↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

婚約者

実はあの乙女ゲーム、攻略キャラの婚約者については詳しい設定は表示されなかった。まともに登場するのもマリアンヌ一人で、他は文句さえ言ってくる様子はなく、最初は婚約者がいるからと距離を置こうとするキャラもいたのに、好感度が上がる後半になると、その存在は忘れさられる。


だから私は最初、この子が誰なのか全く分からなかった。


「貴方ね!最近ロゼリー様に言い寄っているっていう迷惑女は!」


低身長金髪のツインテール。

高等部とは思えない幼い顔立ちの少女。


この少女こそ、原作には一切登場しなかったリクト・ロゼリーの婚約者だった。


迂闊だったかもしれない。でも、可愛い便箋にハートのシールで、キュンとするような丸文字で、放課後、南の噴水の前で待ってます、なんて書かれたら行きたくなるのはしょうがないと思うんだ。


「私はロゼリー様の婚約者なのよ!伯爵の娘、マリーシア・アーカー!覚えておきなさい!」


「マリーシア様。私はリリア・リルーラと申します。リクト・ロゼリー様の件については何か誤解があるようなのですが…。」


「言い訳なんて聞きたくないのよ!最近人目のないところでコソコソ密会してたんでしょ⁉︎ロゼリー様が女遊びを辞めたのは貴方が本命だからなんでしょう⁉︎」


私から誘った覚えはないのだが、人目のないところで何回かお茶をしたのは認めよう。しかし毎回リーゼも一緒にいたのだ。断じて密会ではない。


「婚約者がいらっしゃる殿方と2人きりで会うなんて、はしたない事は誓ってしていませんが、お茶を共にした事はあります。配慮が足らずに申し訳ありません。」


殿下と2人で踊った事に関しては拒否権がなかったので許してほしい。本当に悪いと思っているけど、分かってほしいのは、私はリーゼと2人でお茶してる時に割り込んでくるリクト様を拒否出来る身分じゃないし、仮に断ったとしても、


『断るの?男爵令嬢が?』


と言われるのが分かりきっているのだ。理不尽な貴族社会である。


「私だってね、最初はあんなチャラ男と結婚なんて嫌だったのよ。もっと誠実な人が良かった、この人とは幸せになれないって思っていたの。」


私が謝罪をするとマリーシア様はさっきまでの勢いを弱め、しょんぼりとした。正直、怒鳴られる方がマシだ。こんな可愛い、幼く見える少女に落ち込まれると胸が苦しくなる。


「でも、最近めっきり女遊びを辞めて、どんな女性にも冷たくなった彼が魅力的に見えて、この人が私だけを愛してくれたら素敵だと思ったのに…。」


だんだん涙目になっていく。

泣かないでほしい。マリーシア様が泣いたらきっと私も釣られて泣く。美しい噴水の前で初対面の少女2人が泣くのはシュールな図だろう。


「こんな可愛い本命が出来たなんてぇー!ロゼリー様の浮気者ー!」


ついに泣き出すマリーシア様。つまりは原作ではリクト様とヒロインが結ばれて婚約破棄されたとしても、元から婚約に反対だった彼女が文句を言う事は無かったが、リクト様が女遊びを辞めた拍子にギャップ萌えか何かで恋に落ちてしまい、原因だろう私に直撃したのか。


というか、そろそろ私も泣きそう。既に涙目になってきているのだ。


「ああ、泣かないで下さい!そうだ!甘い物は好きですか?」


「好きぃ…。」


限界を迎えて私も泣き出す前にこの状況をなんとかしなければ。

そこで私は餌付けという手段をとった。


「アーンして下さい。甘いお菓子ですよー。」


幼い子供みたいに対応するのは失礼だったかもしれないが、彼女は素直に口を開けた。すかさずチョコレートを放り込む。


「甘くて美味しい!ねえ、これなに?」


「チョコレートという甘味です。」


「もう一個頂戴!」


口をモゴモゴさせていた彼女は涙を止め、飲み込むと同時に笑顔になった。とてもチョロくて可愛いと思います。下から上目遣いで、私の制服の裾をグイグイ引っ張って次を催促する。


「どうぞ。」


「ありがとう!」


さっきまでの会話は彼女の中ではもう隅に置かれているのだろう。満面の笑みで渡したチョコを口に含んでいる。美味しいチョコは平和をもたらすらしい。素晴らしい事だ。


「リクト・ロゼリー様の目当ては私ではなく、この甘味だと思います。あの方も甘い物が好きなのでしょう。」


「そうなの?」


「ええ、私もいつリクト様がいらっしゃるかは分からないのですが、良ければ一緒にティータイムを過ごしませんか?リクト様と親睦を深められると思いますよ。」


「ええ!ええ!私もぜひ入れて!もっと美味しい物を紹介してちょうだい!」


リクト様<お菓子なのか、完全に甘味の方に食いついているが、私は可愛いお茶飲み友達が増えたので気分は最高潮だった。


周りの人達は良い人なのだけど、貴族らしいというか、この子のような純粋さはない。


リーゼは天使だが結構強かなので、ジャンルの違うマリーシア様は癒しだ。


「明日、リーゼとお茶の約束をしてるのですが、予定は大丈夫ですか?」


「大丈夫!私も何か甘味を持っていくから一緒に食べようね。」


「楽しみにしています。」


勝手に決めてしまったが、帰ったらリーゼに経緯を説明して、マリーシア様をお茶会に入れる許可をもらわないと。


本当に明日が楽しみだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。