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神獣使いではなく猫使いです  作者: 猫屋敷 春人
第五章 白銀の大地

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第七十一話 揺らぐ封印

本日3話目の投稿です。

石碑の奥に現れた巨大な黒い眼は、ゆっくりとレオンたちを見渡した。その瞳には感情というものが存在せず、ただ底知れない悪意だけが静かに渦巻いている。視線が向けられただけで祈りの間の空気は凍り付き、胸の奥を掴まれるような圧迫感が全身を襲った。それは今まで戦ってきたどの魔物とも比べものにならない存在感だった。


「これが……」


ミアは思わず息を呑む。


「封印の中にいるもの……」


巫女は静かに頷く。


「まだ、その一部です。本体は封印のさらに奥に眠っています」


その言葉にレオンは石碑を見つめ直す。目の前にあるのは倒すべき敵ではなく、決して目覚めさせてはいけない災厄だった。もし封印が完全に壊れれば、この白銀の里だけでは済まない。そんな予感が胸の奥で静かに膨らんでいく。


黒い眼がゆっくりと瞬きをする。


その瞬間、石碑から無数の黒い光線が放たれた。瘴気をまとった光は蛇のようにうねりながら祈りの間を駆け巡り、白銀の結界へ次々と突き刺さる。結界は大きく波打ち、白銀の番人は苦しげに唸りながらも、その場を動こうとはしなかった。


「……左」


クロが低く告げる。


巨大な影神猫の姿が闇へ溶け込み、次の瞬間には黒い光線の死角へ現れる。鋭い爪が一閃すると、光線は途中から断ち切られ、黒い霧となって霧散した。しかし一本を断てば、その倍もの光線が石碑から溢れ出してくる。


ライは雷をまとった拳を大きく振り抜き、迫る光線をまとめて打ち砕く。砕け散った瘴気は稲妻へ飲み込まれ、激しい雷鳴が祈りの間へ響き渡った。それでも黒い眼は微動だにせず、静かにレオンたちを見つめ続けている。


「終わりが見えないね」


アカネは神炎をまとった尾を大きく振るう。


燃え上がる炎は黒い光線を包み込み、その一本一本を焼き尽くしていく。炎と雷、そして影が互いを支え合うように戦う姿は、まるで三つの理が一つになって災厄へ立ち向かっているようだった。


その光景を見つめながら、ミアは胸へそっと手を当てる。


「まだ……届いてない」


白銀の番人を包む生命の光は確かに強くなっている。けれど、石碑の奥にいる存在には届いていないことを、本能が告げていた。


巫女は静かに目を閉じる。


「生命の理だけでは足りません」


その言葉に、レオンは仲間たちを見渡した。


雷、影、炎、生命。


四つの理は今、この場所に揃っている。


それでもなお足りないという現実が、静かに胸へ重くのしかかる。


その時、石碑の前に立ち続けていた白銀の番人がゆっくりと振り返る。


黄金色の瞳は真っ直ぐレオンを見つめ、小さく喉を鳴らした。


まるで、「まだある」と伝えるように。


次の瞬間、白銀の番人の額へ淡い氷色の紋様が静かに浮かび上がった。


閲覧ありがとうございました。誤字脱字などありましたらご報告の程お願いします。

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