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授業開始と新たな出会い

「この国、インフロールの歴史は『歯抜けの歴史』と言われている。それは過去の歴史の記述が特定の時代だけすっぽりと抜けている事が大きな理由であるのだが…。」

ホームルームが終わった後、早速ジュビア先生の授業が始まった。

今日は歴史と魔法の座学のみだ。

平民出身や私のような地方貴族、中央の貴族や王族など様々な所から来た人間が集まっているのだ。

もちろん入学する為の入試もあるので、ここに来れた時点である程度の学力は保証された人間ばかりだとは思うが、それでも最初の授業、足並みを揃える為に比較的簡単な授業となっている。

(そう言えば歯抜けの歴史、かぁ…私がゲームで知らない世界の歴史を知ろうとしたら歴史が所々分からないんだからびっくりしたんだよなぁ。)

そう思っていたら歩いていたジュビア先生が教壇に戻って足を止める。

「さて、君達なら分かるはずだがあえてここで問題だ。なぜインフロールの歴史が『歯抜けの歴史』と言われているか、記述や本が残っていないこと以外の理由を一つ答えてみてくれ。」

ジュビア先生からの最初の出題に、私も手を上げてみようとしてみる…が。

まるでここで出題されるのがわかっていたかのように手を一人の女の子がバっ、と手を上げる。

「エスセナ嬢、どうぞ。」

ジュビア先生に名前を呼ばれた女の子は立ち上がる。

灰色と水色が混じった特徴的な髪色に、少し白っぽい色の瞳を持つ少し小柄な、可愛らしい少女の瞳は自分の自信を表すかのように輝いていた。

「はいっ、様々な理由があるが僕としては、抜け落ちた部分の文化、文明の証拠になる物などが見つかっていないことをあげようじゃないか!当時の文化がどのようだったのか、当時の人々はどのように暮らしていたのか…想いを馳せるとワクワクで私、このエスセナ・デ・ヌエ・アクトリスの胸のトキメキも止まらないよ!」

「………。」

まるで芝居のような情熱的…というか勢いのある答えに教室の空気が固まる。

なんというか、僕と言ったかと思えば私って言ったり、なんか問いの答え以外にもなんか色々付いていたりしていたが、それ以上に思うのが…。

(エスセナさんって、変な人なのかな…)と思った事であった。

多分クラスの人の大体の人も同じ事を思ったであろう。

それに対して当のエスセナ嬢本人はやりきったとばかりに満足げな表情で席に座っていた。


エスセナ・デ・ヌエ・アクトリス。

私もこの名前を知っている。

と言っても、彼女の事は元々知っていたわけではない。

ゲームにそんな名前の人間が出てきた覚えは無いからだ。

私が彼女の名前を知ったのはこの世界に転生してきてから、社交界などで噂を聞くようになったからだ。

なんでも、変わり者の令嬢二人組が居る、と。

その一人であるエスセナ嬢は貴族でありながら、役者として舞台に立つ事を目指していると。

それをアクトリス家では引き留めたいらしいが、彼女の天才的な演劇の才能に様々な劇団がスカウトをかけようとしている、と。

そしてそのエスセナ嬢と仲が良いもう一人の貴族令嬢が…


「…ごほん。個人的な感想は置いておいて、正解だ、エスセナ嬢。確かにこの抜け落ちた時代の文化…つまり祭りや儀式、風習や文化的な工芸品等も見つかっていない。だから学者はもちろん、我々のような教師も研究を日夜続けており…。」

考えていたらジュビア先生の声が聞こえたので思考を止めて、授業をしっかり聞く事にした。

まあ思い出す事くらいはいつでも出来るだろう、と。

結局授業は無事に終わりまで続いた。



「さて、魔法の授業を始めましょう!今日は座学の授業ですけど今後はしっかり実技の授業、対人訓練や外で魔物相手の実践的な授業もありますからね!」

魔法の授業は女性の先生…年齢は30代くらいだろうか。

茶髪に茶色の目のいたって普通の人、という感じの見た目だ。

「さてさて、魔法の授業の基本的な授業と言えば魔法の内容から…と思うかもしれませんがその前に、魔法そのものからのおさらいです!まずはそうですね…属性について話せる人…。」

先生が言い終わる前に、ある女生徒が手を上げた。

女生徒は立ち上がる。

その姿はかなり大きい…私も女性の中では背や胸も大きい部類だと思っていたが、その生徒は多分身長は170cmくらいはありそうな、まさにモデル体形と言わんばかりの美人だ。

髪は水色に緑のメッシュが入り一つ結びにしてあり、瞳は青に小さくピンクの入ったツートンカラー。

一見明るい人に見える風貌だが、その人の表情はにやり、と少し攻撃的に見える笑みが浮かんでいた。

「基本的な魔法の属性は炎、水、風、土の四属性!しかしそこから派生された属性は幾つも発見されており、雷、氷、熱、木などが発見されていて、更に属性の性質を全く持たせない純粋な魔力を使う無属性や、極一部の人にしか発現しない光、闇属性が存在している!更に研究によれば人の得意な属性はその人の髪色や瞳の色に現れやすいとされており…。」

「ま、待って、待ってちょうだいウルティハ嬢!授業の先まで言わないでちょうだい!」

「ああん!?アタシ様がわざわざ解説してるってのに止めろってかぁ!?」

見た目と違ってまるで不良みたいな話し方に豹変したウルティハ嬢。

しかしその口調とは裏腹に顔はにやにや笑っている。

どうやら困らせて楽しんでいるらしい。


ウルティハ・インベスティ。

先程のもう一人の変わり者の貴族令嬢である。

彼女は貴族とは思えないくらい乱暴そうに見える態度と、そこからは想像がつかないが魔法の研究をしているらしい。

なんでもインベスティ家が代々研究家気質な人間が多いらしく、彼女も御多分に漏れず、魔法の研究家として有名らしい。

先程のエスセナ嬢と仲が良いらしく、エスセナ嬢は「役者奇人」、ウルティハ嬢は「魔女」と呼ばれているらしく、貴族の間ではどちらかと言えば悪い意味で有名な二人である。

主に態度や言動、行動が原因で…。

因みにウルティハ嬢もゲームには登場しない、この世界で初めて聞いた名前である。


結局授業はウルティハ嬢と先生の研究の発表のし合いみたいになり、授業内容はあまり進まなかったが授業内容自体は非常に高度な内容となった為私も途中から専門的な内容すぎて着いていくのは断念した。


「んん…疲れた…。」

初めての授業、初めての放課後。

私は今日一日の学校が終わって伸びをする。

本格的な授業はまだまだだが、やはり黒野心としては久しぶりに、マルニとしては初めての授業故か疲労が溜まった。

授業ではいろいろあったがこの疲れにもどこか心地よさがある。

このまますぐに寮に戻ってフレリスと話ながら夜を待つ…というのもアリだが、せっかくの学校だ。

サンターリオ学園の中を見て回りたい。

多分また違う日に学園の施設の案内だとかをしてもらえるとは思うが、それはそれ、これはこれ。

まるで探検に出かける小学生か冒険に出かける旅人のような気分で私は学園の探索に行こうと教室の扉を開けた。

……エスセナ嬢とウルティハ嬢が二人して何故か立っていた。

「……。」

「………。」

「…………。」

扉を私は閉めようとしたがガッ、と扉をウルティハ嬢が掴んだ。

思ったより力が強い。

「え、えっと…え、エスセナ嬢、ウルティハ嬢、ごきげんよう。な、何か用かしら。」

「ごきげんようマルニーニャ嬢、もちろん用さ!」

「アタシ様達はマルニーニャ嬢に用があるから待っていたんだからよぉ!」

「私に用…?な、何かしたかしら?記憶には無いのだけれど、確かお会いするのも初めましてだった気がするのだけれど…!」

なんだろう、なんだか嫌な予感がする、なんというか、トラブルが身近に迫っているような、そんな感覚がする。

「もちろんマルニーニャ嬢はなぁんにもしてねえよ、だってこれからしてもらうんだからな!」

「そう、僕達の為に是非協力してほしいのさ、君が同じクラスだから手伝ってほしくてね!」

「私に協力…?」

全く分からないがとりあえず何か因縁を付けられているわけでは無いのはわかった。

私がつい扉を引く力を弱める。

その時だった。

「というわけで……行くぞオラァァァァァ!!」

「えっ、ちょっ…!?」

私はウルティハ嬢とエスセナ嬢に両脇に腕を組まれて抱えあげられる。

というかウルティハ嬢とエスセナ嬢は身長差がある…というかエスセナ嬢は私より身長も体格も小さいのに対してウルティハ嬢は私より身長が大きいから左右のバランスが悪くて抱えられている感覚がしない、というかちょっと痛い。

そしてそのまま二人は私を抱えたまま走り出した。

「ハッハッハ、ハーッハッハ!!」

「ちょっ、とぉぉぉぉぉぉぉ!!!?!?」

通りがかりの生徒や先生に恐らくぎょっとした視線を向けられながら、私は放課後の学園の中を凄い勢いで二人に引っ張られて行った。




新しい登場人物の登場は展開の幅が広がるのと同時にそれぞれのキャラクターの深堀とかを考えるので大変でもあります。そこも楽しみの一つと言えますが。

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