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裏社会の支配者

 玲玖(れく)は男たちの方へと目を遣り、そして不気味な微笑みを浮かべた。直後、凄まじい爆発が起き、四人の肉体は跡形もなく飛び散った。血肉が降り注ぐ光景を前に、江真(えま)は目を疑う。

「自分の仲間を……? どういうつもりだ!」

 彼女が驚くのも無理はない。先程まで彼女が戦っていた相手は、他ならぬ玲玖の手下だ。玲玖は肩を震わせて笑い、江真を嘲る。

「クックック……悪い悪い。何しろ、アタシがRであることを広められたら困るモンでな。邪魔者は片づけさせてもらったよ」

 己の正体を隠すためであれば、この女は自らの手下さえも殺めるようだ。江真の中に、燃え滾るような怒りが湧き上がる。

「自ら正体を明かしたくせに……なんてことを……」

「アタシが正体を明かしたのは他でもねぇ、アンタと腹を割って話すためだ。アタシらはネオ――人類を超越した新たな頂点捕食者だろ? あの力を空回りするだけの正義に活かすのは、少々もったいねぇんじゃねぇか?」

「だが、決して私は君のようにはならない! 例え私の正義が実らなくとも、道を踏み外すよりははるかにましだ!」

 当然だが、彼女には反社会的勢力に加わる意志などない。それがどんなに未熟なものであっても、彼女の信念は強い。無論、玲玖もそれをよく理解している。話し合いでは折り合いがつかないとあれば、二人に残された選択肢はただ一つだ。

「なるほど、和治から聞いた通りだ。確かに、アンタの首を縦に振らせるのは、そう容易なことじゃねぇだろうな。良いだろう……こうなりゃ、実力行使だ」

 突如、とてつもない火力の爆発が発生し、江真は後方へと吹き飛んだ。江真は宙で体勢を整え、地に立膝を突く。彼女の目線の先には、すでに巨大な炎の球体が迫っていた。

「私は、負けない!」

 江真は炎の壁を作り出し、己の身を守る。それから彼女は手元に炎を溜め、眩い光線を放った。玲玖は炎をまとった右手で光線を薙ぎ払い、再び微笑みを浮かべる。

「どうした? アンタの力は、こんなモンか?」

「つ……強い。君は何故、その力を悪事に使うんだ!」

「そんなこと、アンタが一番よくわかってるんじゃねぇのか? 正義がいかに無力で、力による支配がいかに強力か……もうそのドタマに焼き付いてるんじゃねぇのか?」

 その言葉に、江真は生唾を呑んだ。彼女の脳裏に、これまでの己の戦いの記憶が反芻される。現状、彼女の正義は何も救っていない。両脚を震わせる彼女の身に、何発もの炎の弾が撃ち込まれた。その身に傷を負いながらも、江真はおもむろに立ち上がった。そして彼女は、鋭い眼光で宿敵を睨みつける。

「確かに、今の私は迷走しているかも知れない。それでも、いずれ私は証明する! 私の正義を! 愛が勝つ世界を!」

「ククク……それが大の大人の言い草か? よくもまあ、ここまで愚直に、あんな未熟な正義を信じられるモンだ」

「今はまだ、私の正義は未熟かも知れない。だけど、私はいずれ見つける! 私の納得のいく答えを!」

 今はまだ、彼女は未熟者だ。そして彼女自身も、それを認めざるを得ない。そればかりか、江真は今、闘争においても分が悪い状況だ。

「終わりだ……江真!」

 そう叫んだ玲玖は両手を上げ、己の頭上に大きな炎の球体を生み出す。このままでは、江真が葬られるのも時間の問題だ。


 その時、玲玖は真横から、凄まじい火力の光線を浴びた。


 一先ず、江真は助かった。玲玖は宙で体を回転させ、三点着地をする。二人の前に現れたのは、もう一人のネオだ。

「ずいぶんと楽しそうだな。俺も混ぜてくれないか?」

――泰守(やすもり)の登場である。彼とは初対面の玲玖だったが、すでに何かを感じ取っている。

「コイツは……危険な予感がするな」

 この場で、緊張したような風が三人を取り巻いた。

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