第2階 俺、野営大好きなんだよね
「ねぇ、キマジメ」
ノンビリが聞いた。
「なんだ?」
キマジメがノンビリの方を振り返る。
「ダンジョンを攻略するってことは、ダンジョンに泊まるってことだよね」
「まぁ、そうなるだろうね」
「うーん・・・」
ノンビリは考えこんでしまった。
「…もしかして、嫌なの?」
キマジメが聞く。
ノンビリは間を置いた後、ゆっくり首を縦に振った。
「…嫌なんだ」
キマジメがそう言うと、ユックリは今度は首を早く振った。
「コ、コイツ…」
キマジメはそっと呟いた。
「あー、ダンジョン探索がこんなに大変だとは思わなかったな。こんなに大変だったら『ダンジョン攻略したい』とか言わなきゃ良かったな」
「いや、お前、妹を助け出すんだろ?」
キマジメが言った。
「そ、そうだ!俺は、妹を探すためにこのダンジョンに入ったんだった!」
ノンビリが立ち上がった。
「おい、いきなり大きな声出すなよ。モンスターが出てきたらどうするんだよ」
キマジメが辺りをキョロキョロと見渡す。
「…来てないよ?」
「わかってるよ!」
今度はキマジメが大きな声を出した。
「でも、今日は疲れたな。今日はここで野営しようぜ」
「やる気ねぇじゃねぇか」
キマジメがツッこんだ。
幸い周りにモンスターがいないので、ここでテントを張ることにした。
「俺、野営好きなんだよね」
ノンビリがテントを張りながら言った。
「へぇ、そうなんだ」
「前なんか『ひとり野営』をよくやったもんだよ」
「『ひとり野営』って・・・。」
キマジメがつぶやいた。
「この間もひとり野営して、色んな野営メシを作って、それはもう楽しいひとり野営だったな」
ノンビリが思い出し笑いをする。
「もう野営が目的になってるじゃん」
キマジメが呆れたような声を出す。
「今日はその時に作った野営メシを作ってみるね」
ノンビリはバッグから鍋を取り出した。
「…お前、妹を探しに行くんだよな?」
「うん。でも、お腹が空いてるとダンジョン攻略できないから」
「そういうことじゃないよ」
ノンビリは鍋を火にかけた。
「…で、何を作るんだ?」
「キマジメもなんだかんだで気になるんじゃん」
ユックリがニヤつく。
「いや、別に…」
キマジメが目を逸らす。
「よし、沸騰してきたな」
鍋の水が沸騰してきたのを確認したノンビリは、バッグからラーメンを取り出した。
「よし」
ノンビリはそのラーメンを鍋に入れた。
「なかなかいい匂いがする…」
キマジメは前のめりになって匂いを嗅いでいる。
「そこにそいつを入れる…!」
ノンビリは、鍋にハムや野菜を入れて蓋を入れて煮込む。
10分後、鍋を開けたユックリは頷いた。
「できた!しょうゆラーメン!」
ノンビリは丼にラーメンを盛り、キマジメの元に差し出した。
「いや、こんなことしてる場合じゃないんだけどな…」
キマジメはそう言いながら、丼を持ちラーメンをすすった。
「…ウマい」
キマジメは驚いた表情で言った。
「だろ?」
ノンビリの顔が一気に綻ぶ。
「これは俺の自信作でさ、3日連続で食べたことがあるんだ」
「いや、食べすぎだろ」
キマジメがツッコむ。
「…そうだな」
ノンビリがようやく笑った。
「…ふー、食った食った」
ノンビリはお腹をさすると、その場に寝転んだ。
「…俺も腹一杯だわ」
キマジメも満足そうな顔をしている。
「でも、気をつけろよ。こう油断していると、モンスターが襲ってくるからな」
キマジメが釘を刺す。
「わかってるよ」
横になりながら、ノンビリが手を挙げる。
「おい、ノンビリ!起きろ!」
3時間ぐらい経っただろうか。
キマジメが鬼気迫る顔でノンビリを揺さぶって起こす。
「…キマジメ、何?いきなり」
ノンビリが目を擦りながら言った。
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!ゴブリンが襲ってきたんだよ!」
「ゴブリン?」
ノンビリが向こうの方を見ると、棍棒を手に持ったゴブリンがこちらを見ていた。
「あ、ホントだ」
「『あ、ホントだ』じゃないよ!早く倒せよ!」
キマジメが叫ぶ。
ゴブリンはこっちに気がついた様子で、棍棒を振り回しながら、ノンビリ達の方に襲いかかってきた。
「お、おい、ノンビリ!早くしろよ!」
キマジメはかなりテンパっている。
「やれやれ、しょうがないな…」
ノンビリはゆっくり立ち上がると、腰の剣をゆっくり抜いて、ゴブリンの方に向かった。
「はぁっ!」
ノンビリはゴブリンに向かって素早く剣を振り降ろした。
ゴブリンは倒れた。
「こいつ、剣を使う時はすごい速いんだよな」
キマジメがホッとした顔で言った。
「へへっ、剣の修行は毎日欠かさず続けてたからね」
ノンビリが剣をしまった。
「普段からそんな風に動ければいいのにな」
「それは無理だな」
「なんで無理なんだよ」
キマジメは腰を下ろす。
「…でも、助かったよ。ありがとう」
キマジメはノンビリの方を見て、お礼を言った。
「って寝てるのかよ!」
ノンビリはいびきをかいて横になって寝ていた。
「全く、能天気な奴だな」
キマジメも横になって眠りについた。
「ノンビリ、起きろ!」
キマジメはノンビリをゆすって起こす。
「あと少し…1時間だけ…」
「そんなに待ってられるか!」
結局ノンビリが起きるまで2時間もかかってしまった。
キマジメは、この先のダンジョン攻略が不安になったのであった。




