幻想入りした青年達
八雲紫に幻想入り(強制)させられました☆
…世界とは不思議な物。それは現代でも過去でも同じことは言えるのだ。これは普通の人とは違う過去を持つ一人の若い青年とその若い青年の兄の幻想郷という場所に幻想入りと言う不可思議で、そしてそこで起きる異変を解決していく物語である。
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人気のない静かな住宅街の中を一人の若い男が歩いていた。そんな静かな住宅街の中を歩きながら男は誰に言うでもなく一人呟いていた。
「ふぅ…今日は一段と疲れたな。」
そう呟きながら男は一人暗い夜道を歩いている。
男の名前は坂上竜神。最近サラリーマンになったばかりの新人である。竜神はサラリーマンと言う肩書き以外に、他にも剣道や槍術など色々な武術もやっている。つまりは戦闘が大好きな戦闘狂みたいな感じの男だ。
(とりあえず、さっさと帰って風呂でも入るか。)
竜神はあまりにも周りが静かだったので、他の家を気にして声を出さないで心の中でそう呟いていた。すると一人歩いていると不意に何か気配を感じた。
「…?誰かいるのか?」
竜神は辺りを見回してみたが、普段付いているはずの街灯は光が消えており、辺りは漆黒の闇に包まれて何処に誰がいるのかも分からなかった。
「…ふふふ。私の気配を見つけれるなんて流石ですわね?」
何処からともなく聞こえたその声は二十代ぐらいの声で、しかも女性の声だった。
「えーと、誰かは知らないけどこんな明かりもない道で一人だけなのは危ないですよ?」
俺には相手の姿が見えていないので何人居るかと言うのは分からなかった。しかし、俺が戦闘狂と言う事もあり、周りの微かな気配を探るのは得意だった。その為、今ここに居るのは俺と誰だか分からない謎の女性だけだと言うのは分かっていた。
「ふふふ…気にしなくても大丈夫ですわ。今私の気配を感じられるのは貴方だけですから。あ、ついでに言いますと私の声が聞こえるのも貴方だけですわ。」
竜神は女の言っている意味が分からなかった。
「それは…一体どう言う意味なんだ?」
竜神は勿論女に聞いてみると、女は静かにくすくすと笑いながら説明してくれた。
「私はこの場所に存在しますが、存在もしないのですよ。」
しかしその女の言葉はあまりにも簡単で、そして意味の分からない説明だった。その為、竜神の頭を混乱させるには十分過ぎる素材だった。
「存在するけど存在しない??あんたは一体何を言っているんだ?」
姿の見えない女はまたこちらを嘲る様にくすくすと笑っていた。竜神は少しだけ考えると、何故か吹っ切れた様な感じで驚く事を言った。
「あー、とりあえず訳分からんからぶん殴っても良い?」
「何でそうなるの!?」
竜神はあまりにも混乱し過ぎたのか、ついには脳筋で片付けようとし始めたのだ。流石に女も驚いたのか、ざっくりとだが分かりやすく説明をし始めた。
「えーとね、つまりはこの世界とまた別の空間の狭間に居るって事なのよ。つまりは【時と境界の隙間】ですわ。」
「別の空間??境界??隙間??」
竜神は一応成績優秀の頭脳は持っていた…が、流石の流石に訳が分からない。
「うーん、やっぱり分からないわよね…」
女はどうやら何かを考え始めた様子で少し黙ってしまった。
「あ、そうだわ。こう言うのって直接見せた方が早いわよね。」
女は何かを見せると言うと、指を鳴らした。すると何だか突然体が軽くなった感覚になった。
「…?なんだ?」
俺は地面が気になったので地面を見てみると…ぽっかりと大きな穴が空いていた。
「...........」
そして、僅かな沈黙。
「…マジかよ。」
そしてまるで何かのアニメかと思うぐらいに、その一言で一気にその穴の中へと落ちていった。
「うぉぉぉおおお!!?」
竜神は抗う術もなくその穴の中へと落ちていった。何かに掴もうにも辺りは何も見えない。しかも落ちる速度は徐々に上がって行っている気もする。
「これ何処まで落ちるんだー!!?」
正直これ終わったな。何て考えながら頭の中で走馬灯が駆け巡っていた。しかし、俺の体は何処にぶつかるという事も無く、これまた突然落下している感覚が無くなった。
「…へ?」
俺はあまりの出来事に素っ頓狂な声を上げてしまった。しかし、それも無理は無いだろう。何故なら俺の周りにあるのは暗闇。だが良く目を凝らすと、周りには沢山の【目】がこちらを見ているのだ。
「何だ…こりゃ…」
俺は周りを見回していると、再び先程の女の声が聞こえてきた。
「ふふふ…ようこそ。ここは私の操る【隙間】の中ですわ。」
俺はまだ少々混乱している頭の中で必死に整理しようとした。だが、やっぱり分からなかった。だが、それでも頭の片隅には先程女が言っていた一言が直ぐに思い浮かんだ。
「ここが…時と境界の…隙間?」
「そう。簡単に言いますと、時間と場所を分けているその狭間と言うことですわ。」
俺は流石にその説明は理解した。という事は…
「…つまりはここは向こうの世界とは全くの別物って事なのか…?」
「正解です。」
「マジか…こんな不可思議な現象に会うのって中々無いよな…」
俺は焦る所か何故か楽しんでいた。まあ、こんな珍しい事は滅多に無いからだろうとは思うが。
「あら、普通なら焦ったりするか帰してくれって言うはずなのだけど?」
女は少し不思議そうに聞いてきたが、俺はやっぱり普通とは少々違うのだろうな。
「いや、俺にとってはこれは興味深い。」
俺はそこまで言うと、ずっと気になっていた事を言った。
「…所で何時まで姿を隠しているんだ?そろそろ姿を見せてくれても良いんじゃないか?」
俺は何も見えてない空間に向かって声を掛けると、一人の女性が暗闇から溶けて出て来たかのように姿を現した。
「ふふふ、ここでなら姿を見せれますわ。」
出てきた女は独特な服装をしており、これもまた独特な傘を指していた。
「ふふふ…こうやって外の住人に姿を見せたのは一体何時ぶりでしょうか。」
女が静かにそう言うと指を鳴らした。すると周りの目がギョロりと辺りを見始めたのだ。
「うげ…なんだこの目は…」
「この目は空間を常に監視をする為にある目なのですよ。先程は驚かさない為にわざと動かしてなかったのです。今は多少落ち着いて来ていたのでまた動かしたのですわ。」
俺は周りを見ながらその目を見て見た。まるでその目は機械の様に一定の動作で左右や他の場所を見ていた。そして今思い出した事だが、俺は女の名前を聞いてなかった。
「所で…あんたの名前は…?」
女は傘をクルクルと回しながらこちらを見て自己紹介をしてくれた。
「あら、ごめんなさいね。忘れていましたわ。私の名前は八雲紫と申します。幻想郷の管理をしている妖怪の賢者ですわ。」
名前は聞いたのは良かったが…まあ、流石に気になる単語が幾つもあった。
(幻想郷…?何処かにそんな名前の場所あったか…?いやそもそもこの女は妖怪だとか賢者だとか言っていたよな…?)
竜神は顎に手を当てて少し考えると、とりあえず気になった単語全て聞いてみた。
「えーと、八雲さん…で良いですか?」
「出来れば紫と呼んでくださるかしら?」
「ああ、紫さんですね。それでは質問しても良いですかね?」
「良いわよ。どんな質問かしら?」
紫はニコニコしながらこちらを見ていた。とりあえず…
「幻想郷って何なんですか!?いやそもそも妖怪だとか賢者って…貴女本当に何者ですか!?いや、そもそも何故俺を此処に連れてきたんですか!?」
紫は一気に質問を受けて驚いた。と言うかそれよりも何だか竜神が少しだけ興奮気味に聞いてきたのに驚いていた。
「ちょっ!?とりあえずその興奮しているのを落ち着かせなさい?!」
竜神はそれを聞くと素直に落ち着いた(と言うか一瞬で静かになったので紫はまたそれに驚いていた。)
「ええと…とりあえず貴方の質問に一つずつ答えていく感じで良いかしら?」
「それでお願いします。」
「それじゃあまずは…幻想郷について話しましょうか。」
紫はどうゆう仕組みかは分からないが、空間に椅子がある様に座ると説明し始めた。
「幻想郷と言うのは私ともう一人、博麗の巫女と呼ばれる巫女によって外の世界…つまりは貴方がさっきまでいた世界とを隔離した場所が幻想郷と呼ばれる場所なのです。」
竜神は話の次元がもはや行き過ぎている為、とりあえず成程と理解しておく事にした。
「それでその幻想郷には様々な種族の者達が住んでいるのです。人間、妖怪、妖精、神、吸血鬼…他にも色々居ますが、言い出したらキリがないのでまた暇な時に話しますわ。」
「は…はぁ。」
最早なにがなんだか分からなくなってきたので後でゆっくりと整理しようと考えた。しかし、気がかりな事が一つあった。
「それでその…紫さんは俺をどうしてこの隙間…?の中に連れてきたんですか?」
竜神はずっと何故ここに連れてこられたのかが気になっていた。
「ああ、それはですね貴方を幻想郷にご招待しようと思いまして♪」
紫はニコニコしたまま話していたが、竜神は固まっていた。それもそうだろう。つい先程紫は幻想郷には【妖怪】やら【吸血鬼】が居ると言っていたのだ。
「ええと…あの妖怪やら吸血鬼やらが居るって言う…?」
「ええそうですわ。貴方をそこにご招待しましょう♪」
それを聞いて流石に青ざめてしまった。妖怪やら吸血鬼やらが居る場所に一人放り出されたら絶対死んでしまう。さすがに文武両道でも流石に死んでしまう。
「…出来れば御遠慮しておきたいのですが…」
「あら、何故かしら?」
「流石に一人だけその幻想郷とやらにやられても…」
竜神は丁重に断ろうとしたが、紫は未だにニコニコしながら大丈夫だと言った。
「へ?もしかして紫さんも一緒に来てくれるんですか?」
「違いますわ。もっと貴方に適任な人と一緒に言ってもらいますわ。」
「適任な人…?そりゃ一体?」
紫は空間に向けて指をなぞると先程のスキマが現れた。するとその中から一人の男が落ちてきた。
「痛てて…一体全体何だってんだ…?地面に突然穴が開くなんて…てかここ何処だ?」
先程出てきた男は周りをキョロキョロしていたが、竜神の姿を見つけた途端に声を上げた。
「って、お前竜神!?」
「兄貴!?ってもしかして適任の人って…」
俺は紫の方を向くと未だにニコニコしていた。そうスキマから出てきたのは俺の兄貴…坂上儚月だったのだ。
「ええそうですわ♪」
俺はやっぱりかと言うと、何も状況を判断出来ていない兄貴は俺と紫さんの方を見ながら色々聞いてきたので簡単に説明した。兄貴はそれだけで状況を判断出来たようだった。
「ま、とりあえず理解した。だが、何で俺達何だ?それに招待するって言ってもその幻想郷とやらは話を聞くだけでも相当危険な場所だと思うんだが?」
兄貴は紫にそう聞いてみるとなんとも適当過ぎる理由の返答を貰った。
「それは貴方達が面白そうだったから♪」
「いや「面白そうだったから」でそんな妖怪やらが居る危険な場所に連れて行ってもらっても困るんだが!?」
兄貴は紫にそう言ったが、紫は貴方達なら大丈夫などと言っていたのでこれ以上は疲れるだけだったので言うのを止めた。
「はぁ…でもそんな場所に連れていかれても武器も無ければ泊まれる様な場所なんてあるのか?もし無かったらそのまま妖怪の餌になるんじゃないか?」
俺は紫にそう言うとまたスキマを出してその中から二本の刀を取り出した。
「武器に関してはこの刀を使ってね。それと住む場所なのだけども、幻想郷には人里や他にも人が住める場所は幾つもあるのでそこは心配無いですわ。そこに辿り着くまでは危険ですけどもね。」
紫さんは俺と兄貴にそれぞれ刀を一本ずつ渡すと、相変わらずのニコニコしながらスキマを開いた。
「あ、そうそう。それと今から貴方達を送る場所は魔法の森と呼ばれる森です。そこには霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイドと呼ばれる魔法使いが住んでいます。ひとまずはそのどちらかに会ってもらったら良いでしょう。」
「まあ、一応分かったが…俺達はまだ行くとは…」
「それじゃあ行ってらっしゃ〜い♪」
紫は俺の言葉を無視すると、足元に先程のスキマを出した。勿論さっきと同じという事は…
「てんめぇ!!紫ィィィイ!!」
俺と兄貴は何と上空へと放り出された。勿論上空って事は…
「これって死亡確定じゃねぇかァァァア!!」
俺は何とかしようと辺りを見回すと、何と兄貴が居くなっていた。
「なっ!?兄貴!?」
竜神は落ち続けながらも兄の姿を探したが、何処にも見当たらない。
「くそっ!とりあえず今はこの状況を何とかしないと!」
俺はとりあえず舌を見てみると、下には森が広がっていた。
「くそ!仕方ない!木をクッションにするしかないのか!」
竜神はそのまますごい勢いで落ちていきそして…森の中へと落ちていった。竜神は体を丸めるようにして落ちたが、それでも派手な音を立てながら折れた木の枝等によって身体中に擦り傷が沢山出来てしまった。
「痛て…くっそ、身体中傷だらけじゃねぇかよ…」
竜神は何とか地面に降りれると、フラフラと立ち上がった。
「ま、命あっての物種ってか。とりあえずここは何処だ?」
辺りを見回しても外は夜なので視界は悪い。しかも兄貴も居なくなっているのでそっちも心配だった。
「とりあえず…探索してみない事には始まらないか…」
竜神は紫から貰った刀を杖替わりにして歩き始めた。しかし、森の中に落ちてきた時に大きな音が立っていた。それによって森に住み着いていたとある一人の妖怪少女が、竜神の元に向かっている事にまだ気付いていなかった…
主人公
坂上竜神:戦闘大好きな戦闘狂。意外だが家事全般が得意である。
坂上儚月:竜神の兄。竜神より落ち着いているが、竜神より戦闘が得意。
幻想郷の住人
八雲紫:竜神達を幻想入りさせた謎の多い女。