12話
12
「あ、もしもし母さん........」
由香の家に着く前に、道路の広い場所で一時車を止め、大輔は家に電話をしている。
用件は、コレから由香と一緒に外食する事と、一旦家に帰り、姉の有美もそれに連れて行くことを伝えて電話を切った。 そして、再び今度は細井家に向かう。
走りながら。
「どこが良い」
「えへへ~、ラーメンだよぉん、らーめん...」
「やっぱな、由香好きだよな~、“寄ってって”のラーメン」
「うん大好き!」
「はは。あそこ オマケ も有るしな」
「えへ。うん」
一度長田家に寄り、その後再び走り出した。
「姉ちゃん玄関先で待っていてくれるかな?」
そう言っていると、すぐに長田家に着いた。
言った通り、すでに玄関先で待っていた有美は、ばっちり決まった出で立ちで大輔の車に乗って来た。
「急に呼び出して大輔どうしたの?」
「う~ん、結構長い話になるから、後でいいかな」
「分かったよ。で、由香もいいのか?」
「はい、ぜひ聞いて欲しいので」
何かを悟ったのか有美は ふぅん と言った感じで、受け取ったみたいだった。
「姉ちゃん“寄ってって”だけどいいかな?」
「お~、わたしは最近行って無いな。 良い選択だ」
「....って、着いたし」
「話ながら歩いても良かったな」
徒歩でも10分弱の道筋なので、車だとほんの3分くらいだが、信号機が返って煩わしいくらいだ。
△
「いらっしゃい!.....って、おう 大 か...お!、有美も、なんだ?姉弟で、って...、由香ちゃんも、久しぶりだな」
「大将、久しぶりです。今日は弟と、その彼女と来ました」
「「な!!」」
若干の絶句だった、大輔と由香。
すると。
「おお! 大。とうとう彼女が出来たか、良くやった、でかしたぞ。しかも、凄い別嬪さんになったな由香ちゃん、良かった良かった.....」
「はは、大将、あはは.........」
大輔は、一瞬、“違う”と言おうとしたが、姉の有美からの殺傷的な眼差しに、つい言えなかった。
三人が席に座っている頃には、由香の顔がこれでもかと言う程に、赤くなっていた。
これでこの店では、大輔には彼女が居る事になってしまった。
だが、この今現在の気持ちに、イヤな感じは全くなかった。
そうしているうちに。
「なに?大ちゃん、やっと彼女が出来たって?.....って、えぇ?!.....、由香ちゃん?...、由香ちゃんなの?、大ちゃんの彼女って」
超絶な、最近じゃ聞いた事も無い声で、女将が驚愕した。
「はいはいはい。大将、女将さん、早く注文とって、...、って、いつもと一緒だけど、お願いね。三つ」
若干の間があったが、女将が正気に戻り、注文を繰り返した。
「毎度ね有美ちゃん。 じゃあ あんた、みそ3,ギョー3よろしく」
「あいよ!」
大輔と由香の了解は無しに、注文は終わった。
「で、なに? 話って」
「う~ん、本題は家に帰ってからなんだけど、内容はこの前の事とほぼ一緒なんだけど、実は更に面倒な事になってしまって、さっき、味方になってくれる先輩にも相談したんだ」
「なら、私じゃなくてもいいじゃん」
「それがさぁ.....、全く姉ちゃんには関係ない話でもないんだ」
「聞き捨てならんなそれは」
この姉弟話を聞いていた由香が、不思議に思い、大輔に聞いてくる。
「あの、大輔。 何でお姉ちゃんにもかかわりがあるの?」
「それは.....」
そのタイミングで、注文したものが出てきた。
「はいよ!、味噌お待ちぃ」
ラーメンが出てきた。
「うわ!美味しそう」
由香が目の前に出された味噌ラーメンに、目が釘付けになった。
割り箸を大輔がそれぞれに渡し、三人揃って、いただきます を言って食べ始めた。
少しラーメンを啜っていると、目の前にチャーシューが、それぞれ一枚づつ、食べている最中に、三人それぞれの丼に追加され、その後すぐに、これまた三人の前にギョーザの皿が置かれた。
しかも、通常のギョーザの個数が二つ多い。
「わ、大将、いつもすみません」
有美が言うと、女将が。
「いいって。 あんた達姉弟は常連だからね、サービスだよ。いつもありがとね。コレからもご贔屓に」
「ありがとう」
今度は大輔がお礼を言い、由香が軽く会釈をすると、また黙々と食べ続けた。
△
「ふぅ、美味しかったぁ~」
「満足まんぞく~」
「ご馳走様でした」
三人三様の食後の挨拶をして、大輔がまとめて勘定を払い、大将と女将に挨拶を言う。
「ごちそうさま~。美味しかったです、また来ますからね」
「おう、毎日でも良いぞ。あはは.....」
「何言ってるのあんた。 ごめんねぇ、あんなんで、でも、大ちゃんまた彼女と一緒にいらっしゃいな、待ってるからね」
「あ、はい。ご馳走様でした」
「まいど~!」
そう言って、三人は“寄ってって”を出た。..........が。
その時、ラーメンで体が温まった意外に、顔が赤くなっている由香が居た。
△
「結局はただ美味いラーメンとギョーザを食べに行っただけになったな」
「美味しいからな、あそこは。ついつい味に集中してしまう」
「本当だ」
本当に、ただ単に、おいしい夕食を済ませに行っただけになった。
「で、本当の話だが、取りあえず家に帰ってからでいいかな、姉ちゃん」
「って言うか、もう2分で家だぞ.....って、由香の家過ぎたぞ、大輔、いいのか?」
大輔が思い出したように。
「あ、ごめ...、姉ちゃん。話はウチでという事でいいかな?」
「ほう、最初からそう言う事だったんだな?だが、この荷物はなんだ?」
後部座席に積んであった女性物のトートバッグを見て、有美が言った。
「あ、姉ちゃん、今晩だけど、姉ちゃんの部屋で、由香を泊めてくれない?」
大きなため息をつき、多分そうなるだろうと思っていた有美だった。
「やっぱな」
了解の一言だった。
「姉ちゃんありがとう」
「仕方ないさ、大輔の“彼女”だからな」
一瞬、三人に妙な 間 が空く。
「お姉ちゃん、それ言わないで~」
由香が、勘弁してほしいオーラ全開で、有美に対して懇願する。
細井家に着き、車を降りて、家に入る。 先週も来たので、由香は姉弟の後を付いてリビングに入った。
すると、先週は居なかった、大輔の父が、スマホでニュースを見ていた。 それを見た由香は。
「あ、おじさんこんばんは。お久しぶりです」
そう挨拶をすると、大輔の父、明人が目を見開いて。
「えっと、由香ちゃんだったかな?...、うん、そうだ、由香ちゃんだ。久ぶりだね、何年振りになるのかな、元気だったかな?」
「はい、本当にお久しぶりです、おじさん。 私は元気です。 いま、大輔クンと一緒の会社に入社出来て、お世話になって居ます」
「あ、そうだったね。そう言えば家内が言っていたな。大輔、分からない事があったら、由香ちゃんの力になってあげなさい」
由香の隣に居る大輔に向けて、言われた。
「ありがとうございます。それじゃあ、お邪魔します」
「ああ、ゆっくりして行きなさい」
「はい」
その会話の後、三人は取りあえず2階に行き、一度由香が有美の部屋にトートバッグを置いて、その中の小さなバッグだけを持って、大輔の部屋に行き、三人は集合した。
△
大輔の部屋に集合した三人は、“DQN嬢対策委員会 第2弾”を開催した。




