第9階 新しい階ごとに休んてないか…?
ノンビリ達は9階層にたどりついた。
「ちょっとここで休むか」
ノンビリは腰を下ろした。
「新しい階ごとに休んてないか…?」
キマジメが険しい顔で言った。
「だって、結構疲れるんだよ。階段登るのだって」
ノンビリが言う。
確かにこのダンジョンの階段は普通の階段より少し長い。
その上角度もついているから、登ろうとなるとかなり体力がいるのだ。
「普段から鍛えていないからだ。だからすぐにバテちゃうんだよ」
キマジメがため息をつく。
「そういや、キマジメってかなり体力あるよね」
ノンビリが言う。
「確かに、息を切らしているところを見たことがありません」
シトヤカも言う。
「俺は小さい頃から勇者になりたかったんだ。だから、色々修行していたんだよ」
「修行?」
「うん、腕立て伏せとか腹筋とかの基礎的なことから、剣の振り方とか」
「うへぇ、聞いただけで疲れてくるな」
ノンビリが嫌な顔をした。
「それで毎日走り込みもしたな」
「走り込み?」
「うん。家から100キロぐらいを往復で」
「うわ、絶対無理」
ノンビリは頭を手を当てる。
「そんな早くから修行されていたんですね」
シトヤカも驚いたようで言った。
「うちの父さんも勇者だったんだよ。だから、親父の背中を追っかけているうちに、俺もなりたいなぁって思ってさ」
「すごかったな、お父さん」
ノンビリが言う。
「あぁ、自分で言うのもなんだけど、かなり名が知れた冒険家だったんだよ」
キマジメが言った。
「え?そうなんですか?」
シトヤカが驚いた顔になった。
「そういやキマジメのお父さん、しょっちゅう冒険に行ってたな」
「うん。1年の大半は家に居なかったんじゃないかな」
「確かに。あまり家に居なかったな」
キマジメが言う。
「たまに冒険から帰ってくると、父さんは冒険での話を俺と母さんに聞かせてくれるんだよ。それがスゴい楽しみだったな」
キマジメの顔が緩む。
目も心なしか輝いてみえる。
「素敵なお父様をお持ちですね」
シトヤカはクスクス笑った。
「…うん、そうだな」
キマジメは間を開けた後、うなずいた。
「さ、ちょっと偵察に行ってくる」
キマジメは立ち上がると、偵察に出かけた。
「キマジメさんって、努力家なんですね」
「あぁ。昔から鍛錬は欠かしたことはないかな。小さい頃から『俺は勇者になる』って言ってたからなぁ」
「そういや、いつも言ってたな」
ノンビリが当時を思い出しながら言った。
「でも、こうしてダンジョンの攻略をするとは思わなかったな」
「ほんとにそうだな」
キマジメが笑う。
「そういや、シトヤカさんはなんで冒険者になったの?」
キマジメがシトヤカに聞く。
「…あの…、私は元々冒険者になるつもりはなかったんです」
シトヤカはうつむきがちに言った。
「周りに『魔法を使ってみてよ』と言われて使ってみたら、使えてしまって…」
「あぁ…」
「どうやら私は人より魔力があるみたいで…。ただ攻撃魔法はあまり好きじゃないから、回復魔法を極めようと思って、それから回復魔法一筋です」
「『攻撃魔法があまり好きじゃない』って…」
「魔力があったら、普通に攻撃魔法使いたいと思うけど…」
キマジメが苦笑いをする。
「私は暴力はあまり好きじゃないんですよ…」
「魔法を暴力と捉えるか…」
ノンビリがツッコむ。
「それでパーティーに入れてもらったんですけど…、それで…」
「あぁ、嫌なこと思い出させちゃった」
ノンビリがシトヤカのところに駆け寄る。
「…い、いや、た、大丈夫です…」
「いや、全然大丈夫じゃなさそうだけど…」
キマジメが心配する。
「キマジメ、シトヤカさんのトラウマを掘り起こしちゃったらダメだろ…」
ノンビリが遠い目をしている。
「いや、そんなつもりは…」
キマジメは慌てふためく。
「キマジメさん、私は大丈夫です。大丈夫ですから…」
「やめてくれ!良くない噂が立つわ!」
キマジメは必死に場を取り繕う。
「全く…、油断も好きもないわ…」
キマジメが肩で息をしている。
「シトヤカさん、ここの階層はモンスターも出ないみたいだから、ここで野営しよう」
「はい」
ノンビリとシトヤカは、キマジメの横で野営の準備を始めた。
「おい!人の話を聞け!」
キマジメはツッコみながら、野営の準備を手伝った。
「全く…、人の話を聞けよ…」
キマジメは肉を食べながら言った。
「いや、キマジメが落ち着きないから少し落ち着かそうと思って」
ノンビリがアハハと笑った。
「ったく、誰のせいだと思ってんだよ…」
キマジメがふてくされる。
「…キマジメさん」
シトヤカがキマジメに話しかける。
「私、今すごく楽しいんです。さっきは嫌なことを思い出したんですけど」
「やっぱり思い出したのかよ…」
キマジメが落ちこむ。
「でも、こうしてなんでもないことで笑って、なんでもない日常を送れることが私にとって一番幸せなんです。だから私、ノンビリさんとキマジメさんの仲間になれてとても嬉しいです」
シトヤカは笑顔でキマジメを見る。
「…そ、そう言ってくれるんなら、もう少し旅を続けてもいいけどよ…」
キマジメは照れくさそうに言った。
「良かった、機嫌直って」
ノンビリも笑った。
「キマジメさんが機嫌直さなかったら、どうしようかと思ってましたよ」
シトヤカも笑う。
「またそう言う…」
キマジメはまた肉を頬張った。




