四十六話
「さて、そろそろ俺と此奴は行かねばならぬ」
『そうそう! 夜ちゃんと私はパパンに説明しないといけないの!』
「パパンじゃない。創造主様と言え」
勇者と睨み合いをしていた魔王が、突如この場を離れると宣言した。そして聖剣もまた、それを肯定する。
それに対して、勇者はどうしたら良いのか解らない。何せ、自分の相棒である聖剣は魔王と行動を共にすると言っているのだ。
戦おうにも……勇者には使える武器が無い。いや、話が本当の事であるならば、そもそも戦ってはいけない。黒幕が他に居るのだから。そして、聖剣と魔王はその黒幕の被害者だ。
それでも。
「どうしたら良いんだろうな? 頭では理解は出来る。まぁ、話が本当の事なのならな。だが、気持ちの面ではな……今すぐ捻り潰したくて仕方ない」
「まぁそうだろうな。だが、それは俺も同じだ。何せ……勇者と魔王は殺しあうようにプログラムされているからな」
「……この気持ちが作られた物だと? あいつを殺されたからこその思いなんだがな」
「いや。確かにそれもあるだろう。しかしその事とプログラムが相乗効果を見せているのだろうな。今までに無かったほど殺意を覚えているはずだ」
魔王の言葉は的確だ。勇者は、今まさに嘗てない程の殺意を魔王に抱いている。
そして、そんな図星を指摘された勇者は、やり場のない怒りを魔力に変換し聖剣を握ったが。
『この魔力、美味しいの!!』
と言いながら、聖剣が送られて来た魔力を全て取り込んでしまった。
「ちっ……」
思わず舌打ちをしてしまう勇者だが、その目の前では驚くべき光景が映し出された。
『おぉぉ!! 勇ちゃんのお陰で……バカの呪いが解けそうなの!!』
「なに? そんなに魔力を取り込めたのか」
『ふぉぉぉぉぉぉ!! 来たの! 来るの! 変身なの!!』
聖剣が叫ぶ。その瞬間、空間の全てを光が埋め尽くした。
「うぉ! 目がやられる!」
「まてまて! お前、俺に突き刺さってる状態だろうが!!」
目をやられた勇者と、聖剣として胸に突き刺さっている魔法がお互い別の意味で焦る。
勇者は視界を失っただけなのでマシだが。魔王の場合は一体どうなるのか? 胸に突き刺さっている状態で変身する? 一体どうなるのか想像がつかない。
『へん……しん! とぅなの!』
周囲を埋め尽くしていた光が聖剣へと収束し、収まった光から一体の女の子が現れた。
「じゃーん! ひーちゃん此処に再誕! なの!」
恰好良くポーズを取っている、ひーちゃんと名乗る元・聖剣。ただし……その腕は、魔王の胸へと突き刺さっていた。
「……お前……腕刺さったままじゃないか!!」
「あぁぁぁぁ!! やってしまったの! これでは恰好良さが半減なの!」
「問題はそこじゃない!」
魔王と元・聖剣がコントでもしているかのようなやり取りをする。
その声を聴いていた勇者は……徐々に視界を取り戻しながらも、自らの武器が完全に失われた事を認識した。
「こうなったら、肉弾戦しかないか? いや、魔法もあるが……」
「落ち着け勇者。まずはだ。おい、元に戻れたのなら、俺達のも解除しろ」
「解ったの! 後、勇ちゃんにはお礼をしてあげるの!!」
そう元・聖剣が告げると、またもやピカっと発光をした。ただし、今回は実に優しい光であり、目にダメージを追う事が無い。
そして、その光を浴びた魔王と勇者は……。
「なんだ……これ? 殺意は減ったがって……え?」
「ふむ。なんとも不思議な感覚だな。実際はこの姿が元だというのに」
「それは私には解らない感覚なの」
「お前は寝てたからな」
勇者は戸惑っている。色々と理由はあるのだが……それはさておき。
魔王は、今までまさに魔王! といった姿をしていた。角と羽を持ち、筋肉ムキムキの姿をした男だったのだが……今は、角も羽もなく、ただ黒い色を纏った男性のような姿という状態だ。
「さて、創造主様がお呼びだ。行くぞ」
「解ったの! それじゃ、勇ちゃん。それは祝福なの! 上手くつき合っていくと良いの!」
「ま、まて! 説明を!!」
説明を求める勇者を放置し、元・魔王と元・聖剣はこの場から消えて行く。
二人の話が本当ならば、この世界の創造主と言う者の下へと転移したのだろう。
「……一体、どうしろってんだこれ」
勇者が戸惑う。それも当然の話で……。
『気にしない気にしない。ほら今はこの後どうするか決めないと』
などと、勇者の脳内で、先ほど消えたはずの女魔族の声が聞こえたのだから。
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放置されれる系勇者(まて




