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闇の聖女を広めるという事は 2

「うーーーん……。」

「お疲れみたいですね、お嬢様。」

「あ、ありがとうフレリス。」


ちょうど台詞を考える作業に頭を使って詰まり気味だったので、そこを見越していたのだろう。

フレリスは紅茶と、夜食の代わりの小さいサンドウィッチを持ってきてくれた。

部屋に帰ってきて勉強する事はあっても、作業をして部屋に缶詰になるという事は今まであまり無かった経験だからか頭はいつも以上にエネルギーを自分の予想以上に使っていたのだろう。

ちゃんと夕食も摂った筈なのに少し空腹を感じていた所だった。

湯浴みはもう済ませているから後は寝る時間を少々調節しなければいけないが、まあ普段の生活習慣は気をつけているからたまには大丈夫だろう。

前世で散々生活習慣には気をつける生活をさせられた影響か、マルニーニャ・オスクリダの身体になった今でもあまり沢山食べたり高級な物を食べるのに少々躊躇いがあるのは私の悪い癖であろうか。

まあ、最近は令嬢だから身なりには気をつけてはいるとはいえ、もうちょっと食べるようにした方が良いと子供の頃からの健康診断では言われてはいるけれど……。

自分で言うのもなんだが、多分私は胸やお尻は人並、というか、人並より大きい気がするのだが……そういう大きさとかの意味では無いのだろうか?

まあ、自分の容姿はやはりどうしても騎士としての訓練とかと比べると後回しになるのだが。


まあそれはどうでも良かった。


「んん……。」

「マルニお嬢様、少し作業に詰まり中、といった所でしょうか?」

「相変わらず、フレリスは察しが良いわね。」

「お嬢様は比較的考えている事が分かりやすい部類なので、結構所作や顔に出やすいですよ?」

「嘘、そんなに私分かりやすいのかしら……?」

「多分親しい方でしたらすぐに気づくタイプかと。まあ、流石に細かく何を考えているか、までは少々分かりませんが。」


困る、それは非常に困る。

私の将来的に考えている事がすぐにバレるような分かりやすいのは正直あまりよろしくないのだ。

色々理由はあるが……いや、令嬢モードがバレているのは今のところ数名くらいだし、それがあまりバレていないという事は多分大体の人には大丈夫だろうか?

いや、でも、親しい人ならすぐにバレるというのはしかし……

(うーん、うーん)と考えていると。


「……すみません、思考が逸れてしまいましたか?」

「あ、そうだった。」


いけないいけない。

確かに変な事を考えている場合では無かった。

今とりあえず向き合うべきは脚本脚本。

それに、フレリスにも聞いてみたい事があったからちょうどいい。


「んん……フレリス、ちょっとおしゃべりに付き合ってくれるかしら?」

「ええ、それくらいいくらでも。何なら今日はソルス様とではなく、私と話して夜を明かしますか?」

「あら、盗み聞きは行儀が良くなくってよ?」

「盗み聞きは使用人の嗜みですから。……なんて、冗談ですけれどね。」

「でしょうね、本気で言っていたらフレリスをオスクリダ家に送り返さなければいけなくなってしまう所だったわ。」

「それは恐ろしい。まあ、前にそうやって魔力を使って話をしている事は前に聞きましたし、まだ若いのに何処かに夜遊びもせずに行儀よく早寝をしているのですから、それくらいの推測は簡単ですよ。」

「それが分かっている上で見逃してくれている、というわけね……。」

「私としても、ソルス様の事を気にしてくれている事はありがたいですからね。来年には同じ学び舎の中で顔を合わせる事になるでしょうし。」

「……そうね。」

「……。」


いけない。

多分、また私の顔を見てフレリスは気にしているのだろう。

要らない心配を掛けるわけにはいけない。


「……それで、お話とはどういったお話でしょうか?」


フレリスの方から切り出してくれた。

この気遣いが、有難いのと同時に胸に刺さる。


「そうだったわね。そうね……フレリスだったら、闇の聖女ってどういうイメージをするかしら?」

「この前お話したあれですか。……難しい質問ですね、それは。」


フレリスが自分の口元に手を当てて考え込むような仕草をする。


「この前も少し思ったけれど、フレリスでも難しい質問なのね、これに関しては。」

「ええ、そもそも闇属性のイメージと、聖女という言葉のイメージがなかなか結びつかないというのはやはり大きいかと。」

「うーん、光属性と闇属性、かぁ……。」


ゲームの中なら心の中の光、心の中の闇、といったふんわりとしたイメージでも何となく通った気がするし、それを証明しようなんてする必要が無かった。

だってその心の中の光という物をゲームの中ではソルスは行動で、生き様で示したのだから。

ジュビア先生の人生の呪縛を破り、アルデールの騎士としての道を照らし……{彼}の人生に色を与えた。

その為に戦い、対話し、時には自分の命すら代価にしようとした。

(聖女という物があるなら、自分すら犠牲に出来る者……なのかな。)

だが、闇の聖女とはどういう物だろう。

闇属性という物の心の闇の描写は、実はゲームの中ではそんなに多くはない。

少ない、とまでは言わないが、物語の要所要所で出てくる物なので、物語の根幹に関わる物では無い事というのもある。

(心の闇って、一体なんだろう。)


「ねえフレリス、フレリスだったらどう示すかしら?」

「そうですねぇ……そもそも私は闇属性使いではないので、心の闇という物への実感が湧かないので難しいですが……悪く言うならば間違った手段で人々を救う人。良く言うならば……。」

「良く言うなら?」


「自分の為に誰かを救う人、でしょうか。」


『闇の聖女がどういう物か、ですか……。』

「ええ、私が聖女として魅せるならどういう風に台詞を言ったほうがそれらしいかしら、と思って。」

『んん……。』


通話先のソルスから何とも言えない声とも言えない声が聞こえてくる。

色んな人に聞いたからソルスにも聞くべきだと思ったから聞いてみたが……流石に少々呆れてしまっただろうか?

(ちょっと、ドキドキする……お願い、嫌な気持ちにならないで……!)


『それは……普段通りのマルニ様のように振る舞ったら良いのではないでしょうか?』

「……は、はぁ!?わ、私は全く聖女らしい振る舞いなんてしたことは無いわよ……!?」

『あはは……私にとっては聖女様と変わりないですけれど、でも、そういう意味ではないんです、マルニ様。』

「……えっと、どういう、意味かしら?」


思わず取り乱したのを、少し深呼吸して気を取り直す。

通話先のソルスから言葉が続いてくる。


『えっと、ですね。他の国とかではどうなのかわかりませんけれど、少なくともこのインフロールという国の中には、きっと闇の聖女という概念はほとんどの人が持っていないんです。それは考えた事も、イメージした事も、それを気にした事も。』

「……そうでしょうね。それを気にした人が沢山居たら、もしかしたら闇属性の立場は今より良かったかもしれないから。」

『はい。だから、マルニ様達が新しく切り拓いていければ……新しくその概念を作って行ければ、それはきっと、何かを変えるきっかけになるかもしれない。それなら、マルニ様がマルニ様らしく振る舞えば良い……というのは、少し夢を見すぎでしょうか、えへへ。』

「そういう、考えもあるのね……普段の私らしくでいい…か。」


それはそれで難しそうだとは思うが、それが間違いであるとも思えない。

自分が新しく作ればいい。

私が新しく切り拓いていけばいい。

それなら、確かにやる意味はありそうだ。


色んな人々から貰った言葉。

正しく使う力。

自分の嘘偽りない誰かを救いたいという気持ち。

私が人々の道を切り拓いていくという意思。


そういう物が伝わっていくようにしていきたいと、私は想いながら筆を走らせるのであった。

正直このウルティハ&エスセナ編、滅茶苦茶難産で自分の中でも内容が二転三転したのでいつかしっかり纏めて書き直したいくらいなんですが……書き続ける事が大事、というわけでとりあえずはこのまま書き続ける事にします。まあそういう機会が来たらラッキーという事で。そろそろこのウルティハ&エスセナ編も終わりが見えてきたので、頑張って書いていきたいと思います。……年明けまでには間に合うといいなぁ(淡い願望)

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