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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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フォレストウェーブ・エピローグ・後日談③そしてプロローグ。


名前を付ける。

前世の記憶でもこの世界でも『名付け』の重要性は同じだ。

理解しているからこそ戸惑う。


「僕がですか……僕でいいんですか」

「はい。ぼくのなまえを付けてください」

「ほほうほほう。これはこれは重大だねえ」


魔女は愉悦とニヤニヤしている。

おのれ。他人事だと美酒は美味いか。美味いよなぁ。


「名前……か」


名前を付けたことは実はある。

ただし前世だ。

前世の記憶で犬の名前を付けたことがある。


「ネキア」


ぽつりと言う。


「ネキア。それがぼくの名前……?」

「はい。どうでしょうか」

「ネキア……ネキア……」

「どうかな。嫌かな?」

「とんでもない。ネキア。なんだか心に伝わる想いがあります。とっても気に入りました。ぼくは、今日からネキアです!」


どうやら喜んでくれたみたいだ。


「ほうほう。ネキア。良い響きだねえ」


魔女も太鼓判を押す。


「ええ、とっても嬉しいです。ありがとうごさいます。ウォフ君」


ハイヤーンボディ改めてネキアはニッコリと微笑んだ。

ちょっとドキッとするぐらいの魅惑的な笑顔。


実はネキア。

前世の記憶にある煙草屋のばあちゃんちの猫の名前だったりする。

なんかこうその猫にほわっと似ていたからつい口に出てしまった。


なお猫の名前の由来はフェニキアらしい。

それが訛ってネキアになった。


なんでフェニキア? フェニキアって地方だよな。

しかも大昔の……わからん。


それより―――本当に叶えてしまった。

叶えられてしまった。

あのとき、白い球だった女王の願いは『人間になりたい』だった。


ずっとずっと夢見ていた国民の姿にヒトになりたい。

生まれ変わったら人になりたい。


普通なら無理だ。神ならば叶えられる―――そういうレベルの願いだった。


だけど僕にはそれを可能にしてしまう。

空っぽの身体とフェニックスの蘇生卵があった。

あってしまった。


そしてあったがゆえに成功してしまった。

いやそれは良い事なんだけど、こうもすんなりうまくいくと、返って不安になる。

それだけのことを平然としてしまったんだ。


「ネキア。ネキア。ネキア。ぼくのなまえですっ」


ネキアは無邪気な笑みで自分の名前を連呼している。

どこか子供っぽくて、大人の身体とのアンバランスさが妙な色気を出していた。

あれだな。メガディア激似だからついつい彼女が重なってしまう。


「さてさて、ネキア。しばらくはコンに付き合ってもらうねえ」

「……どなた?」


そこでネキアは魔女の存在に気付いた。

今まで意識して無かったのか。


「おやおや、そうだったねえ。初めまして。魔女だねえ」

「…………ウォフ君」


魔女の自己紹介。

困っているような目線を僕に向けるネキア。


「大丈夫。僕の師匠です」

「うんうん。そういうことだから従ってもらうねえ」

「……ウォフ君」


魔女の言葉にうるうると瞳を潤ませて僕を見る。

僕は苦笑した。


「ネキア。大丈夫だから。それで魔女。付き合うというのは?」

「ふむふむ。こういうときはしっかり身体と魂が定着したのか経過を見ないとねえ。まあフェニックスならその心配はないけど、万が一もあるからねえ」

「なるほど。ネキア。いいかな?」

「…………わかりました。そういうことなら、ぼくも協力しましょう」


分かってくれたみたいでホッとする。


「どうもどうもだねえ」

「あっ、すみません。始めまして。ネキアです。女王です」


ぺこりと頭を下げる。


「うんうん。よろしく。それとそれと、まあ、ネキアの姿は目立つからねえ」

「ぼくが目立つのは女王だからですね」

「それもそれもあるねえ。女王って肉体だからねえ」

「まぁ確かに……」

「まあまあ、実はその体を使っていたのが居たんだねえ。そいつが色々と目立つことをしていたからねえ」

「ああ、ラァダ……」


すっかり忘れていた。そうだった。ラァダに間違えられる恐れがある。

いや確かにラァダの身体だったときもあるから間違いではない。

だけど今は間違いだからな。ううーん。複雑で誤解を解くのが難しい。


「まぁまぁ、その辺はいくらでもどうにでもなんだけど、ジンリュウの残党には命を狙われるかも知れないねえ」

「狙われる……ぼくの身体の元の持ち主はそのような人物でしたか」


ネキアはちょっとショックを受けたような様子を見せる。


「ま、まぁ色々と」


ラァダに関しては詳しく説明できる自信がない。

俯いてしまうネキア。こればかりはすまん。


「だからだから、ちょっとここで大人しくしていて欲しいねえ」

「……色々と納得が出来ませんが……事情がそうならば、仕方ありません」


弱弱しい声だけど分かってくれて良かった。

ネキアにとっては理不尽だけど、こればかりは仕方がない。


「少しだけ我慢してくれたら自由になれるはずだから」

「はい。あなたたちを信じます」


淡く微笑むネキア。

後は魔女に任せ、僕は予定通り『トルクエタム』に会いに行く。


今の時間なら借りている家に居るはずだと教えてもらった。

朝にパキラさんと会ったけど、実は彼女に渡すモノがある。


ハルスさんから預かった手紙だ。

色々とあって存在を完全に忘れていた。


さっきフェニックスの蘇生卵を出したとき、たまたま手紙を見つけた。

それで思い出せた。


だからまた忘れないうちに渡しに行く。

そこに向かっている途中。


「久しぶりね。ウォフ。元気だったかしら? うらはもちろん元気よ!」


あっはい。

大神殿の『ジェネラス』の少女像の間に僕は居た。


その手前でナーシセスさん不敵な笑みと共に腕を組んで、仁王立ちしていた。

前と同じ装束だ。巫女の恰好だっけ。


「まあ、それなりに元気です」

「それならいいわ。おめでとう。ダンジョンの異変、討伐したわね」

「倒したのはナベルさんです」

「そうなの? それでも依頼は達成されたわ」

「そうなんですけど、僕はあまり役に立たなくて」

「そうなの。でもそういうこともあるわ」

「そうですね」

「それでは約束通り、船をあげるわ。良かったわね!」


船……あー、忘れていた。まあ、それはいいとして。

こうして来るのは実は予想していた。その為の本題を話そう。


「あの、ひとついいですか」

「いいわよ。なにかしら?」

「普通のダンジョンやりませんか」

「普通の? なにそれ。それはいったいどういうこと。へえー面白そうね!」


相変わらず我が強いナーシセスさん。

僕はずっと考えていた。頭の中でまとめた言葉を言う。


「地上型のダンジョンを辞めて普通の地下にあるダンジョンをやりませんか」

「それはどうして。面白い。いいわね。やりましょう!」


ナーシセスさんならそう言うと思った。

絶対に意思を無視して勝手に同意すると思った。

だけど決めてするのは意思だ。


「ええっと理由を申してもいいですか?」

「ええ、いいわよ」

「地上型ダンジョンのバランスが崩れたとき、僕は、空に転移させられました。正直、死ぬかと思いました。同じことがまた起きたとき、次は確実に死人が出ます」

「でもダンジョンで死人は珍しくないわ」

「それはそうです。ですが魔物に殺されたりトラップで死ぬ覚悟はあります。だけどダンジョンの不具合で殺される覚悟なんてありません。理不尽です」

「それもそうね」

「それにゴミ場もあのままにしておくのはさすがに」

「それもそうね」

「だから普通のダンジョンをハイゼンに造りませんか」

「いいわよ。つくるわよ!」

「よかった。ありがとうございます」


これでハイゼンに普通のダンジョンが出来る。

ダンジョンの意思が承知したからこれでもう安心だ。


「というわけで早速だけどウォフ。あなたにハイゼンのダンジョンの意思からまた依頼をするわ」

「へ? 依頼ですか」


なんだ急に?

するとナーシセスさんはフッと笑った。

このひと意味も無く不敵に笑うこと多いよな。


「依頼は、このハイゼンに立派なダンジョンを造りなさい!」

「え……え?」


僕はぽかーんとする。

依頼!?


「いやいや、あの、それはハイゼンのダンジョンの意思さんが造るのでは?」


なんかこうパッパッパッと意思の元に作成されるとか思っていた。

だから簡単に提案したんだけど。


「それが出来ていたらとっくにしている。それもそうね!」

「えぇ……出来ないんですか」

「出来ないの? やり方をしらない。それなら仕方ないわね!」


知らないって……マジか。

でもそうだよなあ。出来たらもうやっているよなぁ。


「ウォフ。ダンジョンの異変を鎮めし者。あなたならきっと出来るわ。そうね! ウォフなら出来るわ! うらが認めたんだもの!」

「…………いや、さすがにダンジョンは……」

「もちろん依頼の報酬は、とてつもないモノを用意するわ。なにかしら? えっ秘密? とっても楽しみねっ!」 

「……あ、あの」

「必要なことがあるのなら協力します。ですって!」

「それはまあ、いやでもやっぱりダンジョンはいくらなんでも」

「うらも応援しているわ! 出来たら呼びなさい。うらがそのダンジョン攻略してあげるから、いいわね! じゃあ、次に会うときはダンジョンよっ!」

「えっ、ちょっと!?」


元の路地に戻る。

僕は愕然とした。ま、マジか。


僕ダンジョン造るのか。

















数日後。

街から離れた森の中にある洞窟。


「やっと着いた。ここでゲスか」


『千面相』は周囲を見回す。

今は本来の姿なので怪しい鳥の仮面に黒いローブ姿だった。

腰には白い剣が提げられている。


「なにもないっスね」


(そうでもないぞ。ゲスオ。あれを見ろ)


相棒もとい愛剣の柄が勝手に動く。まるで何かを示すようだ。

そのほうを見ると、何か落ちていた。


「あれは、まさか!?」


気付いて駆け寄る。それは欠けた赤い仮面だった。

色褪せて汚れ所々が黒ずんでいる。


(間違いない。この仮面だ。忌々しい……この赤い仮面だ!)


「これが追い求めていた……赤い仮面……その仮面だけがあるって、どう考えても本人は無事じゃないでゲスよね。それってつまり…………ビッグスはもう」


『千面相』は、わなわなと震えた。

考えたくはない。一度は頭に過った。最悪で最低な結末を考えたくはない。


(ゲスオ。仮面だけだ。だから本体が生き延びた可能性は否定しない。だが、これはもう……おそらく死んでいるだろう。この仮面の劣化具合から、かなり前だな)


「そ、そんなのってあんまりでゲスっっっ!!!!」


膝から崩れ落ちる『千面相』。

その悲壮な叫びが洞窟内で木霊した。


かくして赤い仮面の男。

全ての元凶で黒幕だったビッグスを巡る依頼はここで終了となる。


おつかれさまでした。




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