第二話 初めての決闘へようこそ
俺は誘拐犯もとい、序列者五位と呼ばれているらしい女に学園都市を案内されていた。
「貴方が通うのは目の前にあるバグ力養成第二学園です」
「こんなにデカい学園が何個もあるのか?」
そこには表の世界のマンモス校と呼ばれる大学の何倍もあるような建物が聳え立っていた。
「まあ、バグ力の都合上でいろいろと広さがいるんですよ」
そう言いながら当たり前のように物凄い速さで歩く彼女を必死に俺は追いかけた。
「ここが食堂です」
「おばさんが手元でカレーライスを増殖しまくっているぞ…」
「ここが購買です」
「盾や爆弾も売っているのか…」
「ここがバグ力の訓練場です」
「全員人を辞めているな」
「ここが最後にあなたのクラスです」
「えッ、今日から登校するのか? まだ状況もちゃんと呑み込めていないのに?」
そんな俺の言葉に耳を貸さず、彼女は俺の身体を脅威の力で片手で肩に担ぎ無理やり教室に入っていった。
「今日の授業は…ちょうど良い所に来ましたね、この子が昨日言っていた新しい転校生です。みんな仲良くしてあげてね!」
優しそうなおっとりした女性教師もこの俺がむりやり担がれている、という異常な事態を見てもこんな様子なことから俺はこの学園都市の歪さを改めて再認識した。
……でも、西園寺聖夜はこんな所で動揺するような男ではない。
「初めまして、西園寺聖夜だ。 事情があってこんな時期からの転校になったが一年間よろしく!」
完璧な挨拶だ、短くて好印象なシンプルイズベストな挨拶だ。たとえどんな状況でも俺は先を観て最善の行動をする!
狙い通りに俺の挨拶が気に入ったのか、一人の男子がこちらを微笑みながら見て言った。
「お前、俺と決闘しろよ!」
(何言っているんだコイツは?)
そんな風に俺が驚いている隙に教師が指を鳴らし、教室にいた全員がなぞのばしょに転移させられた。
「たった今、生徒同士の決闘が開始されました。 これより西園寺聖夜VS闇野ゲイムとの戦いを始めます!」
「え、ナニ? 俺は承諾してないよ…」
「決闘はじめッ!」
「ちょっ、待てよッ!」
そう女教師が告げると同時にLOADINGという文字が宙に浮かんだ。すると、俺の身体はそれを見た瞬間に動かなくなった。
「何だこれは、身体が動かない!」
そしてそれが消えた直後、俺の瞳は暗闇に包まれた。
「今度は何も見えなくなったぞ!」
「……しょうがない、能力ぐらいは教えてやろう。 俺のバグ力は『暗闇』、対象の視界を暗闇で覆うことが出来る能力だ」
『ちなみに最初のローディングは能力とは関係ない、戦いの合図みたいなものだ』 彼は親切にそう言った後、笑った声で言った。
「俺の能力はあまり大したことは無い。だが、お前程度はこのぐらいで勝てるがな」
……今、コイツは笑ったのか? この俺様を? このイケメン高身長エリートのこの俺様を笑ったのか?
「……俺を、このエリートの俺様を舐めるなァァ!!」
俺は怒りのあまり、思わず自我を忘れて声を張り上げた。
すると、何故か俺の視界の暗闇は解けた。 そして、晴れ渡った目の前には拳を突き出そうとしている闇野がいた。
「…能力を無効化したんですか?」
序列五位が驚いているが俺にはそんな些事どうでも良いッ!
「目が見えればお前程度造作もない!!」
俺は奴の振り抜いた腕を掴み、その力を利用して背負い投げで地面に強く叩きつけた。
「ウグッ!」
そして俺はそのまま奴に馬乗りになって顔を殴りまくる。
「アグッ、イッ、ヤメっオゴァァ!?」
そんな俺達の光景を見ていた女教師は笑顔で言った。
「勝負あり! 勝者、西園寺聖夜!」
「オラぁ、俺様を舐めるなよォ!」
俺は勝負が終わった後も自我を忘れて暫く殴り続けていた。
「彼が学校に馴染めそうで安心したわぁ」
「……彼ならば、奴を倒せるかもしれない」