ボクに君を教えて その2
「っと、あ、アタシ様……じゃなかった、アタシは……。」
「普段と変わらない話し方で構わないよ、あ、でももちろん僕も一応王子なんだからそれなりの配慮はもちろんよろしくね?」
「マジで!?じゃなかった、マジですか!?んじゃあ行くぜセナ!」
「ああ、もちろんだともティハ!」
「アタシ様はウルティハ・インベスティ!研究家一族、インベスティ家の令嬢にして魔法研究家!」
「僕はエスセナ・デ・ヌエ・アクトリス!シレーナの貴族、アクトリス家令嬢にして未来に大女優でありホテル支配人!」
「「リジャール王子、どうかよろしくおねがいします!!」」
バァーン!!
と、爆発音でも鳴りそうなくらいに派手に二人でポーズを決めながら自己紹介するウルティハとエスセナ。
もうこうなってはこの二人は止められない。
いつものこの二人のペースだ。
私とジュビア先生はやれやれ、といった様子でそれを見るがリジャール王子はプッ……と軽く噴き出しそうになりながら笑っている。
((決まった……))とウルティハとエスセナは心の中で思った。
物凄いドヤ顔であった。
「……二人して何をやっているのよ、ポーズなんかまで決めて……。」
「あはは、インベスティ家のご令嬢にアクトリス家のご令嬢、二人とも随分と愉快な人達みたいだね。そして、どうやらとても仲が良いようだ。」
「申し訳ございません、こいつらいつもこんな感じなので……。」
「構わないよ、研究家や女優というよりどちらかと言えば大道芸人のようだけど、賑やかな先輩で良いじゃないか。来年の入学が楽しみになるね。」
「それはまあ……私としても喜ばしい事ですね。一応、教師として。」
「いっそ僕も君達と同じクラブに入るのも悪くないと思うよっ。」
「それは私の頭痛の種になりそうですね……私個人として。」
「っと、それで、ウルティハ嬢とエスセナ嬢だったね。もし良ければ君達にも色々聞いてみたいな。」
そうして、ウルティハとエスセナは自身の事を話していく。
私はもちろん、以前に聞いていた話ではあるが、ふと隣の方を見るとティエラとベルナも興味深そうに聞いていた。
そうか、そういえば、ウルティハとエスセナと、この二人はどういうやりとりをしていたのだろう?とも思っていたが、こういう反応をしている、という事はどうやらお互いの事を深く話してはいないらしい。
そう考えると、ある意味良い機会になったのかもしれない。
……まあ、かくいう私も、もっと深い話をしなきゃいけない、と思うのだが。
「ってなわけで、最近の一番の活動はアタシ様が作った魔法の論文作成と、それを使った方法の普及の為の活動ってわけですよ!」
「そして僕の最近の活動は各劇団、主にシレーナを活動拠点とする劇団を中心に魔導機の使い方の普及や魔法の講座を開いたりしてますっ!」
「ふむ……サンターリオ学園のクラブは、基本的に一つの目標に向かって活動する、という所がほとんどだとボクは聞いていたけれど、君達のクラブはどうやら違うみたいだね。個々人が自由に活動し、お互いがお互いの活動を支えて過ごしていく……なんというか、研究や鍛錬といった活動によって自分を高めていく集まりというよりも、お互いを支え合う事で日々とお互いを大事にしていく……君達にとってのクラブはそういう物なんだね。」
「そ、そこまで深くは考えていない……と思いますよ?事実、こうやって、ベルナ様達の依頼を聞いたりしているのも偶然私達が力を貸せそうだったからで……。」
「なら、この出会いも縁という物だったという事さ。もしくは運命……なんてね。君達が居なければ、こうしてボク達が言葉を交わす機会も無かった、もしくはあるとしても来年以降からだった……そう考えると、君達がシレーナでその映画、とやらを作ったりしたのも縁さ。偶然の積み重ねかもしれないけれど、それの結果今がある。そう考えるなら、悪くないじゃないかい?」
「そういう、ものですか……。」
うーん、凄くポジティブ思考な上にロマンチストだ。
普通、私達の活動ははっきり言って学園側からすると目の上のたん瘤みたいな存在かもしれないと私は思っている。
だって、他のクラブは身体を鍛えたり、魔法を練習したり、勉強をしたりしながら貴族同士のコミュニティを作っているのだ。
そんな中で私達のクラブは、お悩み相談室みたいな真似事をしながら各々好きに活動しているような存在だ。
私達の活動を良く思わない人が居ても仕方ないであろう。
それをこうやって褒めて人をその気にさせるのが上手いのは、なんというか本当にこの人も人たらし、という物なのだろうなと思う。
「さて……では、最後にマルニーニャ嬢、君の事を教えてくれ。順番通りだから、期待しているよ?」
「……リジャール王子は、オスクリダ家の人間が、そして私が社交界でどういう存在か、ご存じですか?」
「……オスクリダ家の人間に、悪評が多いのはボクの耳にも入っているよ。そして、君が闇属性の魔法の使い手だ……という事も、あらかじめ調べておいた。」
「そう……ですか。では、リジャール王子から見ても私はあまり良い印象を持たない存在である、という事ですよね?」
「難しい質問だね……まあ確かに、闇属性の持ち主は心に強い闇を持っている、という説はボク達王家としても無視は出来ないし、事実として以前の王家に入ろうとした貴族に闇属性の魔法使いの協力を得て他の候補を蹴落として自分達が選ばれようとした、という事があったらしい。それ以降、闇属性の魔法使いを警戒するように王族はなったのも事実だ。」
「そう……ですか。」
私は、目を逸らしたくなる。
本当なら、リジャール王子の視線が辛くて、どんな顔をしているのかを見て居たくなくて顔ごと逸らしてしまいたくなる。
でも、今は私は大事な話をしているんだ。
だから、顔はしっかり見つめる、目は逸らさない。
そうして見るリジャール王子の表情からは、今までの楽し気に笑う顔とは違い、真剣な表情だ。
こちらを威圧するような攻撃的なそれとも違う。
こちらを軽蔑するような冷たいそれとも違う。
こちらを憐れむような悲しい目とも違う。
真剣に、ただ、純粋に。
こちらを試すかのように、そして見定めるように。
まるで、何かの答えを見つけようとするような表情であった。
そして、リジャール王子は口を開く。
「君は、王家の人間になりたいのかい?」
「へ?いや、それは……いいえ。」
私の本心は違う。
私はこの世界でヒロインになりたいのではない。
ソルスという、私にとって最高のヒロイン、一番大事な人……そして多分、私の最愛の人。
その人に、幸せになってほしいのだ。
だから、本当の本心は、ソルスをこのリジャール王子のヒロインにしたい。
ソルスを王女にしたい。
それが……私の、本心、の筈だ。
……何故だか、それを想うと、胸がどうしようもなく痛むのは、何故だかわからないけれど。
私は、例えオスクリダ家の没落と共に消えてしまっても、もしくは頑張ってソルスを守る騎士になってもいい。
あの子の陰で、あの子を支えたいのだ。
……そう、私がソルスと結ばれる事が無いように、私がヒロインになる事も無いのだから。
「私は……王家に入りたいわけではありません。令嬢として、貴族としての立ち居振る舞いは学んできましたし、それを誇りには思いますけど、私がもっと上の地位に立ちたいとは思っていません。むしろ、騎士としてリジャール王子の、王家の皆さまを守れるように日々努力しています。」
「君は騎士志望なのか、そういえばティエラ嬢も騎士志望だったね。騎士志望の令嬢が居る、というのは嬉しい事だよ、それだけ責任ある者の立場を理解している、という事だからね。」
「はい……私が話したいのは、ある親友の事です。」
「君の親友……かい?」
「ええ、その親友が居なければ、私も心の闇に包まれていたかもしれません。その親友は、私の心の暗い闇を照らす、明るく優しい光です。まだ幼い頃から、貴族と孤児という立場の違う者同士ですが心を通じ合い、コミエドールの町の人々の為に尽くしてきました。」
「……わざわざその親友の話をボクにする辺り、その親友の存在は君にとって余程大きな物だったんだね。」
「はい。その親友が、来年サンターリオ学園に入学してきます。孤児院出身ですが、学業も魔法も武術も優秀ですから、多分推薦枠で入ってくるかと……私も、オスクリダ家として支援しますので。」
「なるほどね、君自身の事よりも、君はその親友とボクが仲良く過ごす事を望んでいる……という事か。」
「はい、もちろん、私もその為に親友の事もリジャール王子の事も支えていきます。その中で、私の闇属性という物も見定めていってくださると、私は嬉しく思います。私は闇属性の使い手ですけど……この身を粉にして、王家の為、そしてベルナやその親友の為に尽くしていきたいと思っています。」
「……その親友の名前は何だい?」
「……ソルス・アマーブレント。」
「ソルス……ね、わかった、その名前、覚えておくよ。」
「ありがとうございます。」
「……ふふっ。」
「……?」
笑うリジャール王子に、下げていた頭を上げて首を傾げる。
リジャール王子の笑みは、先程までの微笑みに戻っていた。
「いや、すまないね……正直、ベルナが闇属性の使い手であるマルニーニャ嬢に力を借りに行った、と聞いて、正直ボクも警戒したんだ。ベルナがもし、手段を選ばない方法で王女の座を狙いに来たのならどうしようと思っていてね。でも……どうやらボクの警戒は必要の無い心配だったらしい。」
「へ……?」
「……ベルナ、君も話したいんじゃないかい?」
「……私……ですか?」
「ボクに皆が話している時に、君も話したそうにしていたからね。」
そう言われたら、確かにベルナもそわそわしていたが……あれはそういう事だったのか。
私には分からなかった辺り、やはりそこは付き合いの長さの違いであろうか。
「ボクが皆に頼みたい事も、君が関係する事だからね。」
「……そういうこと、なら……わかり、ました……。」
少しの思考の後、ベルナは頷いた。
そうして、ベルナの話は始まった。
台詞がかなり多くなったり思うように話が進んでいないですが、このまま頑張ろうと思います。




