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私についての世間話 ティエラ編 その1

「あら、マルニーニャ様!」

「うん?……ああ、ティエラさん。移動教室かしら?」

「ええ!マルニーニャ様もですの?」

「まあ、そんな所かしら。」


まだ放課後になる前、偶然ティエラに出会った。

ティエラは私達とはクラスが違うらしく、教室では見る事は無かったのでこうして会うのは初めてである。


「なら、アタクシと移動しながら少しお話しませんこと!?」

「ええ、もちろん構わないわ。」

「ふふっ、嬉しいですわ!」


私達は、歩きながら話をする事にした。

もしかしたら、こういう普段からの会話で何か良いアイデアが浮かぶかもしれない、と思ったからだ。


「マルニーニャ様のクラスは何処なんですの?」

「私と、ウルティハ、エスセナの三人は皆クラスはアネモネよ。ティエラさんは?」

「アタクシはロータスですの!因みにベルナ様は二年生のローズでしてよ!」

「そうなのね、別のクラスや別の学年の方とこうやって話すのはなかなか無い機会だから嬉しいわ。」

「アタクシも同じですわ!ふふ、嬉しいものですものね!でも、何でマルニーニャ様は……。」

「マルニ、で構わないわ。二人やベルナ様もそう呼んでいるのだから、ティエラさんもそう呼んでちょうだい。」

「……!渾名で呼ぶ貴族のご友人なんて初めてですわ~~!マルニ様、アタクシ感激致しました!アタクシの事も、さん付けなどせず呼び捨てで呼んでくださいまし!!」

「わ……わかったわ、ティエラ。」


何というか、ソルスとはまた違った意味で、ころころと表情の変わる子だ。

この感情的で元気な性格なら、きっと人に好かれるだろう。


「マルニ様!マルニ様は、何を目指してこの学校へ?」

「私は騎士志望よ。ティエラは?」

「まあ!アタクシも騎士志望ですわ!ベルナ様を守る為の騎士になりたいんですの!」

「そうなのね?本当にベルナ様の事が好きなのね、貴女は。」

「はいっ!ベルナ様はアタクシの憧れの女性ですからっ!」


邪気の無い混じりけの無い明るい笑顔につい眩しく感じてしまう。

この子もこの子で純粋というか、素直な子なんだなと思う。


「……そういえば、マルニ様は一人で過ごす事が多いんですの?」

「ええ、私は基本的には一人で過ごしているわ。放課後では二人と集まるし、普段昼食の時とかも二人が来てくれるから、話すとしても大体あの二人ね。」

「ふふ、とても仲良しなんですのね!でも、他の方とはあまり話さないんですの?」

「ああ、えっと……私は、あまり話さないというか、話せないと言った方が正しいかしら……。」

「話せない?」

「……ティエラは、もしかして私の事を知らないのかしら?」

「何の話ですの?」


驚いた。

まさか同じ貴族の中で知らない人も居るとは。

まあ、今は人に隠してないから大丈夫とは思うけど……。


「うーん……そうね、なら、見てもあまり驚かないようにしてくれるかしら?」

「?はいっ!何なのかわかりませんがもちろんですわ!」

「じゃあ……んっ。」



私は人差し指を立てると、指先に魔力を籠める。

使う魔力は……雷と、闇だ。


「……っ!?」


指先に軽く出す程度で周りに拡散しないように注意しながら、見せる。

私が人に避けられる理由……闇属性。

これを隠して付き合いをする事は出来ないだろう。

それに、これでティエラやベルナ様に避けられるなら、それはもうそれで終わりだ。

あくまでそこまでだったというだけの話だ。

私は軽く見せた後、魔力をすぐに消す。

辺りが軽くざわついているのを感じる。

どうやら、闇属性の魔法を見て驚いて怖がっている人も居るようだ。

私は、軽く自虐的な笑みを浮かべる。


「……これが、私が周りから避けられる理由……闇属性の魔力よ。」

「な、な……なるほど……ですわ……。」

「どうかしら?……ティエラさんも、怖いとか思うなら、正直にそう思って、言っても構わないのよ?」

「……うーん……。」


珍しく考え込んでいるティエラ。

流石に彼女でも言葉を選んでいるらしい。

少しの間唸る声が聞こえた後、「うんっ。」とティエラは大きく頷いた。

どうやら言葉は決まったらしい。


「確かにびっくりしましたしちょっと怖いと思いましたっ!」

「……?その割りに、妙に元気なのね……?」

「それはですわね……私も他の貴族の方々からは避けられているからですわっ!」

「……は?」


むんっ、とばかりに自信満々に胸を張るティエラに、思わず私の方が驚いてしまった。

これではどっちが驚かそうとしたのかわからない。

だが、そのままティエラは話し続ける。


「逆にアタクシが貴族の間では何と言われているか、元々貴族のマルニ様はご存じですわね?」

「……新しい貴族、悪く言えば……成り上がり貴族。」

「そうですわっ!私這い上がって成り上がった家の娘ですの!」


自信満々に胸を張るその姿に、思わず自分の方がなんだか気圧されてしまう。


「アタクシはお父様が事業で一山当てた結果王家に貢献した結果として貴族の地位、社交界への誘いを受けた人間ですわ。だから、元々貴族のお友達なんて一人も居ませんし、地元でも貴族に成り上がった結果あまり良い目では見られて居ませんの!」

「……そのわりには、元気に見えるわ?」

「もちろん、最初は寂しかったし楽しくない世界でしたわ、貴族の世界は。」


「でも。」と言葉を続けながら笑うティエラ。


「アタクシはベルナ様という私の理想の貴族に出会えましたもの!それに、アタクシ元気が取柄なので!」

「……貴女にとって、それくらい大きな出会いだったのね、ベルナ様との出会いは。」


つい、私も笑ってしまった。

そんな出会いが、私にもあったって事を今でも思い出す。

(分かるよ、私にも。幸せにしたい人との出会いって事を。)


「……良ければ聞かせてくれるかしら?ベルナ様との話を。」

「もちのろん、ですわ!むしろ話したくってたまりませんもの!それに……。」

「……それに?」

「アタクシもマルニ様の事もっと知りたいですわっ!」

「ふふ…それなら、私も嬉しいわ。」


すぐにでも色々話してみたい……と思っていたが。


チリリリリリリリンっ!

予鈴の音が鳴りだした。

どうやらもう時間らしい。


「あっ、話しすぎましたわねっ!」

「そうね……じゃあ、ティエラ、また今度話しましょうっ。」

「……っ!はいっ、是非!」


ぱああっと輝くような笑顔を見せて、私に笑ってくれたティエラだった。


同じ輝くような笑顔でもソルスとティエラではまた雰囲気が違うのを表現できていればいいなあ……と思います。あと、ベルナとティエラの掘り下げもしっかり出来たら良いなと思います。

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