十二話
「そう言えばお前……帰らなくて良いのか?」
「クーン?」
「いや、もふもふじゃなくて、お前だお前」
「あー……うん。帰らなくて良いかなー……あはは」
自分がこの地に居る話をした勇者だが、その話をしたからなのか、女魔族と此処で共同生活をする様になってから、彼女が一度も帰宅していない事に気がつき、どうして戻らない? と勇者が問う。
勇者からみれば、自分は戻る理由も無ければ戻りたくも無い。戻る場所など無い……むしろ捨てたんだ! と言う思いや事情があるが、女魔族にはその手の事情が無いと思っている。当然そう言った話を聞いた事が無いから、勇者には解らないと言うのが正解だが。
なので勇者は、女魔族に対して率直に聞く事にした。
「まぁ、戻らない理由も戻れない理由も無いんだけどね……この子を拾ったから、戻りたくないってのは有るかも」
「いやいや、それは後付けだろう? そもそも、この森に入った理由が何かあるんだろう?」
「あー……まぁ、有るといったらあるかな?」
「ふむ、何か言えない理由でも有るなら別だがな。ただ、戻れる場所があるなら一度顔を出しに良くのは有りでは無いか?」
そう告げる勇者。彼にはもはや、魔族が冷血非道な存在。その様な考えが遠い世界の常識になってしまっている。
それも、この子狼と生活する姿を見ていれば、どこが冷血なのだ! と言う考えで埋め尽くされてしまった。
そして、その事こそが勇者を人里に戻るという選択肢を排除して居る、その理由の一つになりつつあるのだが……。
それはさておき、女魔族には魔族の里に戻っても良いのだ。そして、また此処に来ても良いと勇者は言う。
その勇者の言葉に、女魔族は一瞬だけ笑みを見せた後、すぐさま表情を真剣なそれに戻した。
「私のそ……お父様がね。まぁ、それなりに有名なの。で、その有名な理由が武力でね。私達に「力をつける為にレベリングをして来い!」って、それでこの森に来たのよ」
「なるほどなぁ……武門あるあると言う奴だな。それにしても、私達って事は他にも居るのか?」
「そうね。他の兄弟姉妹もレベリングに出てるはずよ。ただ、此処の森じゃなくて似た環境の違う場所でやってるはずだけど」
勇者は気が付いた。違う場所にあるこの森と同じ環境の場所と言う事は、このレベリング育成は協力等ではなく競争なのだろうと。
そうなると出て来るのは、この女魔族が此処でまったりと共同生活をしていても良いのだろうか? という心配に似た思い。基本、勇者は勇者として選ばれるだけあり、余程の事が無い限りだが優しさに溢れている。ただ、その口から出る言葉は宜しく無い言葉遣いが多いのだが。
「最近レベリングに出ている姿を見ないのだが?」
「あー……うん。まぁ、ほらこの子もいるし? 少しはゆっくりするのも悪く無いかなって」
「ふむ。まぁ、手が欲しい時は言えよ? レベリングぐらい手伝ってやる。と言うか、俺は毎日やってるからな。それに付き合うぐらい問題ないぞ」
「あ……ありがとう。でも、この子がもう少ししっかりしてからかな? ねー」
「ワン!」
その言葉に、嬉しそうに尻尾を振りながら擦り寄る子狼。その姿に勇者は、なんだかなぁと思いながらも、口が楽しげに笑みを浮かべている。
しかし忘れてはいけない。彼は勇者で、彼女は魔族。本来ならば相容れない敵同士。
だと言うのにもかかわらず、勇者は絆され手伝おうとする始末。
この二人と一匹により、世界と言う規模で運命の歯車が狂いだして要るのだが、それに気が付いている者は誰一人として居ない。
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女魔族が居る理由のターン!




