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十一話

注意:人の死が表現されているシーンがございます。ご注意ください。

 一人の男が居た。彼は森の中でハンターを生業としている者だった。

 勇者が彼を助けたのは偶々であったが、それが切っ掛けで友と呼べるほど親密に為ったのは、必然であっただろう。


 男は勇者に「ハーレムだけど、何がそんなに嫌なんだ?」と裏表なく質問し、勇者は他の人には言えなかった胸の内をこっそりと話す。

 これが他の者が相手なら、羨み流石勇者! と称えるだけだっただろう。そんな奴等に勇者が内心を話す訳も無く……どれだけ、この二人が親友と言える仲だったか解る話だ。


 しかし、それが勇者と男にとっての幸運でもあり不幸でもあった。

 勇者の話を聞く度に、男は色々な疑問を覚える様になった。

 勇者パーティーに男が居ないのは何故か? その女でも……もっとランクの高い冒険者が選ばれなかったのは何故か? などと言った事から、貴族や王家などの行動に対しての疑問まで、様々な事に疑問を持ってしまった。

 そして、疑問に思ってしまった事は知りたいと思うのが人だ。結果男は、勇者が顔を出さない日に色々な場所に訪れ、疑問を少しでも解消しようと努力してしまった。


 そうして居る内に、勇者は魔族との戦いが忙しくなり、顔を合わせる日も無くなってしまう。

 勇者からしてみれば、「アイツは元気にしているだろうか?」と、偶に思い出す相手なのだが……そんな男は、熱心に図書館や教会に酒場など、どんな情報でも良いからと色々な場所へと足を運ぶ日々。

 そして何と、男は一つの答えに辿り着いてしまう。だが、それはかなり危険な内容。自らすらも滅ぼしてしまう猛毒。

 なので男は、勇者が次に訪れる日までこの事は胸に秘めておこうと決意した。



 しかし、世界は無常である。



 男が決心してから数日後。

 その日は街の近くに集落を作ったオークを討伐した。そんな話題で街が賑わっていた。

 祝賀会だお祭りだと騒ぎ出せば、当然お酒が大量に消費される。お酒が大量に消費されると言う事は、それだけ酔っ払いが生まれる。

 そして、その酔っ払いはあろう事か、オーク討伐に参戦してかなりの戦果を上げた冒険者。

 しかしこの冒険者……実に酒癖が悪かった。




 翌日、一人の女性が命を絶った。

 男にとっては、よく顔を合わせる仲間ハンターの姉。彼女は酒場で看板娘をしていて、その酒場で仲間のハンターとどちらが獲物を取ったか、酒を飲みながら話していたのを笑って聞いていた女性だ。


 そんな仲間の家族の死で、顔もよく知っている相手。

 男は死んだ理由こそ知らなかった為、酒場で仲間のハンターを集め、彼女の死を皆で追悼していた。


 だが、運が悪い事に……この場にその冒険者が来てしまう。


 静かに、故人を思うように細々と店の隅で話をして居るところに、冒険者の馬鹿でかい笑い声が響き渡った。

 そして話し出した内容が、彼等にとって許せないモノであった。言葉にするのもおぞましい。そのような行為を平然と笑って話す冒険者。

 しかし、ここで切れて殴りかかっても返り討ちにあうのが落ちだと、全員が必死に仲間ハンターを抑える。

 後で教会や領主に訴えようと、その言葉を何度も繰り返しながら。




 怒りを抑えた彼等は、直に訴えに領主や教会へと足を運んだが……全てが門前払い。

 そして、耳にした言葉が「相手は英雄なんだ。お前等が我慢すれば良いだろう。まぁ、女性は運がなかったがな」だった。

 泣き寝入りしろ。其れが出来ないなら、貴様等は犯罪者の烙印をされるぞ。はっきりとは告げないが、間違いなくそう言われている。そんな対応に彼等は落胆した。

 こうして、泣き寝入りするしかなかった彼等だが、それが平民の日常だ。彼等はそれを受け入れるしかない。

 だが、それでも鬱憤は溜まる。そして、男は仲間のハンターよりも色々〝調べて〟しまった為、日常だからと納得できる訳がなかった。


 なので男は、様々な場所で内容をオブラートに包み、力とは何か、正義とは何かを訴えるので無く、聞いて回った。

 しかし、思った以上の成果が上がらない。男の鬱憤は溜まるばかり。



 そして、男は遂に口にしていけ無い事を言ってしまう。



 平民が権力について語れば聞いた者はそれに対して、クーデターでも企んでいるのでは? と思ってしまう。それが現実だ。

 故に、周囲で話をしていた者達は何も言わずに彼の側から離れて行った。

 そして数日後。彼は何者かに暗殺され、川で水死体として発見される。




「っと、俺の友はこうして〝権力者〟に殺されたんだよ。まぁ、奴は殺されるのを覚悟していたみたいだがな」


 そう言いながら、勇者はひらひらと一通の手紙を手にした。


「この手紙はな……奴が俺に残した物だ。ご丁寧に全容が書かれてたよ……まったく、馬鹿だよな」

「馬鹿って……それは無いんじゃない?」

「馬鹿だよ。死んだら意味が無いだろうが」


 死しても自分の意見を通す。その覚悟は凄まじいものだろう。だが、それも通ればの話だ。

 現状で言うなら、勇者の友がやった事は全て無駄。犬死だ。


「本当……もう少し待てば良かったのに。俺が数日後アイツの元に訪れるって連絡をしたんだからさ」

「……なんとも言えないわね」

「クラウンバード・ハンター・台所の権力者っと、何でかふと思い出したんだよ」


 男がやった行為は道化。男自信はハンター。そして権力者に奪われる。

 まぁ、何の関連も無い話だがな。と勇者は続けたが、今この地に居る理由なのだから、女魔族にとっては不思議な感覚を受ける。

 何せ、この事件が無ければ、勇者はパーティーを解散するだけで人が居る場所に残っただろう。

 逆に、パーティーメンバーがマトモならば、パーティーメンバーで断罪行為をしていたか、全員でこの地にいた筈。そうなると、女魔族は勇者パーティーに殺されていたに違いない。


「で、それ……如何するつもりなの?」

「ま、いつかは……な」


 口には出さないが、勇者の目は存分に語っている。絶対に仇を取ると。

 とは言え、今はこの場を動く気が無い勇者。一体彼は如何するつもりなのだろうか。

 彼自身、色々と考える事が多すぎて動きが取れないのは、仕方の無い事なのかもしれない。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。


まず、そういう人の世なのだという事をご理解して頂けると幸いです。

簡単に言ってしまうと世界観の説明の一つでもあったり。まぁ、勇者君が人と距離を置いた理由と同時になりますが。


因みに、女性に何があったかは名言しませんよ? ぼかしてますし。

そしてハンターの彼は……手紙の内容は現状出てませんが、死ぬ事が前提で後を勇者に色々と託したっと、そんな感じ。もし、死ぬ覚悟が無ければ貴族や信徒が居る場所で、馬鹿正直に話をしたりしませんからね。

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