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下克上戦士~バケモノ師匠と目指せ打倒勇者~  作者: 水草
第3部 勇者学園イーロタニア
22/72

3章 入学試験

イーロタニア勇者学園

かつて、魔族が人族領土に侵攻していた時代に魔族に対抗する戦力を育成するために創立された。魔王討伐を目的とする勇者、及びパーティメンバーの育成にも携わった伝統ある学園である。

魔族による侵攻が激減した現在でも多くの軍人や文官を排出している、まさに王国の希望である。


「王国の希望ねぇ…。」


入学試験当日、事前に配布されたパンフレットを読みながら試験開始を待っていた。場所は勇者学園正門前。周囲には同じく試験を受けようとする生徒で溢れかえっていた


「これから学園内に入ってもらいます。最初は筆記試験からです。戦闘職の方々は西棟、生産職の方々は東棟、魔道士系統の方々は別棟へと向かってください。」


台の上に立っている女性が魔道具を手に持ち指示を送っている。声を大きくする効果の魔道具だろう。女性の声は後ろの人にも伝わり、近くにいた受験者は全員耳を押さえている。


正門が開かれ次々と受験者が学園へと踏み入れる。門は巨大だが如何せん人数が多い、ゆっくりとしか進めない。まぁ焦ることは無いな。


人波に身を任せ流せるように進む。門を抜けると西棟と東棟に向かう者で別れ、少しだけ人口密度が減る。進みながら東棟へ向かう受験者を見てみたが向こうの方が人数が少なそうだ。


西棟入口で受付を済まし、指定された座席に座り筆記試験が始まった


『問一.魔道における五大属性を答えよ。』


これは簡単だ。師匠に口頭で教えられたしアイリーンの授業で習ったからな。

答えは火、水、風、雷、地 の五つだ。闇と光はこれらとは別の属性として分けられている。


試験の問題はどれも師匠やアイリーンから教えられたことが多く、次々と回答を記入していく。問題は進むにつれ難しくなり、終盤の問題はどれも学生が解けるとは思えない魔術論理の問題だ。運よくアイリーンが教えてくれたものが一つあったので回答を記入したところで試験が終了した


「くそっ!あんなもん分からねぇよ!」

「私中盤から解けなかった〜。」

「私も〜。」


回答用紙が回収され、静粛だった試験会場が一気に声で溢れた。学園の教員が現れ魔道具を使い新たな指示を出す


「次は実技試験です。それぞれの受験番号ごとに割り振られた試験会場に向かってください。」


試験会場が記された紙が張り出され、確認する。


俺の受験番号は257、最初の試験は魔力測定のようだ


混雑する前に一足早く西棟から抜け出し記されていた場所へ向かう。


到着するといくつもの長机が並べられ、それぞれの机に一つの水晶と一人の試験官がいる。そして一番乗りかと思っていたがどうやら別の受験者が一人いた。肩より少し下まで伸びた金髪を二つにまとめ、アイリーンのような紅眼に透き通るような白い肌を持つ少女だ。両腕を組み、堂々とした姿で試験官の説明を聞いている


「こちらの水晶に手を当ててください。それであなたの魔力(オド)の保有量を測定します。」

「手を当てるだけでいいのね。分かったわ。」


少女が手を当てると水晶が眩しく黄金色に光る


「これは素晴らしい。凄い量の魔力(オド)をお持ちで。」

「ギネス家たるものこれくらい当然よ。」

「ギネス家の方でしたか。これならば他の試験も余裕でしょう。」

「当たり前じゃない。この天才錬金術師、ローラ・ギネスに不可能はないわ。」


錬金術師か。西棟から一番早くやって来たはずだが東棟での受験者だったのか。それにしても『天才』か、慢心かと思ったが魔力(オド)の保有量からしてあながち間違ってはいないのかもな。実際に俺が触れた水晶は少女のように黄金色ではなく青色で、光もそれほど眩しくない


「はっ、所詮平民はその程度ね。平民は平民はらしく畑作業でもしてればいいのよ。」


そのまま次の会場へ向かおうと思ったところに例の貴族サマが罵倒を投げかけてきた


「パンフレットを読まなかったのか?この学園では身分なんて関係ない。国のために尽くそうという志を持つ有望な生徒が集う、そう書かれていたページがあったぞ。」


暇つぶしに読んだパンフレットの内容を教えてみたが少女は変わらずこちらを見下ろすように腕を組んでいた


「そんなの関係ないわ。それに、その程度の魔力(オド)で自分を有望な生徒とでも思ってるいるの?」


どこまでも見下してくる少女に苛立ち、険悪な雰囲気となる


「お言葉ですがギネス様、これ以上は試験が滞りますので…」


魔力(オド)なんて関係ないことを拳で分からせようと思っていたところを試験官の言葉で止める。見てみればぞろぞろと受験者が向かって来ていた


「ふん、まぁいいわ。どうせ試験に落ちるでしょうから。」


最後まで人を馬鹿にして立ち去っていった。方向からして俺とは別の試験会場であることに安堵する


「ムカつく野郎だぜ。人間性を調べる試験があれば間違いなく落第だな。」

「ないですよ、そんなもの。あなたも早く次の会場へ行ってください。」


ローラ・ギネスへの不満を漏らすと試験官に追い出された。


そのまま順調に実技試験をこなしていく。結果はどれも平均より少し上、やはり上級職には及ばない。唯一魔法試験は業火槍(フレイムランス)で他の前衛職に勝っていたが魔道士やその上位職など後衛職には及ばなかった。まぁ『普通』ってことだ。もっとも師匠たちとの修行がなければダントツで最下位だっただろう。


ローラ・ギネスが天才であるように俺は凡才、いや最弱職である以上凡才よりも酷いのかもしれないな


最後の試験を受けるために演習場へ向かう。

最後の試験は模擬戦、一対一タイマンの試合で能力を測る。演習場に到着し、自分の順番を待っていると呼ばれた。用意されていた武器の中から手頃な直剣を取る。刃は潰されており、致命打を与えられないようになっている。まぁ試験で死人が出ては問題になるか。呼ばれた場所へ向かい、さてさてどんな相手かと思い見てみれば見覚えのある金髪姿があった


「げ。」

「あら。」


出来れば二度と見たくなった顔、ローラ・ギネスの姿がそこにはあった


「お前錬金術師のはずだよな?生産職は模擬戦は無いと聞いているが。」

「無いからといって受けられないわけじゃないわ。志願すれば追加試験として受けられるのよ。試験がどれもつまらないものだったから暇つぶしに参加することにしたのよ。」


暇つぶしね。わざわざ受けるということは相当腕に自信があるのだろう。あれだけの魔力(オド)があれば魔法の腕も立つだろうな


「それにしてもあなた、魔力(オド)だけじゃなく運すらないのね。他の相手なら勝てる可能性があったのにわたくしとあたるなんてね。大人しく降参してお家に帰りなさい。」

「随分自信があるんだな。一パーセントでも(・・・・・・・・)負ける可能性がない(・・・・・・・・・)ってわけじゃないだろ。」

「そうね。じゃあその一パーセントの可能性とやらに祈るといいわ。」

「負けても吠え面かくなよ。」


剣を構え試合開始の合図を待つ、ローラは両手に何も持っていない。恐らく開幕と同時に魔法を打つつもりだろう。試験官が前に出る


「魔法、スキルの使用はあり、相手を必要以上に傷つける行為は禁止、降参か私の判断で決着とする。準備はいいな。」

「あぁ。」

「えぇ。」

「始めっ!」

「『稲妻(ライトニング)』」

「『防壁(シールド)』」


予想通り魔法を放ってきた。ローラが放ったのは雷属性初級魔法『稲妻(ライトニング)』、紫電は狙い違わず俺へと迫り、寸前で俺の展開した無属性初級魔法『防壁(シールド)」に阻まれる


「あら、少しはやるようね。」

「序の口だろ。」

「それもそうね、『稲妻(ライトニング)』」

「『防壁(シールド)』。っ────」


再び『稲妻(ライトニング)』が唱えられる。だが先程より威力が高い、魔力(オド)をより多く込めて放たれた『稲妻(ライトニング)』は障壁に衝突、一瞬の停滞の後に障壁が破られる。威力を見切り、既に回避行動をしていたため紫電が誰もいない空間を通過し、試験官が展開している結界に衝突する


「力の差は歴然ね、降参するなら今のうちよ。」

「言ってろ『火球(ファイアーボール)』」

「『防壁(シールド)』」


火の玉を放ち、あっさりと止められる。だがそれでいい。その間に間合いを詰めに近寄る、距離を殺しながら目を見開きローラの行動を警戒する。迎撃か、撤退か。魔法主軸として戦う以上、距離を詰めれば剣を持つこちらが有利だ。魔法を打ちながら後退するか、『防壁(シールド)』でその場しのぎしか出来ないはずだ


「何か忘れてないかしら。」

「なっ───────」


ローラは後退する素振りを見せず迎撃───しかしその手段は俺の予想を遥かに上回った。放たれる()の一撃を剣の腹で防ぎ、続く二撃三撃を後ろに跳んで躱す


「我ながらまぁまぁの出来ね。あなた相手なら十分だけどね。私は天才錬金術師なのよ?」


そう名乗りを上げるローラの手には一本の槍が握られていた。俺が間合いを完全に詰める前に、錬金術で地面から槍を錬成し、俺の間合いより上から迎撃してきたのだ


「なぁ、アレってありなのか?」

「ありです。」

「刃が潰されていないが?」

「死にはしないでしょう。」

「おい。」


試験官に確認をとるが何ともまぁ適当なやつだ。だが問題は槍の刃が潰されていないことではない。ローラの槍の腕が相当立つことだ。お嬢様のお遊びってレベルじゃない、鍛錬を積んだ者の槍だ


「どうするのかしら、魔法は私の方が上手、近付こうにも私の槍をかいくぐれるかしら?」

「さぁな、試してみないことには…よ!」


再び間合いを詰める。雨あられのように放たれる槍を避けて、防いで少しづつ近付く。だが距離を詰めるごとに槍の密度が濃くなる、あと一歩で間合いに入るがこれ以上詰めるのは不可能だ。無理やり踏み込もうとすれば後退されて凌がれるだろう。舌打ちをしながら下がり、間合いから抜け出す


「錬金術師のクセに随分槍が上手いな。」

「錬金術師でも努力すれば出来るのよ。」


くっそ、師匠みたいなこと言いやがって


「これで分かったでしょう?あなたじゃ私に勝てないわ。」


勝ち誇ったように胸をはるローラ


「あぁ。よーく分かったぜ。」


ローラの槍は師匠たちには遠く及ばないが普通にやりあえば勝ち目がない。魔法も魔力(オド)量からしてジリ貧だ。しかし、だからこそ分かる


「お前が戦闘の素人だってな。」

「なんですって?」


得意げだった顔が不機嫌なものに変わる


「お前は強い、俺よりもな。だけど俺には勝てない。さっきは一パーセントの可能性なんて言ったが俺が勝つ、百パーセントな。」

「『稲妻(ライトニング)』」


また『稲妻(ライトニング)』か、馬鹿だなぁ(・・・・・)。俺は半身になりながら横に一歩だけ動く。それだけで『稲妻|ライトニング』は俺には当たらない。ローラが体のド真ん中の正確に狙うからだ。俺は散歩でもするかのようにゆっくりと歩いて間合いを詰めていく


「『稲妻|ライトニング』、『稲妻|ライトニング』、『稲妻|ライトニング』…なんで当たらないのよっ!」


何度も『稲妻(ライトニング)』を唱えるローラ、しかしやはりどれも狙う箇所が同じだ。他の魔法を使ったり狙う箇所をバラバラにすればもう少しまともな牽制になるだろうに。


回を重ねる毎に俺の動きから無駄が無くなり、最小限の動きで躱し、槍の間合い一歩手前まで来ると『稲妻(ライトニング)』を唱えるのを止め、槍を構え待ちの姿勢をとる


そんな警戒しないで自分から一歩踏み込んで突きを放てばいいのに。やはりローラは槍の技術はあるが戦闘の定石を知らない。さっきも後ろに逃げる俺に踏み込んで追撃をしてこなかった。こいつの槍を攻めの手段ではなく守りの手段としか捉えていない


「そらよ。」

「ぐっ!?」


地面の砂を蹴りあげ目潰しをする。視界を奪われたローラが取った行動は見えない俺への突きだった。的確に俺がいた場所へと一歩踏み込んで放たれた渾身の突き、しかしそれは空を切るだけだ


「卑怯よ!どこにいるのよ!」


大声で叫びながら何度も突きを放つローラ、目を潰されたのなら音に頼るべきなのに自ら大声を出すのでは目もあてられない。最も、俺は今一切の身動きせず音を立ててないがな


ローラが突きを放つ方向は正しい、薙ぎ払いで全方位確かめるのもいい判断だ。だがそれらは今目の前で伏せている俺には決して当たらない。ローラの槍は『稲妻(ライトニング)』同様狙いが同じ場所ばかり、厳密には胴体しか狙っていない。腰より下も頭も狙うつもりがない。脚を刺せばそれだけで勝負は決まるというのに。そんな槍では伏せている俺には絶対に当たらない


「よっと。」

「きゃあ!」


伏せたまま少しだけ近付き、足を掬って倒す、そのまま立ち上がって剣を突きつける


「そこまでっ!」


試験官が決着の合図をする。ようやく視力を取り戻しだしたローラが紅眼で睨んでくる


「こんなの認めないわ。こんな───」

「卑怯な手、とでも言いたいのか。」

「そうよ!目潰しなんて姑息すぎるわよ!」


あぁやっぱりこいつは素人だ。いくら才能があり技術があろうとこいつの戦闘は子供の遊びとなんら変わらない。眼下の少女の哀れさに大きなため息を吐く


「なぁ…それを実戦でも言うつもりか?」

「え?」

「勝負に汚いもクソもないんだよ。それにお前が勝つ方法はいくらでもあったさ。なぜ『稲妻(ライトニング)』しか使わない?他の魔法も組み合わせれば良かったしお前なら中級魔法だって使えただろ。狙う箇所も同じ場所しか狙わない、それだから俺程度に簡単に躱されるんだよ。」

「───────」


黙って俺の話を聞いているローラの目には恐怖の色、お遊びじゃない本当の命の取り合いに慣れている俺への恐怖が映っていた。


まぁ俺のしてきた命懸けの試合は死んでも死なない『悪夢(ナイトメア)』の中でのことだが


「でも……私はこの槍で魔物を何体も仕留めたわ!先生にも褒められていたのに…」

「あぁお前の槍は凄かったよ。まともに打ち合えば俺が負ける。」

「ならどうして…」

「お前が攻めてこなかったからだ。お前が待ちに徹さず攻めて来ていれば勝てていたのさ。」


実際俺は捌くので精一杯だった。『世界観測(オーバーワールド)』を使えば打開出来たかもしれないが失敗すれば魔力(オド)が枯渇し負ける。結局この試合は俺の経験勝ちだ。相手が無さすぎただけだが


「次の試合を始めますので退場してください。」

「あぁ、すまん。ま、そういうことだ貴族サマ。」


試験官に催促されたので手を振り立ち去ることにすると背中に震えた声がかけられる


「ま、待ちなさい。あなたの名前を教えなさい…」

「断る。」

「なっ──」


相手は貴族だ。学園内はともかく学園の外だと金と権力に任せて何をされるか分かったもんじゃない


「つ、次は負けないわよ!覚えてなさい!私の名前はローラ・ギネスよ!」


負け惜しみのように叫ぶローラに俺は振り返りもせずに立ち去る。ローラが悔しがっているのはただ負けたからではないだろう。他の試合をチラ見するが俺よりも強い奴らがゴロゴロいる。あいつは明らかに格下の俺に負けたことが悔しいのだ


「覚えててやるよ、お前のお陰で俺の合格は確実となったからな。」


誰にも聞こえない独り言を呟く。これで俺の試験は全て終了。合格発表は明日なので師匠の家に帰るだけだ


「いい試合だったよジーン。」

「なんだ見てたのかよ師匠。」


演習場の外側で待っていたのは赤髪と碧眼の少女、師匠だった


「入学試験はどうだったんだい?」

「そうだな…やっぱり身体能力と魔力(オド)の差だな。限界を超えて存在進化(レベルアップ)をしているはずなのに平均レベルだった。」

「そう気に病むな。普通の戦士であれば平均を大きく下回るのだからな。修行の成果は出ている。これからも努力を重ねればジーンはもっと強くなれる。なにせ私が師匠なのだからな。」

「ソウダナー。」


二人で家へ帰り、アイリーンに出迎えられる。食事と風呂、トレーニングを済ませてベットに入る。


やれることはやったのだ、合格できるか不安で眠れないなんてことは無く、グッスリと眠ることができた。

忙しくて週一投稿が出来ませんでした。これから忙しくてなるので週一投稿が厳しくなると思いますが何卒応援していただけると幸いです。

そしてこれを書き、間違いが無いか確認しているとルビの振り方を全部間違えていたことに気付き全部直す羽目になりました。このままではあかん!ワイ!

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