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精霊使いの村  作者: 西玉
第三章潜入
21/38

21 追跡

 ガリギュアが見上げる屋根の上で、ティエラが空を見上げていた。王都を離れ、馬車を飛ばして三日を経た、街道筋の宿屋である。

 世界が丸いことを、実感を持って知る唯一の人間が、光の術者である。もし世界が平らであれば、最果てを肉眼で見ることが可能なはずなのだ。


 地面が丸いから、海原でさえ、対岸を見ることができない。

 ティエラは光を屈折させ、世界の裏側までも見ることができた。問題は、見るべき情報が世界のどこにあるのかが解らなければ大変時間がかかることと、見ることのできる時間帯が限られることである。


 昼間は光が強すぎ、夜は逆に光が弱すぎる。目を傷めないため、直接見ることのできない場所を見るのは、明け方か夕刻に限られていた。

 朝と晩に苦労して、計六回、三日目の朝に、ティエラはシリウス達を見つけていた。


 ティエラは女性としては小柄なほうではないが、それでも身軽だった。

 地面で見上げているガリギュアを見つけると、まるで猿のように屋根の上から器用に降りてきた。


「モーデルは落ちついたのかい?」


 村を焼かれ、監禁され、さらに拷問までされていたモーデルは、深く傷ついていた。

 水以外の飲食をせずにただ震え、眠れば一時間とせずに悪夢に襲われてわめきながら飛び起きる。


 三日を経過した今でも、回復しているようには見えなかった。

 モーデルを見るたび、それを指示したエベリン卿のために働いていることが、ガリギュアを憂鬱にさせた。


「相変わらずだ。それより、アルバ王女はみつかったのか?」

「ああ。馬を全力で走らせれば、向こうの都で追いつくだろう。ただし、一人じゃない」


「シリウスのことなら俺がなんとかする。それまでにモーデルが回復すれば、アルバはモーデルに任せればいい」

「そう簡単にいけばいいけどね」


 ティエラは宿の入り口に向かいながら言った。朝ごはんが待っているはずだ。ガリギュアは、朝食ができていることを教えるためにティエラを探していたのだ。


「問題があるのか?」

「エリスとユーリーが一緒だ。村に帰ったと思っていたのにね。何者にも束縛されないっていうのは、二人らしいね。風と水の術者の鏡だよ。慎重にやりなよ。二人に怪我をさせるわけにはいかないからね。あの二人を敵に回したら、どんな作戦も成り立たなくなる。それを避けるなら、シリウスも殺しちゃまずい」


 自由に姿を消せるティエラは、精霊使いの中でも特異な存在だった。精霊使いの使う術は、単独では意味を成さないものが多いからだ。

 そのティエラが、王女と同行している風と水の術者を恐れている。

 金色の髪をなびかせる背中を見つめ、ガリギュアは小さくうなずいた。


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