第20階 さぁ、財布でも落としたんじゃないの?
「やっと20階か…」
階段を登り終えたノンビリが言った。
「ここまで来たか…」
キマジメは床に座る。
「あれ、人がいるみたいですよ」
シトヤカが言った。
「え?どこ?」
ノンビリは辺りを見渡した。
「あ、あそこにいるわ」
レイセイが指さした向こうに、1人の女性冒険者が立っていた。
「あそこで何をしているんでしょう?」
「さぁ、財布でも落としたんじゃないの?」
ノンビリが言った。
「お前じゃないんだから…」
キマジメが呆れたような顔で言った。
「な!俺は財布落としたことないわ!」
「良く言うわ。小学生の頃、財布落として一緒に探してあげたじゃねぇかよ」
「う!」
「河原とか友達の家とか散々探し回ったあげく、お前の上着のポケットから見つかったんじゃねぇか」
「いや、あの時は…」
「おい、思い出話に花を咲かせている場合じゃねぇだろ」
レイセイが2人を止める。
「そうだ、とりあえず話を聞いてみよう」
ノンビリ達は、女性の元に駆けつけた。
「あの、どうしたんですか?」
ノンビリの問いかけに、女性はこちらを見た。
「いや、別に大したことではないんですけど…」
女性はうつむきながら言った。
「困っているなら、僕達が助けてあげますよ」
ノンビリが笑みを浮かべて言った。
「捉えようによっては危ない台詞だな…」
キマジメがツッコむ。
「実は私、待っている人がいて…」
女性はためらいがちに話す。
「待っている人?」
「はい、ここで3時間ぐらい待っているんですが、なかなか来なくて…」
「ひどいですね。こんな女性を待たせるなんて…」
ノンビリが話に入りこんでいる。
「それで、その人はどんな感じなんですか?」
キマジメが聞いた。
「そうですね、ちょうどお兄さんに似ていますかね」
女性はノンビリ達の顔を見ながら言った。
「え?それは照れますね」
ノンビリは頭をかいた。
「何照れてんだよ…」
キマジメがツッコむ。
「えぇ、お兄さんに本当にそっくりなんですよ」
「本当ですか?」
「はい、だってーーー」
女性はそこで言葉を切ると、
「私はここでお兄さんを待っていたんですからね!」
と懐から剣を取り出して、襲いかかってきた。
「うわっ!」
ノンビリはとっさによけた。
「い、いきなり何するんですか!」
ノンビリが女性に言った。
「ふん。私はこうして冒険者に話しかけて、油断した所を襲いかかって倒しているんだよ」
女性はさっきと打って変わって、強気な姿勢を見せた。
「だ、だましたな…」
ノンビリは体を震わせながら言った。
「引っかかる方が悪いのさ」
女性はノンビリに剣を向けながら言った。
「ノンビリ、とりあえずこっちに来い!」
キマジメが手招きをしてノンビリを呼ぶ。
「くそっ!」
ノンビリはキマジメの方へ向かう。
「くそっ!まんまと引っかかった…」
ノンビリはうなだれながら言った。
「俺は怪しいと思ったんだよな。あんな所に女性ひとりでいるなんておかしいと思ったんだよ」
レイセイが腕組みしながら言った。
「そんなの、後からなんとだって言えるわ!」
キマジメがツッコむ。
「でも、どうするんだよ。あの女性を倒さないと、上に上がれないぞ」
レイセイが言う。
「そりゃ、俺も剣でーーー」
ノンビリがそう言うと、
「ーーーノンビリさん」
とシトヤカが言った。
「女性を傷つけるなんて、同じ女性として許せません。剣で切るなんてやめてください」
口調は穏やかだが、シトヤカの言葉には重みを感じた。
「いや、シトヤカさん、そんなことしないよ…。何を言っているんだい?」
ノンビリは慌てて剣をしまう。
「なら、いいんです」
シトヤカが言う。
「でも、どうするの?傷つけるのダメとなると倒せないよ?」
キマジメが言った。
「…私に任せてください」
シトヤカはそう言うと、女性の元に向かった。
「え?シトヤカさんどうするの?」
ノンビリが呼びかけるのを無視するかのように、シトヤカは女性の元に駆け寄る。
「あ、あなた、誰?」
女性はシトヤカに気がつくと、声をかけた。
「…私はさっきの男性の仲間です」
シトヤカは毅然とした感じで言った。
「え?シトヤカさん…」
キマジメが目を丸くする。
「あの男の仲間なの?なら…」
女性はまた剣を構えた。
「待ってください」
シトヤカは女性に言った。
「同じ女性としてあなたのやっていることは許せません。どんな理由があるにせよ、冒険者なら正々堂々と戦うべきです」
シトヤカさん…。
ノンビリはシトヤカの言葉を噛み締めた。
「あ、あなたに何が分かるのよ!」
女性の興奮はおさまらない。
「…私は前のパーティーは散々な扱いを受けていました」
シトヤカが喋りだした。
「でも、そんな私をあの男性は救って下さったのです。その男性は私をちゃんと仲間だと認めてくださいました」
「…え?」
女性は剣を下ろした。
「だから、あなたも大丈夫です。あなたを仲間だと認めてくれる方がいらっしゃるはずです」
「あ、そ、そう…」
女性はシトヤカの話に耳を傾けていた。
「では、失礼します」
シトヤカは礼をすると、ノンビリ達の元に戻っていった。
「さぁ、いきましょうか」
シトヤカは笑顔を見せて言った。
「シトヤカさん…、あなた人生何周目なのよ?」
レイセイが言った。
「なんの事ですか?」
シトヤカはニコニコしながら言った。
女性はさっきから棒立ちになっていた。
「…私、ソロ冒険者なんだけどな…」
女性はしばらく葛藤していた。




