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下克上戦士~バケモノ師匠と目指せ打倒勇者~  作者: 水草
第3部 勇者学園イーロタニア
24/72

5章 三下僧侶

ローラがジーンに決闘を申し込む少し前、ライザは前日に貰った手紙の通りに大講堂の裏へと向かっていた。

大講堂の出入口は二つしかなく、出ていこうとする生徒で溢れかえっている。その生徒の間を巧みな足さばきですり抜け、人混みを抜け目的地へと到着するとそこには既に四人の生徒の姿があった。男子三人に女子が一人、いずれもネクタイとリボンの色は赤色だ


「待たせてしまったようだね。これでもかなり早く来たつもりなのだけどね。」

「心配ない。俺たちが入学式をサボって待ってただけだ。」


四人のリーダー格と思われる男子が一歩前に出る


「それはいけないな。結構大事な話がされてたというのに。」

「関係ないさ。俺たちは事前に全部聞いてるからな、勿論、あんたのことも。」


そう言うや手袋をライザの足元へと投げる。決闘の合図だ。ライザはなんの躊躇いもなくそれを拾い、決闘を受ける


「それで、ルールはなんだい?」

「…本当なんだな、どんな条件の決闘(・・・・・・・・)でも受けるって話は。条件は俺たち四人と同時に決闘することだ。」

「いいだろう。」


四対一での決闘──そんな馬鹿げた条件をあっさりと飲み込む。その表情は自信に満ち溢れており、女子生徒が唾を飲み込む


「時刻は夕刻、場所は闘技場だ。」

「分かった。では学園見学を楽しんでくれたまえ。」


そのまま四人と別れ、自身の選択科目の教室へ向かおうとしたところ、大講堂前での騒ぎに気付く。近寄ってみれば人の輪の中心にいるのは彼女の弟子と金髪の少女、そして弟子の足元に落ちている手袋が目に映る。


それだけで状況を理解した彼女は好奇心に顔を歪め輪の中心へと向かう


「困っているようだなジーン。」


───────────────────────


「はぁ……」


授業見学の時間、俺が最初に見学することにしたのは剣術の実技授業だった。目の前では先輩方が打ち合いをしており、少し離れたところでは講師と高いレベルの打ち合いをしている生徒の姿も見える。本来ならばもっと見入るほどに打ち合いのレベルは高い、だがそれら全てがどうでもいい


「はぁ……」


再び大きなため息を吐くと他の見学の生徒に睨まれた。が、その目線すら気にならないほどに俺はあることに悩んでいた。


あることとは勿論ローラとの決闘だ。師匠に脅されて受けてしまったが本当にどうしようか。


気が付いたら授業は終了しており、先輩方も同じ見学も姿を消していた。ここに留まっていても何もないので他の授業を見に行こうと移動を始める


「……ここどこだ?」


悩みながら歩いていたので道に迷ってしまった。魔道の座学を見に行こうと思っていたのに自分がどこにいるのか完全に見失ってしまった


「くそっ、あのクソ師匠が…」


本来ならば師匠に案内してもらおうと思っていたがやることがあるとか何とかでどこかに行ってしまった。受けたくない決闘を受けさせるわ、放置するわでとんでもない師匠だ。


──いや、前からか


この際どの授業でもいいと思い近くの教室へと入ろうと戸を開き


「キエエェエエェエエアアァアァ!!!」

「シャッアアアァアァアアアアァァ!!!」


直後聞こえた奇声にすぐさま戸を閉じた。チラッと見えたがカーテンを閉じて真っ暗な教室で蝋燭を頭に付けた奴らが藁人形に何かをしていた。確か『祈祷師シャーマン』だったか?祈祷術によって味方を強化したり相手を弱体化させたりするがあれでは祈祷というより呪術を連想させる。


他の授業場所を探しに離れる。決して奇声を上げる彼らに危機感を覚えたからではない、役職適性のない祈祷術に用はないからだ。断じて彼らを生理的に受け付けないからではない。


結局道に迷ったまま昼休憩の時間となった。食堂へ向かう他の生徒に着いていき、注文を済まし席に座る。


学生生活というものはこういった時に友人と共に食事をするそうだが学生生活初日の今日はまだそんな友人はいない。唯一一緒に食べてくれそうな師匠も現れない。


まぁ人格破綻金髪錬金術師ローラに絡まれないだけマシだな。


そう考えて一人黙々と食べ続ける。今日のメニューは二枚の魚のフライに小さなサラダ、パンとスープの定食だ。サクッとした衣とプリっとした魚の身の食感が心地よく、スープとパンの相性もいい。故郷のベア村では質素な生活を送っていたため王都での食事はどれも驚かされるものばかりだ。


そんな食事を楽しむ俺の前にいつの間にやら人影が立っていた。


女子生徒用の制服に白のウィンプルを被り、十字架のロザリオかけている。俺の魚のフライをモノ欲しげに眺めており、口からは涎が垂れそうになっている


「俺に何の用だ?」


俺が問いかけるとビクッと反応し、口元の涎を拭う。チラチラと魚のフライに視線を送り、指をモジモジさせる


「いやー、ちょっとご飯を分けて欲しいなーなんて思ってないっスよ?」


変わらず俺と目を合わせることなく話す女子生徒。リボンの色は赤。そうだよな、先輩が初見の後輩に飯をたかるなんてことあるわけないよな。


いや、同学年でもあるわけないだろう。


「そうか、それじゃあな。」


目の前の女子生徒を無視し、最後の魚のフライを口に運ぼうとすると口から大量の涎を垂らし、じっと見つめてくる


「なぁ、そんなに見られると食いづらいのだが。」

「へあっ!?申し訳ないっス、気にしないで欲しいっス。」


そう告げると同時に女子生徒の腹がなる。羞恥から顔を真っ赤にし、両手で覆い隠す。


もしかしたら財布を忘れるか何かして学食を購入出来ないのかもしれない。しかし、俺と同じく入学初日で金を借りたりご飯を分けて貰える友人がいないのだろう。


目の前の少女の不憫さに同情の目を──向けることなく魚のフライを口に運ぼうとすると手首を掴まれ止められた


「ちょっと!ここは自分に分けてくれるところじゃないんスか!?」

「知るか!何で見知らぬやつに飯を分けないといけないだよ!」

「目の前で女の子が苦しんでいるんスよ!?見捨てるなんて紳士じゃないっス!」

「知るかよンなことは。友達にも分けてもらえばどうだ?おっといないから見知らぬ俺からたかろうとしてるのか!」

「友達がいないのは一人寂しく食べてるあなたも同じだと思うっス。」


掴まれた手首を凄い引かれるが力は俺の方が上のようだ。段々と魚のフライが口元へと近付いてくる


「はっ!誰が寄越すかよ!」

「ぐぬぬ…『筋力強化ラフォース』!」

「あってめぇ!汚ねぇぞ!」


少女の身体が淡い光に包まれ、腕力が一気に上昇する。あと少しまで来ていた魚のフライがどんどん離れ、少女へと近付いていく。


「貰ったっス。」

「甘いな。」


少女が勝ちを確信し、口を開けた瞬間、俺はフォークから手を離した。


フォークごと自由落下を始めるフライ。掴まれていない左手をフォークへと伸ばし、掴もうとする。しかし次の瞬間目にもとまらぬ速さで少女がフォークを掴む。気付いたときには既に遅く、魚のフライは少女の口の中へ吸い込まれてしまった


───────────────────────


「いやホントすんません。三日間何も食べていなかったんス。」


俺の眼下で正座をし、謝罪の言葉を並べる少女。さっきの騒ぎもあり、周囲の冷ややかな視線が突き刺さる


「土下座でも何でもしまスんで勘弁してくださいっス。」

「いや、もういいから立ってくれ。」


土下座をしやうとした少女を慌てて止める。これ以上は周囲の視線に耐えられない。立ち上がった少女は膝を手で払い、ようやく俺と目を合わせる


「自分は『僧侶』のレイナっス。得意なことは回復魔法とバフ魔法っス。まぁどこにでもいる普通の僧侶っスね。」


普通の僧侶は見ず知らずの人から飯を奪わねぇよ。


「あんた…レイナは何で飯をたかってきたんだ?」

「おっといきなり呼び捨てっスか。意外と大胆…すみません調子に乗りました。」


ふざけたことを抜かし始めたのでひと睨みすると土下座しようとするレイナ。再び周囲の視線が冷たくなったのでやめさせて事情を話させる


「自分、お金が無くてですね…この学園に来たのも学費が無料だっからなんスよ…それなのに学食と寮が有料なんて聞いてないっスよ。」


うわあああ!と机に突っ伏し泣き出すレイナ。この学園は王国の支援金で運営しているため学費は無料だが流石に全部が無料なわけないだろうが


「今日なんス!今日バイトの給料日なんス!明日お金は返しまスんで許して欲しいっス。」

「ちっ、しゃあねぇな。」


これ以上話していると周囲の視線に耐えられないのでレイナを逃がす。正直金はいいからもう出会いたくない、疲れる。この学園に来てからまだ二人だけだがロクなやつに出会わない。いや、師匠を含めれば三人か。まともなのはアイリーンくらいだ。


残りの昼食を食べようとするとパンとスープが無くなっていた


「あいつ『僧侶』じゃなくて『盗賊』だろ…」


出会いたくないと思ったが撤回する。今度会ったらお仕置きしないとな

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