私についての世間話 ティエラ編 その2
皆さま、お久しぶりです……。お知らせにも書きましたが、身内が病気になってその世話をしたり、11月はあちこちに出かける用事が多くてなかなか執筆に取り掛かれず、結果として長期の休載をしてしまった事、本当に申し訳ありません……。段々と周りが落ち着いてきたので、またこれから執筆を再開していきますので、改めてどうか皆さん、よろしくお願いいたします。
その日には流石に時間が取れなかった為、ティエラとは別の日に二人きりで話すことにした。
別の日、その日は私の部屋に呼ぶ事にしていた。
フレリスにはお茶会用の準備と、話をしたいからいつも通り聞いてないふりをするように言っておいた。
「今日は来てくれてありがとう、ティエラ。」
「いえいえ、こちらこそ、お招きいただき感謝いたしますわっ!」
「ふふ、お部屋で申し訳ないけど、今日はゆっくりお話しましょう。」
「ええもちろんっ!たくさんたっくさん、お話したいですわ!」
「お嬢様、ティエラ様、紅茶と茶菓子になります。」
「ありがと、フレリス。」
「フレリス様、ありがとうございますわ!」
「あら……私はマルニ様のメイド、私に様はつけなくてもよろしいのでは……?」
「いえいえ、アタクシは元は商人の娘!貴族の方のもてなしをメイドさんのように手伝った事もありますわ!アタクシにあまり家事手伝いとかはしないでくれと言われましたけども!」
「そう、なのですか……でしたら、興味がある事があれば後でお答えいたしますね。」
「まあ!感謝感謝ですわ!」
「ふふ、元気な方ですね。良いと思います。」
「そうね……。」
元気な人、というのは本当にそうだ。
性格も態度も、騎士としても。
実はこの間、ロータスの騎士志望クラスとの模擬戦訓練があったのだが……。
「そりゃああああああああっっ!!」
「わっ……!?」
「魔力も使わずに……!?」
「すげえ!」
なんと、素手で岩を砕いたり地面を叩き割っていたのだ。
一応彼女の現出はグローブらしいのだが、現出を使わないでも、魔力で身体強化をしなくともこれだけの力を出せる彼女の怪力は凄いものだ。
何でも、幼いころから力が強かった上に、我流で鍛錬したり宝石や石、鉱石を運ぶ仕事をやっていたらどんどん強くなって、気づいたら怪力を得ていたらしい。
ティエラは確かに見た目は筋肉がある感じの肉体ではあるが……それでも、その見た目に見合わない怪力という事には間違いない。
「ティエラ、貴女凄いわね……。」
「アタクシ、元気だけが取柄ですの!」
「元気があっても普通は岩を砕いたりは出来ないわよ……。」
というやり取りがあった。
因みに模擬戦ではティエラに私は勝った。
破龍の儀の時と同じように自分の身体を魔力体に変えての模擬戦だったので、殴られても怪我したりはしないというのはわかってはいたが、それでも殴られたりしたら絶対痛そうだったから全力で避けていた。
槍術や体術含めて技術は私の方が上だったから何とかなった。
というか、基本的に技術の荒さはティエラの弱点……だと思う。
「マルニ様、何をお話しましょうか!?」
「そうね……。なら、この間話しそびれた、ベルナ様……ベルナとの事を聞かせてもらいたいわね。」
「ベルナ様との事ですわね!それならもちろん歓迎ですわ!」
「そう?ならありがたいわね。」
「そうですわね……どこからお話しましょうか、まずはやはり出会いの事がいいでしょうか!?」
「そう、ね……なら、それでお願いするわ。」
「お任せを!」
ドンッ!!と凄い音が鳴るくらい強く胸を叩いて堂々と頷くティエラ。
そんなに強く叩いて痛くないのか、とか、ベルナの胸はかなり大きかったけどティエラも結構胸が大きいからそこそこ揺れるな……とか少々関係ない事を少し思いながらも、ティエラの話を聞く事にした。
「あれはアタクシが社交界で浮いていたので、一人で晩餐会を過ごしていた時でしたわ……。」
「……貴女は、バレンティア家のご令嬢、ですか……?」
「へ?……べ、ベルナ次期王女様ぁぁぁ!?!!?」
「声、大きい……あと、まだ次期王女は、決まって、ないよ……?」
晩餐会の会場で居づらそうにしていて、端っこで一人で居たティエラ。
そんな時に声をかけられた。
その人は見間違い様も無い、次期王女候補として最有力と言われている、ベルナ・セプレンディその人であったのだ。
ティエラは当然ながら慌てていた。
貴族の中でも成り上がり貴族で、地位が高いわけでは無い、光属性みたいな何か特別な力があるわけでも無い。
ただ筋力があるだけの弱小田舎貴族の自分に、中央の最高峰の貴族が何の用なのか、ティエラには皆目見当も付かなかった。
「あ……アタシに何の用でしょうか!!?」
「何の用……初めて、言われたかも……そうね……。バレンティア家の人には、お世話に、なってるし……私と、歳も近い子が居るって、聞いたから……挨拶、したかったの……。」
「あ、アタシが……じゃなかった、バレンティア家が、セプレンディ家の、世話に……ですか?」
「これ……。」
「これ……?」
ティエラには宝石の使い道などはある程度は教養として知ってはいたが、セプレンディ家のような上位貴族の何に役に立っているのだろうか?と思っていた。
果たして、アクセサリーか、それとも何かの細工であろうか?と思っていた。
だが、ベルナが取り出したのは、杖であった。
「これは……?」
「私が、魔法に使う杖……宝石の、杖。宝石は、バレンティア家から、買い付けてる、よ……。バレンティアの、宝石は……質が良いから、現出や、魔法の触媒に、良い……。」
「ああ……ああ!なるほど、そういう事でしたのね!?」
沢山の宝石の装飾による魔法の刻印と、その中心にある大きな宝石の杖。
ティエラはそれを聞いて納得した。
そもそも、宝石の商売で一山当てたとはいえ、貴族の地位が貰える程の事だろうか?という疑問がティエラにもあったのだ。
だが、成程。
次期王女候補である上位貴族の令嬢御用達の宝石として注目が集まったのなら、確かにそういう事もあるかもしれない。
宝石が魔法の触媒になる事はティエラはもちろん知っていたので、点と点が繋がった、といった感じだった。
「あ、アタシこそ、我がバレンティアの宝石を愛用して頂いて、光栄です!」
「……ふふ。」
「……!?え、えっと、どうかされまして……?」
「ティエラ嬢、凄く、表情も、態度も、固い……。地位の差は、あるけれど……良かったら、同年代の、友人として……話してみたい、な?」
「と、ととととんでもない!?あ、アタシなんてそんな、友人なんて……!?」
「……嫌、だった……?」
「い、嫌というわけではなく、ただ……。」
「ただ……?」
ティエラは言葉に詰まる。
自分のような成り上がり弱小貴族が中央の上位貴族と友人なんて烏滸がましくないか、という貴族令嬢として当たり前の疑問と……もう一つ。
「その……アタシは貴族としては成り上がりの端の貴族ですし、それに……。」
「……それに?」
「……アタシが貴族になる前に友達だった……友達だと思っていた人達は、バレンティア家が貴族としての地位を得た途端、手のひらを返して、離れて行って……ちゃんとした、友達って、出来た事無くって……だから、アタシも、友達、友人って分からなくって……貴族の世界も、分からない事ばかりなので、ですので……。」
「……一緒、だよ。」
「……へ?」
「私も、次期王女候補に、なって……周りは、次期王女になる為に、競争する、私にとっての、敵だらけになって……友人だった人達も、離れて行って……。だから、私も、友人って言うのが、分からない、から……だから、分からない同士で、仲良くなれて行けたら、嬉しいな……って。」
「……!!」
ティエラは目を見開いた。
ティエラにとっては分からない貴族という存在。
でも、それが、自分の中で結びついた。
理想の女性としての、存在と共に。
胸に感じたことの無い感動が広がった。
「はい……はい!!ベルナ様が、アタシで良ければいくらでも!!アタシが友人として、いつまでも一緒に居ます、いえ、居させてくださいませ!!
「……?うん……よろしくね、ティエラ……。」
ティエラから見えたベルナの、優しく穏やかな微笑みは、まさに女神様のようであった。




