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シレーナでの発表会 前日その2

「ここがレモリーノの中なのね。……私達が泊まるってなると、なんだか良いのか、気になってしまうわ。」

「一応今回は私達は招かれた客であり、明日の発表会の発表者の一人だからな。それを考えると、私達は無様な真似は出来ないというプレッシャーが無いというわけでもないがね。」

「そりゃ最初はびっくりしたしアタシ様も走り回ったりしたけど、流石にアタシ様は慣れたなー。」

「そりゃあ、中央やここと繋がりがあるウルティの感覚で言うならそうでしょうけど、私はむしろ慣れないわね……。」

「私も、こういう施設がある事は話には聞いてはいましたが、実物を見るのは初めてですね。ご主人様がシレーナの観光や商談、夜会へのご参加をされる時に連れて行く従者は私ではありませんでしたから。心が踊らないかと言ったら嘘になりますね。」


私達は、総合ホテル『レモリーノ』の中に居た。

レモリーノは一応一般人でも宿泊出来るようなプランも存在はするがやはりメインの客層は貴族などの富裕層。

その貴族の心を満たすように、そして一般市民の宿泊客は貴族気分に浸れるように……そういう意図もあってか、ホテルのエントランスの時点で既に豪華なシャンデリアや絵などといった装飾、身綺麗で清潔感のある従業員、ソファなどの家具も新品と見紛うかのような綺麗さだ。

輝くような灯りは、恐らく魔導機を使っているのだろうか?

流石に本物の炎や、この世界に電気の科学が発展して使っている、という事は無いとは思うが、魔導機なら恐らく似たような事は出来るだろう。

また、客の輝くようなドレスコードもその明るさの一助をしているような気もする。

輝くようなドレスや、落ち着いたフォーマルなスーツが美しさを引き立たせるのであろう。

子供も前世でよく見かけたような、珍しい場所に来てはしゃぐような子供は居ないのは、恐らく貴族としての教育の賜物と言えるであろう。

子供達もしっかりと服装を整えて、しなやかな所作で談笑をする。

子供も大人も変わらず、その雰囲気を崩さないようにしているのは、その人達の品格を示すのと同時に、このシレーナの、レモリーノの雰囲気や空気感を崩さないようにスタッフも客も努めている。

その協力があるからこそのこの豪華絢爛でありながらも威圧感ではなく安心感を与える空気感を創り出しているという事なのかもしれない。

今はなんとか令嬢モードで表面上は取り繕ってはいるが……。

(すごーーっ!なにあれ、ドリンク無料とかってこの世界でも出来るの!?ドリンクバーみたいな機械でやってないぶん従業員の人がわざわざ用意してくれるから特別なサービス受けてる感凄い!それに綺麗すぎ!コミエドールの一番高いホテルでも全然比べ物にならないくらい豪華なんだけど!前世で行けなかった修学旅行でも絶対こんな豪華なホテルじゃなかっただろうな~……!)

と、心の中の女子高生がはしゃぎにはしゃいでいた。

正直、私も早くこのホテルを満喫したくてうずうずしていたのだが、今回は遊びや旅行に来たのではない。

ジュビア先生が言う通り、あくまでも明日の発表会でのステージに立つ人間だからこそ特別に招待してもらったのだ。

なのでこのホテルでも明日の準備や打ち合わせなどもあるし、夜にはエスセナも参加してまた確認作業の為に「フェ・クレアシオ」にまた行かなければならない。

のんびりお土産を買ったり観光したりする暇など無いし、そもそもそんな心の余裕は無いであろう。

もし余裕があるとしたらエスセナウルティハの問題児コンビであろうが。


「とりあえず、まずは荷物の保管と部屋の確認だ。私、エスセナ嬢とウルティハ嬢、マルニーニャ嬢とフレリスさんの部屋分けだったな。自分の部屋の確認と、劇場で必要の無い物は貴重品以外は置いていくように。」

「セナがまだ帰ってきてない所は気になるけど、まあセナは今回は説得もあるからまあ仕方ねえか。まあ、今回は暇な時間は論文でも書いとくかぁ。」

「ちゃんと明日の質疑応答の対策もしっかりやっておくのよ?まあ、ウルティの事だからそこは言うまでもないでしょうけど……。」

「お嬢様、一応本人確認の為お嬢様とウルティハ様にも来てもらう事にはなりますが、基本的な手続きなどは私とジュビア様で行う、という段取りでよろしいですか?」

「ええ、それで構わないわ。細かい作業、苦労かけるわね、フレリス、先生。」

「私はメイドですので。むしろ、今この学園生活の中での主はマルニお嬢様です。その主と同じ部屋で夜を共にするなど、この身に余る事でございます。」

「私も教師であり顧問だからな。未来の貴族や王族を導くのも、道を切り拓く手伝いをするのも私の役目だ。……そうで在らなければ、いけないからな。」

「……先生?」

「いや、なんでもない、気にしないでくれたまえ。」


少し、ジュビア先生が考え込むような仕草をした事に違和感を覚えた私だったが、その「理由」に私は思い当たる事があったので深入りはしない事にした。

……それは私ではなく、ソルスが乗り越える事だと思うからだ。

それは私の役目では無い、と。


とりあえず、私達はホテルにチェックインする事にした。

ロビーで受付のお姉さんが応対してくれる。


「いらっしゃいませ、ホテルレモリーノへようこそおいでくださいました。」

「ああ、アクトリス家の紹介で来たジュビア・ウービエントです。」

「同じく、エスセナ様の招待で本日お世話になります、マルニーニャ・オスクリダ様のメイドのフレリス・オリヒナルと申します。」

「ああ、エスセナお嬢様からの紹介の!……ああ、確かにウルティハ様もいらっしゃいますね!そしてそちらの黒髪の方がマルニーニャ様ですね!」

「はい、ほとんどホテルの外に居ると思いますが、お世話になります。」

「構いませんよ、シレーナのの観光がメインでホテルにはほとんど居ないお客様も多いですし、明日のフェ・クレアシオでの発表会の話も連絡が来ていますので、ゆっくり休憩だけでも歓迎ですので!」

「ありがとうございます、では、書類の方をお願いします。」

「はい、こちらになります。確認事項の確認が終わったら、サインをお願いします。鍵はこちらですね。」

「ありがとうございます。」


結局ほとんどの作業はジュビア先生とフレリスが終わらせてしまったので、私達の作業は確認事項の確認と鍵の確認くらいだった。

二人が作業が終わると私達はそれぞれに鍵を受け取って部屋へと向かう。

高層ホテルなので階段で昇る……というわけではなく、魔導機と鍵が反応して魔法陣の床がエレベーターのように私達を運んだ。

鍵のには車の鍵のボタンのように、魔力を流し込めば浴場やロビーなどといった場所をこの魔導機エレベーターで行き来出来るというわけだ。

着いた私達の部屋は、大体中層より少し上くらいの階である。

招待で来た、という中ではなかなかの待遇であるような気はする。

だが、恐らくでは上には明日の発表会でもっと偉い人達や立場がある人達、シレーナとの繋がりが強い人達がいるのであろうというのも感じる。

事実として、ロビーなどでそれらしい話をしていた人達が上に行ったり、明日のパンフレットや資料、荷物などを運んでいる人が見えた。

それを考えると、この中層から少し上、という階層は、私達への意識の現れなのかもしれない。

エスセナの関係者、という事で優遇はしつつも、表現者としては素人達だからあまり期待はしていない、だが同時に、このシレーナに招かれ、このホテルに泊まり、明日ステージの上に立つだけの責任や自覚を持ってもらわないと困る、ということなのだろう。

ある意味、ここに招待する事を了承した事、ここでサービスを受ける事自体が私達、そしてなによりエスセナとの勝負という事なのだろう。

そう考えると、気を抜く事はあまり良いこととは思わないが、それはそれとして……


「疲れたわ……フレリス、私達の部屋へ行きましょう。」

「はい、お嬢様。私達の仕事はまだ終わっていません。むしろ明日の本番が近づくに連れて仕事は増えるでしょう。だからこそ、軽くまずは部屋で深呼吸しましょう。」


ホテルの誘惑を受け入れるのもここに招待された者の務め、といっても変わらないだろう。

私とフレリスは指定された二人用の部屋へと足を進めるのであった。

風邪を引いて体力や気力が落ちてますが、それでもPCと向き合えば自然と指は進むもので。とりあえずシレーナでやる事の方向性は何となく固まってきたので、あとはそれを上手く調理できるように頑張ります。正直、ここのお話は当初の想定よりだいぶ文量が増えてますので、その分しっかり区切りをつけれるように頑張りたいです。

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