三浦君と……
……その後、俺は佐々木君と店を出る。
「今日はありがとね」
「あん? 礼を言うのは俺の方だろ。今日は散々世話になったぜ」
「い、いや、さっきのやつ」
「ああ、あれか。まあ、気にすんな。何か言われるようなら、俺に言え」
「いや、それなんだけど……今から三浦君と話してこようかなって」
「ほう?」
「なんか、俺が煮え切らないから、ムカついてるのかなとか。俺、以前は誤魔化しちゃってさ」
「なるほど……一理あるかもな。まあ、ムカつくことに変わりはないと思うが」
「はは……そうだよね」
「まあ、いいんじゃねえか。ところで、俺もついていくか?」
「いや、有難いけどやめておくよ。これは自分で言わないとだし、妹さんに早く漫画を見せてあげないと」
「……そうか、頑張れよ」
「うん、何とかやってみる」
佐々木を見送った後、近くのベンチで座って待っていると……。
「あっ、出てきた……よし、方向が違うから一人だ」
別方向に向かう三浦君の後を追っていき……。
「あ、あの!」
震えそうになるのをこらえて、何とか声を張り上げる。
「あん? ……野崎? なんだ? ……一人か?」
「ああ、そうだよ。ちょっと話があるんだけどいいかな?」
「……ああ」
「じゃあ、ここじゃあれだし……あそこに行こうか」
俺は近くにある公園を指差す。
どうやら、ひと気もなさそうだし、これなら平気そうだ。
公園に移動して、ベンチに座る。
……き、緊張してきた。
隣からは、明らかにイライラした雰囲気が伝わってくる。
「んで、なんだよ?」
「い、いや……」
「はっきり言えよ」
……い、言わないと。
というか、これで好きって言ってどうするんだ?
これで、それを葉月に伝えられたりしたら……。
それで、葉月が気持ち悪い……なんてことは言わない。
でも、俺のことを何でもないと思っていたら……。
俺と葉月の仲が……終わる?
好きでもない男に好かれて、嬉しいことなんかない。
……あの、楽しい時間が終わる?
そんなの……耐えられない。
「おい、聞いてるのか?」
「あ、ああ……」
でも、ここで言わないといけない気がする。
そうしないと、本人になんて言えるわけがない。
「実は俺、葉月が好きなんだ」
「ああ、そうだろうな」
「へっ?」
「そんなん、見ればわかる。そもそも、お前みたいな陰キャが葉月と知り合えば、好きになると決まってる。どうせ、女子なんかと話したことないんだろ?」
……それは確かにそうだ。
俺は女子と話したことないから、そういう面があることは否定的できない。
「そうかもしれない」
「へぇ? 認めるのか」
「まあ、俺が女子と接してこなかったのは事実だし……でも、とりあえず俺としては……今の俺としては、嘘ではないから」
「ふーん……そうかよ。んで、それを俺に言ってどうするんだ?」
別に、三浦君が葉月を好きと決まったわけじゃないし……。
それとは関係なく、俺は嘘をついてたことになるのが嫌なのかも。
「い、いや、どうもしないけど……この間、俺に聞いてきたから。それで、その時はそういうんじゃないって言ったけど、今は違うってことを言おうかと」
「なるほどねぇ……まあ、いいんじゃねえの」
「えっ?」
「そのうち、葉月も飽きるだろうよ。なんか、よくわからんないが……お前が物珍しいだけだろうし」
……それも、否定的できない。
俺が小説を書いているから、それを物珍しくて……付き合ってる可能性はある。
だから、俺としては……その葉月が飽きる前に、俺のことを好きになってもらわないと。
……どうすればいいんだ?
「話は終わりでいいか? んじゃ、俺は帰るぜ」
「えっ、えっと……」
「安心しろ。葉月に告げ口するような真似はしない」
「……そっか」
それだけ行って、三浦君は去っていく。
……不思議と、それを嘘とは思えなかった。




