あふたぁ! その二
暗い暗い牢の中。いや、暗いと言うのも違うかもしれない。何故なら光など全くなく全てが闇と言った場所だ。
この中では距離も形も時間さえも認識する事が出来ない。普通の人がこの様な場所に閉じ込められたのならば、数分の内に発狂してしまうだろう。
だが、今此処に居る者は普通の人間では無い。
星を盤上に生命を遊戯の駒として遊んだ者が、刑罰の為に閉じ込められている。
そして、その者はと言えば創造主に管理者として仕事を任された、人では無く人々からすれば神の一柱と言っても良い様な存在だった。
その様な存在だ。安易に発狂する事など出来ない様になっている。それに、この空間自体にも特殊な魔法が掛かっており、発狂したところで強制的に正常に戻されるおまけ付きだ。
「ぐぅぅ……なぜこのような目に……少し遊んだだけじゃないか」
反省の為にと罰を受けているのだが、この者全く反省をする様子が無い。
そもそも、此処に来るまでに相当痛い目を見ているはずなのだが。
「何故だ! ゴブリンなんぞに姿と性能を変えられ狩られまくったと言うのに、このような空間に閉じ込められるなど……納得がいかん!」
人の天敵とも言えるゴブリン。
その能力は低いのだが、毎年ゴブリンによる被害は決して少なくない。
田畑は荒らされるし、弱ければ攫われる。そして、攫われた先で女とあれば苗床にされ、そうでなければ食糧にされてしまう。
それ故に、同じような行動をするオークと並んで、人にとっては二大天敵とも言える。そして性質の悪いことに、この二種は人の生息圏の近くに拠点を構える……全くもって嫌な存在という訳だ。
ただ、人もやられる儘な訳が無い。しっかりと対策は考えている。
その為に年々、その被害は減っている傾向にはある。
そして、このゴブリンに変化させられた者にとって、普通にゴブリンと変えただけでは罰にならない。
という事で、変化した場所は人々の対策が一番厳しい場所。
そのような場所にゴブリンとして送り込まれたのならば……下手をすればリスキル状態になる。いや、実際に数回程復活した瞬間に倒された事もある。
と、その様に、ゴブリンの本能を全うする事も出来ず、たたただ天敵として処分される事五十回。それだけの無慈悲な死を経験したと言うのにも関わらず、彼は元気に黒牢の中にて悪態を吐く。
これでは、創造主の罰だ! と言う思惑も外れてしまっている状態ではあるが……彼は、反省をした場合、此処で五千年の月日を過ごす事になっている。
そう、反省をした場合だ。
もし、五千年間悪態を吐き続ければどうなるのか……それは創造主の胸の内次第だろうが、恐らく開放されるなどという事は無いだろう。
実に悪夢である。
光も無く、音も無く、触れる物も無く、時間の感覚も無く、食も無ければ娯楽も無い。
無い無い尽くしの空間。やることなど全く無いのだ。……究極の怠け者でもない限り、快適な空間とは言えないだろう。
そして、ここに閉じ込められた、この元・管理者と言えば……仕事が有るのに暇だからと言う理由で色々な物を弄んだほど、我慢などからほど遠い存在。当然、何もやらないと言う状態は苦痛以外に無い。
「あー! くそ精霊共め……管理者に氾濫なんぞしやがって……」
此処に創造主や精霊達が居れば「それが仕事です」と言っていただろう。だが、此処には誰もいないので、彼の愚痴に反応するものは居ない。
いや、居たとしても音が届かないので聞こえず無反応だろうが。
「……今どれぐらいたったんだ? もう、何年も此処にいる気がするんだが」
正解は数日だ。まだ、年単位も経っていない。彼は順調に闇に蝕まれて居るようで、時間の感覚がおかしくなっている。……だが、正気は無理やり保たされているものだから。
「気が狂いそうになる……のに、狂えない! ただただイライラが募るだけじゃないか!!」
ストレスマックスな状況。人間であれば胃がやられてしまっているレベルだろう。いや、その前に発狂している。
この状況においての救いがあるとすれば、それは魂の消滅か発狂だ。しかし、この者は創造主によりそれらを封じられている。救済など無い。
では、どうすれば平穏を保てるのだろうか? 闇に同化する。瞑想に入る。それぐらいだろうか。
何かを思考する……にしても、何時かは思考する内容など無くなってしまうので、長い長い時間を潰す事など出来るはずも無い。
この、元・管理者の性格を考えた際、平穏を保つ術と言うのは無理が有る訳で……悠久に続く闇の中で常にストレスを受けながらも、狂う事すら出来ない。
そのような時を過ごす事になるのだが……この元・管理者が開放される日は来るのだろうか? それは、この者次第だろう。
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こんなのあんまりだぁぁぁぁぁ! と言いたくなる罰ですなぁ。私は……もし、同じ状況になったらどれだけもつかな?
当分はネタ考察でもちそうだけど。




