完成と決意
「んん、んぅ~~っ……はあ。」
「終わったぁ……。」
「二人ともお疲れ様、本当に良く頑張ったね!」
「ええ、本当に、全く持って本当に。勉強とはまた違う意味で頭を使い続けた気がするわ……。」
「だああ、しばらくは研究もしたくねえくらい。マルニ、フレリスさんから何か差し入れ貰ってねえ?」
「今日はパウンドケーキがあるわよ、皆でお茶にしましょう。」
「よしっ、なら今日は僕がお茶を淹れよう!僕も最低限接客の練習をさせられたからね。」
「フレリスさんより上手く淹れられたらアタシ様が褒めてやる。」
「はっはっは、それはまた難易度の高い要求だね!」
「皆お疲れ様だ。内容に関しては君達に任せていたから、私の出番はここからだな。といっても私は裏方だが。」
「先生も辞書だったりで言葉選びを手伝ったりしてくれたじゃないですか。感謝してますよ。」
「なに、先程も言ったが私はあくまでも裏方だ。それくらいの支援はするともさ。」
「ふふっ、撮影もお願いしますね、先生。」
「ああ、頑張るとしよう。」
あれから数日が経ち、ようやく台詞の大まかな方向決めが終わった。
台詞を考えるだけでまさかここまで時間と労力がかかるとは思わなかった。
これを一か月もかからずに大部分を書き上げたエスセナはやはり才能という物が違う、という物を実感する。
ただただ文章を考えるだけなら授業とかの学校の授業なら出来るけれど、こういった物語を書き上げるという物がここまで大変だったとは。
私が特別才能が無いのかとも思ったが、ウルティハも同じように苦戦していたので多分そういう事では無いのだろう。
とは言え……これで安心してる部分もあるが、そうとも言い切れない。
あとは演技の練習をして撮影をして映像を纏める……のだが、演技の練習の方はエスセナに考えがあるらしく、そこはあまり心配しなくていいらしい。
まあ自主的に撮影の練習をウルティハと二人でやったりしていたので全く練習していなかったわけでは無かったが……それだけで安心出来る程簡単ではない事くらいは私でも分かる。
果たして、一体どういう考えがあるのだろうか。
それにそこを乗り越えて撮影になるが、こっちはこっちで違う問題がある。
前世であったCGで怪物を作ってそれっぽく見せるのではなく、実際に魔獣や魔物と戦って撮影するのだ。
予定通りに行く、という確証は何処にもない。
魅せる様に戦いながら、演技をするのだ。
台詞は間違えられない、魅せる戦いをしなければならない、ましてや負傷などするのは論外と言えるであろう。
それを弱い相手にやるのならまだ楽かもしれないが、ある程度の相手にやらないと今度は説得力が出ない。
……最初は良い案かと思っていたが、これってかなり前途多難な選択だったのでは?と思ってしまう。
(いけないいけない、ポジティブシンキングポジティブシンキングっ)
つい心がネガティブな方に流されそうなのを深呼吸して頭を回して気を強く持つ。
気持ちも大事だが頭を働かせるのも大事だ。
両方とも動かして最高の結果に辿り着く為に頑張る。
単純かつ明確な事だ。
私は三人に気づかれているかはわからないが、気持ちを引き締めるのであった。
そして、演技のレッスン期間が始まったのだが……ここでエスセナが用意した「秘策」、の内容を私達は知る事になったのだが、その内容については、諸事情により後に語る事にしよう。
とりあえず今言える事は、この期間のエスセナは物凄く恐かった、という事だけは語っておく。
どれくらいスパルタだったかと言うと、私やウルティハはもちろん、とある事情によりジュビア先生すらもエスセナに怒られていたくらいだった。
お陰でしばらくはエスセナがちょっと恐くなりそうだ……。
だが、この地獄のレッスン期間の内にしっかりと戦闘の連携の訓練も行っていたのもあって、この後の撮影は何とか成功する事が出来た。
まあハプニングや問題が無かったわけではないが……それも含めて後に語る事にする。
そして、映像の編集作業も終わり……。
「「「終わった~~~……。」」」
「流石に…私も疲れたな……。」
「皆さま、お疲れ様です。」
私達三人は疲れのあまり倒れこむ。
床に倒れている姿は傍から見たらはしたないと思われる事間違いなしだが、もう疲れでそんな事も言ってられない。
その証拠に、教師である筈のジュビア先生も注意する力も無く机に突っ伏している。
元々あまりそういう事を注意するタイプではないとはいえ、今の疲労はそれどころではないという事であろう。
そしてフレリスも敢えて注意しないのだろう、近くの机に紅茶を置いて労いの言葉だけで留めている。
普段はフレリスは学園には入れないが今日は申請して許可を取っておいて良かった。
これでフレリスが居なかったらもしかしたらそのままうとうとと寝てしまっていたかもしれない。
でも、これで何とか発表出来るようにはなった。
後は魔導機の配備などを確認する必要があるが……やるべき事はほとんどやった。
「ついにここまで来たわね……。」
「ああ、来てやったぜ……。」
「来てしまった、のかもしれないよ……?」
三人、それぞれ言葉を交わす。
私もだが、恐らくウルティハもエスセナも天井を見ながら呟くように言葉を交わす。
動く気力が無いというのもあるが、少し照れくさい気持ちもあるかもしれない。
そのまま会話を続ける。
「これが上手くいけば、僕の実績となって、まだ演技の道を目指していい理由になるかもしれない。」
「不評だったら逆にこのまま技術が無駄になるかもしれないけどなー……。」
「不吉な事を言わないの、唯でさえ僕達の努力を無駄にするわけにはいかないんだから……。」
「そうね……でも、出来る限りの事はやったわ。」
私は天井に向かって手を伸ばす。
上手くいく確証なんて物は無い。
むしろ、上手くいっても拍手喝采を簡単に得られるとは思っていない。
それでも……。
「意味はあった。私はそう感じてるわ。……だから、それをシレーナの人々に伝えに行きましょう。」
「……そうだね。」
「ああ。」
向かうは、いざシレーナ。
この世界でやった、「最初の精一杯」を、見せに行こう。
ある意味今回のお話で、映画で何をやろうとしているのか勘の良い方は気づくのかもしれないな……と思いながら書きました。まあとはいえ、ようやくここまで来ました。いよいよクライマックスです。このお話をどうぞ最後までよろしくお願いします。




