好きってこと?
……翌日になり、俺はそわそわしていた。
結局、葉月から連絡もなかったし、多分知られていないとは思う。
いや、知られた上で無視されている可能性も……。
「ァァァァ! 何で俺はわざわざ言ったんだ!? バカなの!?」
「朝からうるさいわねっ! 何をごちゃごちゃ言ってんのよ!」
「ごめんなさいぃぃ!!」
「だからうるさいって言ってんでしょうが!」
「イテッ!?」
部屋に入ってきた姉貴に、勢いよく頭を叩かれる!
「ったく、騒がしいったらありゃしない。ほら、さっさと着替えて下に来なさい。というか、小説書いてないんじゃない?」
「……はい」
「……はぁ、情けない。とりあえず、話くらいは聞いてあげるわ」
ため息をついて、部屋から出て行く。
「……ほんと、情けない」
好きだと気づいただけで、それを人に言っただけで、この有様だ。
いや、昨日の時点ではアレで正解だと思っていたけど。
もし、これで学校とかで無視されたら……おぉ、心臓が痛くなっていた。
朝の準備を済ませたら、朝食を食べる。
「んで、どうしたのよ?」
「いや……ちょっと、葉月のことを好きだと気付きまして……」
「……今さら?」
「はい?」
「どっかからどう見たってそうに決まってるじゃない。はぁ……まあ、あんただし仕方ないか」
「ねえ? 諦めた感じはやめてくれない?」
「だったら、シャキッとしなさい。それで、気づいてどうするの?」
「どうって……どうしたらいいんだ? 告白? ……無理無理」
考えただけで、身体が震えてくる。
というか、付き合う想像ができない。
「……別に焦らなくてもいいんじゃない?」
「どういうことだ?」
「まだ知り合ったばかりなんだし、もっと色々知ってからでいいってことよ。どうせ、あんたは女慣れしてないし」
……同じこと言われた。
いや、まさしくその通りなんだけど。
「じゃあ……今まで通りでいいってことか?」
「だと思うわよ……まあ、平気でしょ。大丈夫、あんたよりは人生経験が豊富だから」
「わ、わかった」
よくわからないが、姉貴には何かがわかったらしい。
……ひとまず、バレてないことを祈っておこう。
その後、緊張しながら学校へ向かっていると……背中に衝撃が走る!
「イテッ!?」
「野崎君、おっはよー!」
「は、葉月……」
そこには、笑顔の葉月がいた。
良かった、いつも通りだ。
どうやら、今のところはバレていないみたいだ。
「どしたの? 何で泣きそうになってるの?」
「な、なってないし」
「……何かあったの?」
そう言い、心配そうに見てくる。
いやいや、何自らバレそうな真似をしてるんだ。
「いや、何でもない。それより、放課後はいつ空いてる?」
「へっ? ……えっと、今日はダメだけど明日なら……」
「じゃあ、明日……いや、明日から雨だったな。あと、もうすぐ期末試験か」
出かけるとしたら、雨だと面倒だし、出かけられるところも限られるよな。
何より、六月の後半ってことは、もうすぐ期末テストもあるし。
流石に、小説を書くためにも勉強を疎かにはできない。
それで小説を書けなくなって、葉月との関係が消えたら元もこうもない。
「そういえば、そうだったし……やばっ、勉強しないと」
「俺もだった……忘れてたわ」
「じゃあ、二人で勉強しないとね?」
「……それもいいか。じゃあ、テストが終わったら……放課後付き合ってくれ。そして、例のラブコメイベントってやつを手伝ってくれると助かる」
我ながら嫌になるが、今の俺では口実なしで誘うことなどできない。
「……ようやく、そっちから言ってくれたし」
「……うん?」
「仕方ないなぁ!」
「イテッ!? だから、背中叩くなって」
「ごめんごめん。つい、嬉しくて」
「……何か嬉しいことあったか?」
俺はいつも通り、ラブコメイベントを頼んだだけなんだが。
「そりゃもう……ほら! 学校いこ!」
俺は葉月に手を引かれ、学校へと歩き出す。
ただそれだけのことが、とても楽しい。
胸が痛くなったり、よくわからない高揚感がある。
……これが、好きってことなのか?
……それを、これから確かめていけば良いってことか。
◇
……緊張した。
でも、良かった……あっちから誘ってくれた。
いつも、私の方から色々と誘ってるし。
私だって、誘うのは緊張するんだから。
昨日、改めて好きって自覚したら、物凄くドキドキして……。
確か、布団の中でゴロゴロしてたっけ。
「うぅ……どうしよう?」
みんなにはっきり言ってしまった……野崎君を好きだって。
そしたら、急に恥ずかしくなってきちゃって。
身体が熱くなって、いてもたってもいられなくなるし。
「大丈夫だった? テンパってなかった?」
慌てて帰ってきたはいいものの……何も手につかない。
「明日、どんな顔して会えばいいんだろう?」
普通にできるかな?
というか、これからどうすればいいかな?
私、緊張しちゃうかもだし……自分から誘えるかな?
結局、あんまり寝てなくて……今さっきだって、話しかけるのは大変だった。
心臓の音はうるさいし、変な汗をかきそうになるし。
今更だけど手汗とか平気?
というか、手を繋いでるだけなのに……なんで、こんなに楽しいのだろう?
身体がふわふわする……これが、好きってことなの?
……って、いけないいけない。
最近、勉強時間減ってるし……まずは、テストを乗り越えないと。
それから確かめても……良いよね?




