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転生悪役令嬢はヒロインの影になりたい  作者: 大蛇山たんと


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美しき華の王子

話し合いの結果、このまま予定の通り遊覧は続ける事になった。

やはり部隊は盗賊の連行部隊と、護衛に残る部隊に分かれて行動する事になった。


「大丈夫なんですか?相手の狙い通りな展開かもしれないのに……。」

「裏をかこうとするのは大事ですが、今はまだ情報が少ないですからね。敢えて相手の罠に分かった状態で飛び込めば、こちらの損害は少なく済む可能性が高いですから。」

「なるほど……。」


不意打ちではなく、敢えて罠がわかった状態ならこちらも警戒して行動出来る。

今まできっと、こういった罠があるような任務も少なくは無かっただろう。

それでも、こうやって真正面から潰そうというのは、それが出来るという自信があるという事、そして、それをやってきた実績もあるという事なのであろう。

なので、私はこれ以上は疑問は挟まない事にした。

それに……。


「この刻印……もしや……。」


そうカサドール騎士団長が言っているのを私は聞いていた。

何か私達の知らない、思い当たる物がある、という事なのだろう。

ならば、私が何かを言う所では無い、そう判断したのだ。


秋に咲くサクラ、アキサクラをリジャール王子とベルナは見ながら、私達の方は予定通りの配置に着いた。

この辺りのサクラの配置もしっかりと事前に渡されていた資料に記入してあったので、私達は特に迷う事なく配置に着く。

もちろん、この遊覧は二人の為の遊覧の時間だ。

だから、私達は気を抜くわけにはいかないが、だが同時に配置に着く前にリジャール王子にこうも言われた。


「マルニーニャ嬢、ティエラ嬢、お疲れじゃないかい?」

「いえ、まだ遊覧は始まったばかりです。こんなところで疲れたりなんてしていられませんよ。」

「アタクシもまだまだ元気いっぱいですわ!ご心配には及びませんことよ、リジャール王子殿下!」

「あはは、それは良かった!ボクの心配も不要だったようだね!……でも、肩の力は抜いても構わない、という事は忘れないでくれたまえ。」

「肩の、力……ですか?」

「アタクシ達、そんなにガチガチでしたの?」

「マルニーニャ嬢は緊張気味だったし、逆にティエラ嬢は気合が入りすぎているように感じたからね。」

「う……。」

「そ、そんなことは無い……はず、ですわよ……?」


私もティエラもリジャール王子から目を逸らす。

お互いに図星というか、思う所があったという事だろう。

事実、私も、内心少しピリピリしている所があった気がする。

そういう心の機微を読み取るのは、王子という身からすれば得意なのだろう。


「ボク達王族、もしくは地位の高い貴族は我儘を言う事をある意味では許された身分ではあるが、それはそれとして今回の遊覧はボク達のある意味我儘で行った事だ。なら、君達にはもちろん騎士志望として騎士の務めを果たしてもらう責務はある。だけど……ボク達と同じように、少し上を見上げて、美しい華に思いを馳せるという瞬間があっても構わないと、ボクは思っているんだ。」

「上を……。」

「見上げる……ですの。」


私とティエラはゆっくりと上を見上げた。


はらり、と花びらが舞う。

季節は秋だ。

前世でもサクラの時期と言えば春だったし、それは今世でも変わらない。

それでも、前世でも秋に咲くサクラがあるのは聞いた事があったし、今世でもこのアキサクラは秋にその華を美しく咲かせる。

この街道……サクラ街道は、桜日から友好の証として送られたサクラの苗を植えて行って、次第に作り上げられた街道だ。

それはインフロールと桜日を結ぶ友好の証の街道であると同時に、中央都市であるコミエフィンを訪れる人々が華やかな気持ちでこのコミエフィンを訪れる事が出来るように。

そして逆にコミエフィンから出る人々が、この美しい光景をしっかりと目に、思い出に焼き付けられるようにと作られた物だ。

今回私達は、盗賊達を捕まえる事で、この街道を、そしてこの美しい景色を守る事が出来た。

そして、私達はここをこれから出て、この景色を、そして色んな花々の景色を目に焼き付け、思い出に刻み付け、そしてこのサクラの街道に戻ってくるのが今回の目的なのだ。

それを想うと、普段は目にすることの無いサクラは、自分の思っていたよりもずっと大事で、そして同時に自分の思っていたよりも美しく感じるのであった。


ふと、隣を見てみる。

ティエラの目は、ぱああっと擬音が聞こえそうなぐらいに輝いて見えた。

魔法を使うときの瞳の輝きとは違う、心の何かが動く瞬間のような輝き。

ティエラがどう想ったのかは、私には想像出来ない。

でも、私と同じように、もしかしたら、私以上に、何か想う事があったのは間違いは無いだろう。

それを見て、私はティエラの瞳も美しいな、と感じた。


「どうだい?何か、感じたかな?」

「はい……色々想う事はありますが……何より一番思ったのは、この景色を守る事が出来て良かったなと、そう思いました。」

「アタクシもですわ!この美しい景色を待ち伏せて戦いの場に変えるなんて、許せませんもの!」

「はは、君達の中で、感じるものがあるなら良かったよ。その感じたものを大事にしてくれ。きっとそれは、君達が騎士になっても大事な物になると、ボクは思うからね。」

「あ……ありがとうございます、リジャール王子殿下!」

「ありがとうございますですわ!」

「どういたしましてだよ、まあ、一緒に華を見るくらいの時間があってもきっと悪くはないさ、君達はまだ見習いなわけだしね。」

「王子殿下~、アタシ様達もゆっくりしたいから何か食ってもいいか~?」

「花より団子なんて言葉もあるけど、僕は食事も花見も美しくこなしたいからね、そういうわけで王子、僕達もゆっくりしてもいいかな!?」

「君達は逆にリラックスしすぎじゃないかい?」


リジャール王子はそう言いながらウルティハとエスセナに向かって楽し気に笑いながら言う。

はっきり言って、ウルティハとエスセナの態度はあまりにもマイペース過ぎて普通だったら不敬だの無礼だのと言われても仕方ない態度だが、それを気にするようなリジャール王子ではないのは分かっていた。

むしろ、それを楽しんで微笑むような人なのだ、彼は。

そして、そうするリジャール王子の姿と舞うアキサクラの花びらは、妙に美しく重なって観えた。

(この人には、敵わないかもな)

心の中でそう思いながら私は小さく笑った。


時間にして少しの時間。

だが、その少しの時間で、私の心は何処か少しだけ癒された気がしたのであった。



色々と作業ややり残した事を消化していたら書くペースが落ちてしまっていました。来月はゴールデンウイークは忙しいのでゴールデンウイークを過ぎたらもっとたくさん書いていけたらいいなと思います、頑張ります。

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