166 本音をばらす双子と過去を語るマーナー
ゲッティの格上げの為の合同研究です
「ゲーマーお姉様、今回のこちらの狙いですが、バーミンの名前を使ったゲッティの格上げです」
合同研究の為に訪れたカーレーの挨拶後の第一声がそれだった。
「それをはっきり言う? もう少し言い方があったんじゃないの?」
私がそう言って見るとターレーが苦笑していた。
「そうかもしれませんが、嘘は、言っていないのです」
ターレーがそう言うという事は、駆け引きでこう言っている訳じゃないって事だろう。
「それを手伝ってバーミンに何かメリットがあるのかしら?」
私の問い掛けにサーレーが不思議そうな顔をする。
「今回の合同研究自体がメリットだと思っていたのですが? バーミンがメリットを感じないのでしたら、他の方法を考えますのでそういって下さい」
サーレーの性格から考えてハッタリじゃない。
本気で別の方法を考えるつもりなのだろう。
実際の所、今回の合同研究テーマである同着魔法は、先のダータスを含む三領地合同演習に参加していた出向中のバーミンの研究者から報告が上がっている、こちらでも急ぎ研究しなければいけないと言われていた案件であった。
メリットがあるのは、確かである。
「それにしたってそれを態々いう必要は、感じないけど」
「どうせ引き抜きしようとするだろうから先に釘を刺そうかと思いまして。合同研究終了後に時間をとりますからその時にして下さい。まあ、それをされる事でゲッティの格が上げる予定なんですけど。言っておきますが、ゲッティがそれに応じないって自信があるから言っていますから応じなかったからって文句は、受け付けません」
カーレーが完全にオープンで交渉してきた。
「こちらが引き抜き交渉を行わないって可能性は、考慮しないの?」
私の指摘にサーレーがあっさり頷く。
「そんな考慮をするレベルでしたら、最初からこんな方法は、検討しません」
「随分と自信ある見たいね?」
再びターレーを見る。
「そうですね。それだけの結果を出していますから」
ターレーも認めている以上、それなりの人間らしい。
「それじゃああちき達は、館をウロチョロしています」
カーレーがそう言うので私が首を傾げる。
「貴女達は、参加しないの?」
「参加させたら余計な騒動になると判断したので、マーナー伯父様に許可を頂き、散歩させる事にしました」
ターレーが疲れた顔をしている。
そこに居るだけで問題を起こす面白い従姉妹達である。
先程の会話を父に報告した。
「面白いな。それよりも、解っていると思うが、上手く例の魔法の件も引き出すんだぞ」
父の言葉に私が頷く。
「魔法発動阻害魔法ですね。中央に報告するつもりだから、今回は、研究対象から外されていますが、ヒントだけでもなんとかしてみせます」
「それにしてもあの双子そこまで言う人材か、調べさせておくか」
報告も終わり、私は、合同研究が行われている部屋に向う。
研究室に着くと、一人、身形が劣った者が居る。
貴族でない事が一目で解る、それがゲッティだった。
何人かが不愉快そうな視線をしているが、多くの者がその説明に目を輝かせて居た。
私は、その輪に加わっていた者の一人を捕まえて状況を確認する。
「どうだ?」
「面白いです。私達は、魔法の効率化、高性能化に重点を置いた研究をしていた為見逃して居た点、発動時間の違いや速度の調整に関わる呪文や魔法方程式の変更を使い、魔法を同着させて威力を高めるのは、色々と応用が利きそうです」
嬉しそうな声でそう報告され私も納得する。
確かにバーミンでは、魔法の効果を高める研究は、されているがその逆は、されていなかった。
面白い研究テーマになるだろうと、観察していたのだが、私は、ゲッティというのは、偶々面白い発見をした研究者と考えていたが、そんなレベルでは、無かった。
こちらの研究を概要を聞いて、そのどの部分が魔法の速度や発動に関わるかを解析を行い、そしてすぐさま呪文を組み上げ、イメージの構成、魔法方程式を書き上げた。
マホコンで魔帯輝を導き出して、直ぐに想定通りの結果が出て来たのだ。
最初の内は、平民と馬鹿にしていた者達も、本格的に研究にのめりこんで来るのであった。
「一週間という短い合同研究でしたが、大変有意義な物でした。ありがとうございます」
頭を下げてくるゲッティを父の執務室に連れこんで来ている。
「君が上げた成果については、ゲーマーから聞いた、素晴らしい才能だ。ソーバトでの現状は、聞いている。魔法研究の基礎もろくに身に着けていないのに関わらず、君を見下す貴族と研究させるのは、魔法研究に対する冒涜であり、ミハーエとしての損失である。ここでミハーエの未来の為に研究を続けないか?」
「勿体無い評価を頂きありがたく思います。しかし、私は、ソーバトの人間としてソーバトからミハーエの未来を作って行きたいと考えております」
そう真っ直ぐな瞳で応えるゲッティに本当に残念そうな顔をする父。
「そうか。実に惜しいが君の考えは、変わらぬだろうな」
「はい」
即答するゲッティに父は、頷く。
「気が変わったら何時でも連絡をして欲しい。直ぐにこちらから迎えを送ろう」
父は、そう言ってゲッティを解放する。
「こんなに簡単に開放して宜しかったのですか?」
私の問い掛けに父は、眉を顰める。
「あの双子が、引き抜き交渉を許すだけの事は、ある。確りとした信念を持っている。あれを言葉だけで崩すのは、難しい。じっくりと時間を掛けて交渉を続けるつもりだがな」
まだ諦めて居ない様だ。
そんな時、カーレーとサーレーが一人の兵士見習いを連れてきた。
「マーナー伯父様、この人をソーバトに下さいませんか?」
戸惑う兵士見習いを見て父が尋ねる。
「何が気に入ったのだ? 正直に答えてもらおう」
カーレーが視線を向けるとサーレーが少しだけ迷っていたが応える。
「僕の育った国の言葉に『門前の小僧、習わぬ経を読む』ってあるんですけど、この人は、館に居る研究者達の会話を聞いて、魔法研究の基礎を覚えて、自分で開発してたんですよ。独学でここまで出来るんだったら、ソーバトに連れて行ってもきっと大丈夫だと思うんです」
それを聞いて父が幾つか質問をすると、その兵士見習いは、戸惑うところもあったが見事に答えていった。
その上で、兵士見習いが開発した魔法を見て父は、一言。
「自分の所の人材の引き抜かせないで、人のところの人材を引き抜くのは、止めて貰おうか」
「えー、兵士としての代えだったら利きますよね?」
「何でしたら有能な兵士を貸し出しますが?」
カーレーとサーレーの言葉に父が即断する。
「知らなかったらともかく知ってしまった以上、ここで培った魔法知識を流出させられない。不許可だ」
双子は、尚も文句を言うが、ゲッティを交換という話を出した所で引き下がり、問題の兵士見習いに関しては、側近に伝えて、研究員見習いになる事に成った。
「ソーバトに優秀な人材が集まっているって訳じゃないのですね?」
一段落した後の私の言葉に父が頷く。
「あの双子の一番の武器は、その視野の広さと洞察力だ。僅かな違和感を察知し、カーレーがそれに対して行動を起こして、その反応をサーレーが詳細に分析する。二人で作業を分担する事で、より効率的にそれを行って人材を次々と発掘しているのだろう」
「双子だという強みですね」
私が頷くと父の苦笑する。
「まだ二人でやっている分、まだ納得も出来るが、あれらの父親は、それを一人でやっていたとマーネーが自慢していたがな」
私は、目を見開いてしまう。
「本当ですか! 二人でやるのだって至難の技を一人でなんて、どう考えても無理があります!」
「魔力以外の全ての才能を授けられた者、マーネーの言葉があの双子を側で見ているとそう外れていないと実感させられる」
父は、何か遠くを見るような目をしていたが、こちらに視線を戻す。
「もしかしたら、私達は、先代のソーバト領主には、感謝をしなければいけないのかもしれない。アレが冷遇されていなければ今頃、ミハーエは、あの父親によって塗り替えられていたかもしれないのだからな」
「冗談ですよね?」
問いかけた自分の声が弱々しいのが実感できる。
「マホコンから始まり、様々な時代の波を作っているあの双子を見ていてもそう思うか?」
父の言葉を私は、否定する事は、出来なかった。
ゲッティは、メチャ有能です。
そして、双子が能力をみせる度にその根源であるアーラーのチートぶりが彷彿されます。
次回は、短めにキュリスが改善後の話をします




