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魔導機と顧問と再チャレンジ

「さて……これでいいかな?」

「どれどれ……おお良い感じだぜセンセ!」

「そうですね、なかなか初めてにしては良い感じだと思います。」

「全く、私はこういった芸術に関してはあまり明るくないのだが……。」


ジュビア先生の持つ機械から魔法を発動させて、どうなるか確認してみたが、思う以上に上手く行ったようだ。


この機械は魔道具、「魔導カメラ」だ。

私の分かるカメラの知識と、ウルティハの魔法や魔道具の知識と、ジュビア先生の考古学などから考えた魔道具の構造の意見を組み合わせて作った試作品である。

エスセナからも直接意見を聞けたら良かったのだが相変わらず忙しいみたいで、意見を聞けなかったのであくまでも試作品だ。

まあそもそも自分達は魔道具を作るのが目的ではないので、これが完成するかも分からないし、仮に完成した所でこれを世間に広める、という事にはまだまだならないだろう。

なにせ、この魔法の中心は【偉大なる役者、エスセナ】の魔法なのだから。


この魔道具の構造は完全には把握はしていない、専門的な知識も結構盛り込まれているらしいからだ。

もともとの形自体は私が絵でざっくりと書いて伝えたのだが、それを完全に再現した、というわけでは無い。

レンズは眼鏡を作る要領でなんとか作り方は考えたが、当然前世のカメラのような機能を機械的に作る、というわけにはいかないのでそこを魔法で補う形になった。

例えば、ズーム機能は付いているのだが、構造はレンズの枚数を増やす機能を試したりしたが、結果的に身体強化の要領で視覚、視野をレンズと結びつけて映す範囲や距離を変える、という方向で落ち着いた。

これは最初から撮影役が決まっていたからこれで良かったというのもある。

また、フィルムやSDカードのような記憶媒体の代わりをどうするかも考えた。

カメラ、といっても写真のカメラとは違うので、動画撮影を中心として考える必要があった。

デジカメなどのように電子データとして記憶できない、かといって物理的に記憶するのは多分難しいだろう。

どう考えても物理的に重くなったりしてしまう。

かといって、それなりに長い映像を記憶出来ないと意味が無い……。

というわけで、今回は私からある提案をした。

銃のリボルバーのように魔法を記憶した宝石を装填、その宝石に込められた魔法でカメラに映る景色を記録。

そして、記録が終わるとそのシリンダー自体が回転、次の撮影の準備が出来るという事だ。

これは私が魔力通話を宝石を媒介にしている事から思いついた物だ。

言ってしまうなら、あれが魔力通話ならこれは魔力を使った、「魔力撮影」。

撮影が終わった宝石は取り出して、魔力を通して宝石に込められた魔法を発動させてその映像を見る事が出来る。

宝石としての純度や加工などが余り良いものではなくともそれなりに使えたのは嬉しい誤算だった。

宝石と言っても、産出量の多い原石を形だけ加工して貰えばそれだけで使えるので、恐らく貴族である自分達が材料費に悩まされるという事は無いだろう。

そして、それはシレーナでこの魔導カメラのアピールにも使える。

舞台でどれだけお金が動くのかまでは知らないが、流石に自分でも高すぎたらなかなか手が出せないであろうという事くらいはわかっていたからだ。


「しかしまあ、これほど上手くいくとは思ってはいなかったよ。このよく分からないもの……かめら、と言ったか。これで視界に映るものを記録する事が出来るとは、これは遺跡などの記録にも役に立ちそうだ。」


興味深げにジュビア先生が試しにカメラを使って試しに撮影してみる。


ジュビア先生には、前世の話はしてはいないが【偉大なる役者、エスセナ】の魔法は教えた。

最初は意味が分からないといった感じだったがこれまでの経緯やこの魔法についての事を、話せるだけ話したらある程度は納得してくれた。


「しかし、君達がやりたい事は大体言いたい事はなんとなくわかったが、それをまさか私が手伝う事になるとは……。」

「そこは……本当に申し訳ありません。」

「迷惑かけるのはほんとの悪いとは思うけど、ジュビア先生以外に頼れそうな人が居ねえんだよぉ……セナは映る側だから当然映す側に回れないし、他に頼れそうなのがフレリスさんくらいしか居ねえし、そのフレリスさんはあまり他の貴族に堂々と出るってわけにはいけねえしぃっ。」

「フレリス……確か、マルニーニャ嬢のお付きのメイドだったか。確かに、貴族同士の話に従者が前に出てくるのは良い思いはしない人も居るからね。それなら私のような貴族にも話を付けれる私達教師に頼った方が良いのは確かだ。まあ、他に頼れる友達や先輩、教師が居ない事については少々言いたいこともあるが……。」

「「うっ……。」」

「全く……まあ、ちゃんと大人に頼ったり出来る事は確かに褒められる事ではあるのだが……。」


先生が伊達の眼鏡を軽く整えながら言う。

先生の言う事はもっともだ。

私達がこういう時に頼れるのは、ある程度私達にも理解を示してくれるジュビア先生かフレリスくらいしか居ない。

もっと味方を増やした方が、今後王族と関わったりする上で有利なのでは?とも思った事がある。

だが、以前それをウルティハに話した時、「それはちょっと困るんだよなぁ……。」と、難しい顔をされた。

どうやらウルティハにはウルティハの考えがあるらしく、敢えて周りとの交友は絞っているらしい。

まあ、私達三人ともあまり周りの令息令嬢からあまり良く思われていないから、今から仲良くなる、という事は難しいかもしれないが、それでも私は、仲良く出来るなら仲良くしたいなぁ……とも思わなくもない。

……まあ、私は「悪役令嬢」なのだから、その分他の人の傷を大きくしなくていい、という意味では私も仲良くする人を絞るのは必要な事だとは思うが。


逸れそうになった思考を元に戻す。


「それで先生、私達の撮影役、引き受けてくれますか?」

「ふむ……。」


そう。

私がジュビア先生に頼んだ事。

それは、ジュビア先生に私達の撮影役をしてもらいたい、という事だった。

私達だけの撮影では不足していた、様々な視点からの撮影。

そして、撮影する人による映像の魅せ方。

それを頼れるのはジュビア先生しか居なかったのだ。


それに対するジュビア先生の返事は「まず何をすれば良いのかがさっぱり分からないから、私にやらせたい事に指標を作りなさい。」という事だった。

ジュビア先生にやってもらいたい事。

それは、私達を撮る、という事をしてもらいたい。

その為の指標を作る、という事で、まずはそれの為に必要な道具、この魔導カメラを作る事にしたのだ。

この魔導機でどういう事が出来るのか。

この魔導機がどういう事をする物なのか。

この魔導機で、どういう事をやってほしいのか。

それを示す事が出来ると思ったからだ。

……作る過程でジュビア先生自身からも意見やアドバイスを貰えた辺り、そもそもジュビア先生もそれなりに乗り気だった気もするが。

多分、ジュビア先生は、私達のやる気が本当にあるか、それをする為に考えはあるのかといった所が見たかったのかもしれない。


「……なら、私からも提案がある。」

「提案……ですか?」

「君達の研究会も、一応非公式とは言えクラブとしての活動だ。今後人数を増やして活動する予定もある……だろう?」

「ああ、アタシ様のプラン的にはそのつもりだ。」


そういえば、前にウルティハが言っていた王族との繋がり。

それの事を恐らく言っているのだろう事は何となく分かる。

私も王族には関わりたいからそれについては大賛成だ。


「つまり、人数が増えてクラブとして成立させれる……そしてその為には、顧問となる教師が必要だ。……そして、ここに居る私は、まだ顧問を担当しているクラブは無い。」


へら、とジュビア先生は、笑う。

軽い笑みだが、その笑みには妙に目が離せなかった。


「ってことは……ジュビアセンセ、アタシ様達の顧問になってくれんの!?」

「それは、私としてもありがたい話ですね。」


……冷静に対応しているように見えるかもしれないが、実は私も内心興奮している。

というか、顔がにやけていないか心配なくらいだ。

あの攻略キャラの一人であるジュビア・ウービエント先生が私達の顧問になってくれる。

私達の為に時間を割いてくれるというのだ。

この「やがて光の君と共に」の世界が大好きだった私から考えると夢みたいな展開だからだ。

(あくまでソルスの為あくまでソルスの為あくまでソルスの為あくまでソルスの為あくまでソルスの為……!!)

そう自分の心に無理矢理言い聞かせるくらいに。


「まあ、あくまでも仮の顧問としてだ。また正式に顧問になるようになったら君達に話す事にする。というわけだ……では、私を顧問として依頼したい気持ちはあるかい?」

「「はい、もちろん!」」


「ふっ……では、君達の顧問としての初仕事、引き受けようではないか。」


こうして、新しい顧問を加えての、撮影の再チャレンジが始まるのだった。


今月の大きな用事が無事に済んだので、また執筆を再開していこうと思います。しばらくはおそらく執筆に集中できると思うので頑張ります。さて、この回、すぐに撮影シーンを入れたかったのですが、諸事情によりかなり予定より回り道してジュビアに顧問の先生になってもらうことになってもらいました。この方が後々便利だから、というのもありますがジュビア自身の出番も増やしたかったので……。次回はまた頑張らなければいけない回です。もちろんいつも頑張ってはいますけどね。

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