アクションは戦闘開始の合図
再びの依頼。
今回は狼型の魔獣の討伐依頼である。
本当はゴーレムの依頼をまた受けたかったし、依頼自体は来ていたのだがウルティハが「考えがある!」と言っていたのでこの依頼にする事になった。
……そういえば、最近受けたばかりのゴーレムの依頼がまた出ていたのは、この世界がゲームの世界だからだろうか、それともそれだけ沢山の魔物や魔獣が居る、という事だろうか。
どちらにしても、この世界の、特にこうやって依頼を出したりしなければいけない地域の人々は大変だなと思ってしまう。
何か良い方法は無いものだろうか……と思うも、そういう時に限って有用なのは基本的には光属性の魔力なのである。
むしろ闇属性の魔力は魔物を呼び寄せやすい傾向にある。
魔物を沢山集めて一気に一網打尽!と行けるならいいのだが、私には生憎、まだそこまで一騎当千と言えるような力は無い。
何か罠などでも作れれば良いのかもしれないが……。
と、そんな風に考えていながら依頼の指定された森に向かって歩いていた所だった。
「なあなあマルニ、これこれ。」
「うん……?これは……何かしら、この本は?」
ウルティハに渡されたものは薄く小さな、ちょっとしたノートのような本であった。
パラパラと軽く開いてみると、そこには様々な……哲学書?名言集?のような中身であった。
「これは何かしら?」
「ふふーん、これがアタシ様が作った演劇に使えるセリフ集ミニ版だ!]
「セリフ集ミニ版……?」
私は改めてその本を見る。
……なるほど、書いてある内容は確かに哲学的名言のような物もあるが、どちらかと言えば大衆演劇みたいな物に近い物である。
私もそこまで演劇や創作物に詳しいわけでは無いが、前世で見たようなセリフも沢山並んでいた。
なるほどなるほど……。
なるほど……なるほど……。
「……こ、これは何かしら?」
先程と同じ言葉。
でも多分、今の私の顔は多分赤くなっている気がする、頬が熱いと感じるからだ。
そんな私を見て私の視界の端から見えるウルティハの顔はニヤニヤと笑っていた。
私の顔がよほど面白いらしい。
むかつく、一発殴ってやりたい。
けれど殴るわけにはいけない、私は令嬢、私は令嬢なのだ。
久しぶりにそう自分に言い聞かせた。
「全く……教師という立場からすれば説教ものなのだが。」
「「うっ。」」
後ろから着いてきていたジュビア先生からの一言に固まる私とウルティハ。
今までの話をちゃんと後ろから聞いていたらしく、ロボットのようにギギギ……と私達は振り向くと半目でジトーっと見つめている。
因みにジュビア先生は今回二つの魔導カメラを持ち歩いている。
普通の手持ちカメラとプロトタイプの三脚付き大型カメラだ。
荷物持ちをジュビア先生が買って出たのでジュビア先生に任せている。
やはりこういうところは攻略キャラらしい所なのだろうか。
重いだろうし私も騎士志望だから一つくらい持とうかと思ったが、「いや、私も教師でありこれからは顧問だ。こういう生徒の手伝いくらいはしなければならないよ。」と言われたので任せる事にした。
「全く……君達の事だから遊んでいるわけではなく真剣にやっているのだろうが、それでも少々浮かれすぎだぞ。」
「「す、すいません(ごめんなさい……)」」
小さく頭を下げる私達。
「しかし……台詞やポーズを付けながら魔物や魔獣を狩る、か。それは確かに見栄えはするだろうが、少なくともそれは今までは曲芸の一種だ。それに私も一応隠れてやってみるとは言え、私の方に来る可能性も無くは無い。そこら辺はどうするのかな?」
「先生の方に来ないように警戒しながら立ちまわります。つまり、先生を守りながら戦うわけですね。騎士として、対象を護衛しながら立ちまわる事は多いでしょうし……その訓練にもなるという事で。」
「ふむ、まあ、確かにその練習としては私は良い練習台だろうな。いざという時の自衛も私も出来る私ならどうにかなるだろう。……それに、ある意味その危険さもその映像、という物は良いのだろう?」
「それは……確かにそうですけれど、私からは頷きにくいですね……。」
私は思わず苦笑する。
カメラマンは危険な映像を撮る事もある、というのは前世の記憶からもあるし、確かにそれを評価する話もあるが、私からそれをやってほしいなんて言いづらい。
ジュビア先生の実力に関してはあまり知らないが……自衛出来るという事はある程度は戦えるという事なのだろう。
そこは任せてよさそうだ。
そんな風に話しながら森を歩いている所であった。
「……さて、そんな事を話していたらいよいよ出番らしい。」
そう言いながらジュビア先生は立ち止まる。
私も気配を察知したが、まさか騎士志望の私よりも察知が速いとは。
……ジュビア先生がゲームの中で戦うシーンは少ないがあった。
蹴りや暗器、風属性や水属性の魔法を使うのは覚えているが、どれだけ強いか、までは流石にゲームの中ではあまり描かれなかったが、もしかしたら、ジュビア先生はかなりの実力者なのかもしれない。
例えば、戦い方的に偵察や奇襲が得意そうだ。
……確かジュビア先生のルートだと、ウービエント家との確執を解決していくお話だったけれど……いずれソルスも解決しなきゃいけなくなるのだろうか。
……思考が逸れた。
私は警戒体勢に、ウルティハも私の行動で気づいたらしく魔法の準備の為に魔力を高めている。
ジュビア先生は、早速近くの茂みに隠れて撮影の準備に入った。
今の場所は森の中でも開けた場所。
茂みや木々はあれど、視界を遮る物はあまり無い。
戦うにも……そして撮影にも良い場所だ。
これは運がいい。
「グルルル……。」
「ガウ……。」
視線の先からは数匹の狼の魔獣が現れる。
その唸り声は、縄張りに入られて機嫌が悪いのか、それとも腹でも空かせているのか。
どちらにしろ、私達への敵対心は、全く隠れていない。
まあ、獣が敵対心を隠す、などといった事をするのかは分からないが。
何にせよ、私達を牙と爪による暴力の宴による歓迎をしようとしているのは間違いない。
「げんしゅ……わっ!?」
いつものように現出をしようとした。
が、そこで肘で後ろからウルティハに小突かれる。
「な、なによ……!?」
若干怒りそうになりながら振り向いて後衛担当をするウルティハに文句をつけようとする……が。
ウルティハは顔を軽く動かして視線を誘導しようとする。
私はその誘導のままにその方向を見る。
見るとその先は茂み。
その中から、何かが反射して光を放っているのが見えた。
(……なるほど、そう言う事ね……)
やれやれと私は小さくため息をつく。
どうやら「やれ」、という事らしい。
私は先程目にした文字達の中から、とりあえず何か無難な物を頭に浮かべて、それを口にした。
「世の中の安寧を乱す魔獣共、私達が成敗してくれる……現出!」
闇属性の魔法を使う私の方がどちらかというと世の中を乱しそうと思われそうな気もするが……細かい事を気にしていたらそれ以上の恥ずかしさに負けてしまいそうになりそうな気がするので気にしない、気にしない。
私はそう言い聞かせながら雷属性の槍を現出した。
「アタシ様の魔法の餌食になりたい奴から、どこからでもかかってくるがいい!」
私の台詞を合図としたのだろう。
ウルティハも台詞を言いながら魔力を高めて魔法の準備をする。
なんだか台詞がどちらかと言えば悪役くさい気がするのは気になるが。
「ガオウウウウウウ!!!」
「アオーーーーーン!!」
狼の魔獣が言葉を理解している筈もないとは思うがどうやら挑発であるという事は理解したらしい。
魔獣達は雄たけびを上げて開戦の意思を示す。
ここまでは何とか上手く行ってる。
後は、上手く立ちまわる!
それを頭に意識しながらの魔獣討伐が開始するのであった。
肉体的にもメンタル的にもだいぶしんどくて予定よりだいぶ更新が遅れました……すいません。連載をコンスタントに続けるのも大事ですが自分の体をいたわるのも大事……バランスをとるというのは難しいものですね。もっと自己管理をして沢山小説を書けるようになりたい物です。




