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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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フォレストウェーブ・エピローグ・後日談②

後日談は続く。

『ケルベロスターン』のことだ。

とても大変だったらしい。


フォレストウェーブに参加したコランさんとプランシーさん。

彼等はセカンドウェーブでそれぞれ死にそうなった。


だけどエリクサー・魔女の水で全回復。最後まで生き残ることができた。

渡しておいて良かった。

でも何も知らないから3人で魔女にお礼して、魔女の水という名称がバレました。


巨大蜘蛛を倒したのはナベルさんだった。

代償で蜘蛛切を失ったが、ナベルさんは何かを得たみたいに変わったという。


一皮剥けたってヤツかな。

それで少し困ったことがある。


『ケルベロスターン』の3人は何故か僕にとても感謝しているという。


僕は特に何かした覚えはない。

むしろ今回は大きくミスして皆に迷惑をかけてしまった。


それで……余ってしまった。

【ディメーションクラック】が1回分。


レッドストーンが1個あれば1回だけ使える。

何か役に立つかも知れない。


さて次だ。ガラドさんはハイゼンを出て行った。

ジンリュウ家を復興する気は全く無く、支援者や協力者や親族を全て袖にして。

探索者になる―――そう言って出て行った。


彼らしい。

ガラドさんなら立派な探索者にそのパーティーのリーダーになれる。

いつかどこかでまた会うことがあるかも知れない。


ホッスさんは、ベルク食堂にいる。

給仕バイトのサマーニヤさんと一緒に開店準備をしていた。

ルマさんは明日、復帰する見通しだ。


後は、大切なことがふたつ残っている。

ひとつは魔女に尋ねてみる。一通り、事情を話してみた。


「ほうほう。それはそれは、また面白いことをしようとしているねえ。それなら可能だねえ」

「本当ですか」

「うんうん。本当だとも。それで今もウォフ少年の中にあるのかねえ」

「はい。います」

「ふむふむ。本来、魂の器にあるのはひとつの魂のみ」

「え」

「まあまあ、ウォフ少年だからねえ。例外もあるねえ」

「……その、僕の心の中でカードゲームやっている連中がいるんですけど」

「それはそれは、なかなか愉快なことになっているねえ」


魔女は楽しそうに笑う。


「篭手の左右がそれぞれ人の形になっているんですが」

「さてさて、それならさっそく始めようかねえ」


魔女は誤魔化すように立ち上がった。

いったい篭手に何を使ったんだ?


「さっそくって、まだ許可は」


元の持ち主本人の許可はとっていない。


「ああ、ああ、それはいらないねえ」

「えっでも」

「ねえねえ。ウォフ少年。ちょっと考えてみてごらん。それが例え本人だと、本当にそうだとしてもだねえ。現在まであるほうがむしろおかしいからねえ」

「そ、それは確かに」

「だからだから、他人の空似で通せるねえ」

「強引過ぎる」


だけどまああの身体は何千年前の代物だ。

現存しているのがむしろおかしい。


それに本人は自分の身体をあまり好きじゃないみたいなことを言っていた。

うんよし。黙って使えば怖くない。バレたら謝ろう。


倉庫の中にある真っ黒い巨馬車の特注車両・『スキアー・コフィン・エレ』。

その2階の奥のベッドに眠るようそれは安置されていた。


ハイヤーンボディ。あのハイヤーンの本来の身体だ。

腰下まで艶やかに流れる真っ黒い髪。褐色の肌。


子孫であるメガディアさんそっくりな容姿だけど身長は普通だ。

ただし女としての肉体的な魅力は抜群で、思わず見惚れてしまうほどの美女だ。


とてもハイヤーンの元の身体だとは思えない。

今も正直、信じてはいない。


世の中には信じていいコトといけないコトがある。

これは間違いなく信じてはいけないコトだ。


「それで、えっと、どうすれば」

「ふふっ、ふふっ、ウォフ少年。古今東西、眠れる姫を起こす方法はなにかねえ」

「…………水をぶっかけるですかねえ」


いやいや、嘘だろ。冗談だろ。


「あっはは、あっはは、面白いねえ。魔女の水より面白いねえ」


爆笑された。

もちろん分かっている。


「いやいや、それはダメですって! さすがに洒落にならないですって!」

「おやおや、おや、とても簡単だよ。フェニックスの蘇生卵をちょいと口に含んで、この死体の唇と重ねて流せばいいんだねえ」

「死体って言うのやめてください……冗談ですよね?」

「まあまあ、これで成功率は確実になるんだけどねえ」


マジか。いやでもさすがにそれは……いくら凄い美女でも……抵抗がある。


「要するに彼女にフェニックスの蘇生卵を飲ませればいいんですね」

「まあまあ、そうなるねえ」


ちょっとつまんなそうに魔女は頷く。

僕はジト目をしてからフェニックスの蘇生卵を取り出した。

見た目は卵型なのでエリクサーの神聖卵に似ていた。


ただし金色の古代文字は光加減で赤く燃えるように映る。

それが卵全体を赤くみせていた。まさにフェニックスだ。


開閉もエリクサーと同じだ。

卵の中にたぷんったぷんっと液体が入っている。


「……唇に」


紅色の……鮮やかな色をした少し厚い唇。

褐色の肌に際立つ。


「ほらほら、ほんのたった一滴でいいんだねえ」

「……これ開けるんですよね」

「もちろんもちろん。そうだねえ。じゃないと飲めないからねえ」

「……僕が?」


複雑な表情をすると、魔女はニッコリと微笑む。

ですよね。意を決して、唇に触れる。柔らかい。それと……冷たくない。


「なんで暖かいんだ?」

「それはそれは、死んでないからねえ」

「えっでも」

「ただただ、身体から魂が抜けただけだからねえ」


それを死んでいるというのでは?

まあ、いい。続けよう。唇を……う指で開けて歯を開けるともうわぁっ顎が動く。


生暖かい……口内……なんだか寝ているひとに悪戯しているみたいだ。

妙な背徳感を覚える前に僕はフェニックス蘇生卵から一滴、妙に赤い液体を落す。

ハイヤーンボディの口の中に確かに入るのを確認する。


「これでいいんですか?」


何も起きないので魔女に確認したそのとき、僕の中から何か抜けていった。

そして唐突に、ホント突然に、ハイヤーンボディがパチッと両目を開けた。


少し青掛った紫の瞳だった。

じろっと僕を見る。


「っ!」


思わず怖くなって後ずさる。

魔女は尋ねた。


「やあやあ、始めまして。自分が誰か分かるかねえ」

「はじめまして。はい。女王です」


女王ってことは成功!?


「は、はじめまして」

「あの、ぼく。人間ですか。何か色々と変です」


ゆっくりと起きあがった。

それから自分の手を見たり顔を触れたりして確かめている。


「うんうん。間違いなく人間だねえ」

「よかった。ウォフ……君」

「は、はい」

「ありがとうございます」

「ど、どういたしまして……」

「それであの、いきなりですが、ウォフ君にお願いがあるのです」

「なんです?」

「ぼくに名前を付けてくれますか」


名前……僕が?




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