居ない方が良いと思う、だから先に帰ってくれ」
今の顛末を聞いていた由香は、自分だけが事の終始から逃げる訳にはいかないと思った由香は、このままココに残る事を告げた。
「いや、私にも関わる事だから、最後まで居る、だから帰らない」
「巻き込まれるぞ」
「いいもん」
「あのなあ.....」
そこで恵から横やりが入る。
「良いんじゃない? 大ちゃん。 十分に由香ちゃんにも関わっている事案なんだから、最後まで居てもらおうよ」
「でも......」
「いいから」
恵にココまで言われたら、従うしか無いと思った大輔は。
「じゃあ、大人しくしててくれよ」
「分かった」
そう言うと、由香は大人しく自分の席についた。
(しかし、いちいちオレに構ってくるな、谷川先輩は。 こんなんで、今日無事に終わるのか?)
大輔は、もうすぐ終了してしまう業務に、その後の不安を心配し始める。
△
「さぁ終わった終わった~」
大きく伸びをしながら、恵は大輔に、業務を終了したことに、労いの言葉で、いたわる。
「大ちゃん、月曜日なのに、いきなり残業の付き合いありがとね。 いつも助かっちゃうよ~。もう、愛してるからね~」
「お疲れ様です。すみません、オレ、由香以外は愛せないので、ごめんなさい」
「あら、ハッキリ言える程、余裕が出てきたみたいだね、先月までの大ちゃんが、信じられないよ~」
「はは、恵さん。姉ちゃんと一緒に嵌めたくせに」
「それ言わないでぇ」
そんな会話が聞こえたのか、ハイヒールの音と共に、また奈緒がやって来た。
(なぜそんなにオレにかかわるのか、オレに構ってくるのか、本当に分からない)
ハイヒールが聞こえ、近づいてくる奈緒に、大輔は、この時から嫌悪感が体を走った。
「終わった様ね細井クン」
「はあ、確かに業務は終わりましたが、オレはコレで帰りますから」
「ちょっと待って。 この後何も予定が無かったら、私とご飯食べに行かない?美味しい所知ってるから」
「オレは行きませんよ、行きたのなら、一人で行ってください」
「あはは、何言ってるの、童貞でヘタレなあなたに、こ~んな美人な先輩がナンパしてやってるんだよ、行かない訳がないでしょ? 」
この人はどれだけ自分が好きなんだろう。そして、どれだけ自分勝手なんだろうと、つくづく思った時、何故か由香が大輔を見つめていた。
「ちょっと、そんな事、女性が言うワードじゃないでしょう」
「いいから、私と付き合いなさい。じゃ無けりゃ、あなたの過去の情報、バラすわよ。特に中学の時の事なんかをね」
(なぜこの人は、人の弱みをトコトン調べて、知って、その傷口に塩を刷り込むような事を、平気で出来るんだろう、だったら....)
「いいですよ、そんなの秘密でも何でもないです。バラしたかったら勝手にすればいいでしょう、それに、オレは童貞じゃないですよ」
この大輔の言葉に、由香は目を見開いて、固まってしまった。
「よく言えたもんだね。 もうこうなったら、あんたなんかどうなっても良い。私をトコトン嫌った事を思い知らせてやる。明日になったら、どうなっているか、思い知るから、いい気味だよ。それじゃあ、コレから忙しくなるから、私はコレで」
(何処で調べたんだろう、大輔の過去の恋愛事情が、事もあろうに、奈緒に知れわたっている、同じ学区内の人物なので、知人を通じて調べて行けば、当時の事を知っている誰かに突き当たるだろう、意外に過去の事が調べられ、知られるのは、簡単な事だったんだろう)
大輔は、この際、由香を守るためなら、自分を犠牲にしても良とした。
そして、諦めかけた時。
「はいはい、そこまで。 あ、奈緒さん、帰らないで。帰るとあなた、明日どえらい事になってるからね」
「は?」
「いえね、多分だけど、明後日から、出社が出来なくなるかもって言ってるんだけど」
「ちょっと、何を言っているのか、見当がつかないんですが」
イラっとした態度を恵にまでする、奈緒。
「それでも行く?」
さらにイラつく奈緒。
「あなたには関係ないでしょ!」
とうとう恵に怒鳴る奈緒。
「ちょっとこっちへ来て」
恵はそう言って、奈緒を自分の方へ呼び、ポケットから出したスマホの画面を見せながら、耳打ちする様に、小声で奈緒に暫く伝えた。
すると、見る見るうちに奈緒の表情が青白くなり、耳打ちが終わる頃には、顔面が蒼白になってしまった。
「......そう言う事だから、分かったわね、谷川 奈緒さん」
「.............」
全く言葉が出なくなった奈緒。それどころか、いきなり恵に対して、深々とお辞儀をしだし、顔面蒼白のまま、この場を去ろうとした。
その背後から、恵が。
「あ、そうそう。この子達 付き合い始めたから、二度と近寄らないでね~」
と、逃げる様に去っていく、奈緒に、言葉を被せた。
□ □ □
この小説をお読み下さっている方々、ありがとうございます。
先回の内、この小説は 25話 と言う事でしたが、27話になりました。 引き続きお読み下さると、筆者は気分が舞い上がる程に嬉しいです。
いつも私の駄文をお読み下さり、ありがとうございます。




